#1 『アナザヘヴン』ネタバレあり感想

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まず、90年代特有の湿り気と得体のしれなさを帯びた角川ホラーの雰囲気とスリルある刑事ドラマの融合が絶妙で、『パラサイト・イヴ』とか『リング』シリーズを読んでいたときの高揚感が蘇ってきて、読んでいてすげえ楽しかったなという印象。人間の脳をシチューにするとか何食ってたらそんなもん浮かぶんだって話よ。あ、シチューか……。

ただ、エンタメ作品としてのおもしろさは上巻がピークだったかな。
下巻は上巻できれいにまとまったものを無理やり引き伸ばした感が否めなかった。まあ、さすがに上巻では本作の全容をまとめきれてはいないから、そこからさらにそれなりの尺は必要だけど、ほとんど同じ分量で下巻を生み出さなくてもよかったのではと思います。
個人的に上巻の分量にもう少し足すぐらいで終われた気がする。

あと、風呂敷を広げるだけ広げて、回収しきれていないのもまあまあ気になった。あれだけの大ボリュームを費やしたにもかかわらず、あちこちに散らばっていた伏線であろう描写は最終的にスルーされてて、逆に下巻から早瀬のラブストーリーとかアレと飛鷹、早瀬のコンビの上巻から代わり映えのしない鬼ごっこが延々と続いたりと脱線気味で、何を読まされているんだ感は否めなかった。

ちなみに実写映画版もあるそうで、草食系男子的な描写だった早瀬のキャスティングが気になるところだけど、なんと江口洋介さんみたいで俺のイメージとは全然違う…..。
どっちかっていうと飛鷹の方だろと思わざるを得ないのだが、まあ当時は若かっただろうし、役柄的にはピッタリだったんだろうな。これもまた近いうちに鑑賞したいと思います。長編小説をどれぐらい映画にコンパクトに落とし込めてるのか、またアレを映像でどう表現しているのか気になるので。

あと、小説の続編「アナザヘヴン2」も出ているそうですが、こちらはいまのところスルーですかね。
おもしろかったのはおもしろかったんだけど、下巻で若干気持ちが冷めてしまった部分がある。

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