木曜ドラマ「silent」4話感想

湊斗を見ていて、自分でも意外な言葉を思い出した。

それは、今週の「あちこちオードリー」で、お笑い界で天下を取る人とは?というトークをしていた際の「若林は共感性が高いよね」というオリラジ中田の分析を踏まえた、若林の言葉だ。

「お笑いで天下をとる人は、お笑いのルールを自分のルールに変えちゃう人。共感性の高い人は、そのルールを人に押し付けられないから、たぶん天下は取れない。」

これって、恋愛における湊斗にすごく当てはまるんじゃないか?と思った。

恋愛において「天下をとる」=「好きな相手の隣の座を得る」だとすれば、「自分のルールの押し付け」=「自分の幸せを最優先になにがなんでもその座を奪いに行くこと」だと捉えられる。

湊斗は共感性が高いから、自分のルールを押し付けられない。むしろ、自分の好きな人たち(紬と想)にとって都合がいいようなルールに変えようとすらしている。

それが決定的に分かったのは、紬の弟に対して手話覚えたら?と勧めたシーンだった。

湊斗は無自覚にも、あるいは見て見ぬふりをしていたのかもしれないが、紬は想と付き合った方が幸せだと内心で思っていた。そしてこの先、紬が想を選んだとき、弟くんと想が話せなくては困るから、と手話を勧めた。

弟くんは湊斗のそういう想定に気付いたから、「なんで手話覚えろとか言うの?」と湊斗を責めた。
弟くんは悪くないが、湊斗は自らがそれを想定していることを認めざるを得なくなった、残酷なシーンだった。

だから湊斗は、紬が一番幸せになれるのは想といる時だ、と思い、「好きな人がいるから別れてほしい」と言うに至ってしまった。

(湊斗がかつての想と同じ言葉を同じ使い方するとは...。脚本に恐れ入った。)

でもそれは湊斗の思い込みだ。

紬は湊斗といた3年間をつまらなかったなんて思っていないし、想が再び目の前に現れた今もちゃんと湊斗を選ぼうとしている。湊斗が紬を、それと同等以上に想のことを大切に思っているから、そこの認知が歪んでしまっているのだ。
いま紬の気持ちを思うなら、湊斗はまっすぐに紬の気持ちに応えなければいけないのに。

湊斗は、好きな人が好きな人を選んだ理由をちゃんと考えなければいけない。
つまり、紬が湊斗を選んだ理由を考えなければいけない。好きな人がいなくなったからいる人を好きになった訳じゃない、ということを。

最後に、その理由の断片が垣間見えたシーンについて。

喋った方がいい?と尋ねた想に、
「想の好きな方でしゃべればいいよ。俺だってこうやって機械に頼って喋ってんじゃん」
と湊斗は返した。とてつもないな、と思った。

これは湊斗が、現状の2人のコミュニケーションに機械が必要なのは、音を受け取れない想のせいではなく、伝える方法に拙い自分に責任があるからだ、との認識で捉えているということだ。

それは手段として優しさを使っている人が出せる言葉ではない。そもそもの人格として、いろんなことを他責にせず、他人の幸せを思い続けている人にしか紡げない言葉だと思う。やさしい人、という言葉では足りないあたたかさを感じた。

そのあたたかさに触れてきた紬の3年間はちゃんと幸せだったし、これからだってそうだよ、と湊斗に伝えたい。

だが、伝えたいのに伝わらない。(そりゃそうだが)
そんなことを思ってしまっている自分はもう、このドラマの思う壺である。ああ。来週が待ち遠しい。

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