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猫とかいう毛の生き物

猫と暮らしています。


元野良の雑種です。
小町と言います。
女の子です。

4年前、1匹で豪雨に打たれていたところを幼なじみが保護して、紆余曲折あり、うちにやってきました。生後1か月でした。


猫と暮らすようになってから、生き物との距離感を少しずつ掴めるようになってきました。
それまで大きめの動物と一緒に暮らすという経験をしたことがなかったので、
友達のうちの犬とか、道で寝てる野良猫とか、小学校にいたウサギとかニワトリとか、動物園のふれあいコーナーとか。

どうやって触れたら良いのか分からなくて、困っていました。
虫もすごく嫌いでした。動きが予測できなくて。なんだか艶のある見た目が気持ち悪くて。


しかし猫を触ることに慣れてくると、生き物それぞれの硬さや温度や匂いに気がつくようになりました。
犬は猫よりずっと硬い。毛もちょっと丸い。そして舌は滑らか。
馬はもっと引き締まってて硬い筋肉。でも毛は優しくてツルッとしていて気持ちがいい。
虫は大抵冷たくて、手や触手の細やかな動きが格好良い。


もちろん人間の肌の匂いや温度にも気がつきます。
恋人ができたら、どうか香水とかつけないでいて欲しい。ハンドソープや、柔軟剤や、お香や、食事や。その人の生活に即した香りになっていくのが1番健やかだから。

ちなみに、猫は肉球が良い匂いがします。悲しい気持ちの時に嗅ぐと落ち着きます。ただし高い確率で気持ち悪がられます。


しかし、猫の意識の流れはどうなっているのだろう。
窓辺に座って、じっと何かを見ている猫を見るといつも考えます。

人間のように、頭の中では常に何か考えているのでしょうか。それとも、無に近いのかしら。それとも視覚情報だけを捉えているのかしら。


そんなことを考えていると、猫は知らぬ間に寝てしまいます。
たまにムニャムニャと寝ながら咀嚼していたりして、夢は見るのかもしれないなと思うのです。
あまりに呑気で羨ましくて、私も猫の隣で、床に伸びてみたりします。そうすると、他人の気配が気に入らなかったのか、スタスタと何処かへ行ってしまったりします。

この気まぐれな毛の生き物は毎日毎日何を考えているのだろう。

数年前に、一度だけちょっとした病気をして、病院と自宅のベッドの往復をする1週間がありました。

両親も兄もそれぞれの生活がありますから、私は誰もいない家でポツンと過ごす日中が続きました。
普段は絶対に私の布団に入ってくることはありませんが、その時だけは枕元にやってきてじっと私を見ていました。たまに優しい声で鳴きました。

私が弱っていることをきちんと理解していたのだと思います。慈愛に満ちた声でした。

その時初めて、猫は優しいのだと知りました。
病気が治ってからはあまり優しくしてくれませんが、それはそれで構わないのです。

もうすぐ冬がきます。
火の暖かさを知ったうちの猫は、今年もストーブの前を自分のものにしてしまうのだと思います。
年々人間みたいになっていく彼女は、動物らしくて良い。

彼女は今日も、小さな身体で我が家の雰囲気を支えてくれています。
いつまでも健やかでいて欲しいものです。


渡部有希

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