#52 母子地蔵尊＠浅草

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さまを探しながら歩いています。

お地蔵さまはいろいろな理由でこの世に現れます。
たとえば、実在の人物をお地蔵さまにした例があります。
それはたとえば千束にある「半助地蔵尊」ですね。半助にお世話になった人々によって建立されました。
また、名前はないけれど、幼くして亡くなった我が子のためにお地蔵さまを建立した例もあります。また、病気になった我が子の平癒を願って建てられたお地蔵さまもいらっしゃいます。
本当にお地蔵さまがそこにいらっしゃる理由は様々です。

浅草の浅草寺の境内で、とてもユニークなお地蔵さまを発見しました。

母子地蔵尊です。脇に説明書きがありました。

それによれば、

母子地蔵さん建立の由来

第二次世界大戦末期ソ連参戦で混乱状態となった中国東北部（旧満州）で避難行の末命を落とした日本人の数は二十万人を超えると云われています。
酷寒の曠野を逃げ惑うの母子が生別れとなったり飢えや疫病に苦しみながら亡くなるなどその悲劇は数知れません。
犠牲となられた母子の霊を慰め、また、いまだ再会かなわない親と子の心のよりどころとして二度と戦争という過ちを繰り返さない事を祈念しつつここに、母子地蔵を建立いたしました。
1997年4月12日

願主　　　　千野誠治
デザイン　　ちばてつや
文字　　　　森田拳次
まんしゅう地蔵建立委員会
まんしゅう地蔵建立応援団
中国残留孤児援護基金

なんだかとても悲しいお地蔵さまです。
そして、このお地蔵さまのデザインが、漫画家のちばてつや氏だとあります。改めて、お地蔵さまをよく見てみましょう。

なんだかとてもリアルですね。よく見ると子供は2人いて、背中に1人、前に抱きかかえているのが1人です。
悲しいいわれがあるにもかかわらず、母親や子供たちの表情は柔和ですね。手編みの帽子や涎掛けがとてもいいですね。お世話をしている方がいらっしゃるのですね。

思わず手を合わせました。なんだか涙がポロポロ流れてきました。改めて、わずかばかりのお賽銭を入れて、再び手を合わせます。

浅草寺は多くの観光客がやってきます。この母子地蔵尊は本堂の脇にありますが、自分がいたとき、お参りする人はありませんでした。できれば、もっとお参りしてほしいなと思いました。

お地蔵さまがいらっしゃる理由はひとつではなく、いろいろな理由があるのだなと改めて思いました。
もし、浅草寺に行かれることがあったら、ぜひこの母子地蔵尊にお参りをしてみてください。

【プロフィール】
下関マグロ（しものせき・まぐろ）
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド！モーニング」、テレビ東京「７スタライブ」「なないろ日和！」、日本テレビ「ヒルナンデス！」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。

ツイッター　https://twitter.com/maguro_shimo

【著書】
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