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落ちている1万円札は拾ってはいけない

千円札はもちろん、1万円札でさえも拾ってはならない。

ジムへ行く道端で、千円札が落ちているのを見つけました。

お、千円札、ラッキーと素早く拾ってポケットへ入れようとしましたが、おいおい、いかんいかん、うし寄付しよう、コンビニのレジ横の募金箱へ入れよう、と近くのコンビニへ向かいました。
警察へ届けたところで落とした本人に戻るわけでもないでしょう。

それに、棚ぼたの千円に喜んでいると千円ぽっちで幸福を感じられる人生が待っています。そのほうがコストパフォーマンスが良いかもしれませんが、無意識的にその狭い檻の中にマインドをセットされてしまいそうです。
千円程度で喜んでいられるか!ってことです。

コンビニで千円札を無造作に募金箱へ入れているボクを見て、レジの女の子はどんな顔をするだろうか。
「ふっ、そこに落ちててね」とかニヒルに笑うシミュレーションをしながらコンビニへ入りました。

しかしレジには店員がおらず、遠くに太った男性店員がいるだけでした。
一瞬、違うコンビニへ行こうかと迷いましたが、可愛い女の子がレジ横にいるコンビニを延々と探し続けるという、「オレ何やってんだか状態」が想像されたので、諦めて千円札を募金箱へ入れ、この勇姿を誰にも見せられないまま立ち去りました。

あー善い行いをした、しかも自分のフレームを崩さない心掛けも保つことができた、とその夜の眠る前まで思っていたのです。

が、しかししかし、翌朝になって目覚めた時、いやいや違う違う、拾うべきではなかった、間違っていたことに気づきました。
落ちている千円札は無視するのが正解だ、ということに気づいたのです。
さてどういうことか。

拾うリスクを考えていませんでした。
拾うという動作にリスクがあります。
ギックリ腰です。そこから慢性腰痛になるかもしれません。そのリスクについて考えるべきでした。
1回くらいの動作で大袈裟なと、思われるでしょうが、1回が全てなのです。ボクにとって起業に向けて、これからは勝負の時間です。
脳も体も最大のパフォーマンスを出さないといけません。絶対にギックリ腰など避けなければならないのです。

どれくらいの確率でギックリ腰になるでしょうか。
仮に1日100回の拾う動作をしたとしましょう。道端にお金が落ちている想定ですから、腰を入れての慎重な動作ではありません。不意を突いた身構えていない素早い動作です。
それを1日100回、感覚的には10分に1回です。それを1年毎日続けます。
おそらく高い確率で、直感的には1に近い確率でギックリ腰になるでしょう。
1ヶ月でも確率0.5はありそうです。つまり1日100回x30日=3000回で確率0.5です。
1回あたりの確率は単純な割り算では0.5/3000=0.017%です。
理化学研究所のスーパーコンピュータの富岳に正確な計算を依頼をしたら0.023%でした。嘘です。関数電卓での計算です。
では1回のギックリ腰確率0.02%としましょう。5000回に1回ですね。

次にギックリ腰による損害額を求めます。
これは人によります。仮にギックリ腰からくる重い腰痛に悩んでいる人へ「その腰痛をたちどころに完治させる治療があるとしたら、あなたはいくらまで払えますか」と聞いたとしましょう。
その答えた額が損害額と言えるのではないでしょうか。
ボクの直感では、社会人なら平均100万円を超えると予想しています。

重い腰痛になると、何度も何度も通院するでしょう。貴重な時間が取られます。治療費もかさみます。
痛くて仕事に集中できなかったり、数えきれない寝苦しい夜があります。睡眠不足になり悪循環です。
据え膳を前に断らなければならないこともあるかもしれません(それはやだな)。

そういう状態から完全に解放される額です。生活によほど困窮していない限りは100万円でも安いものです。100万円とすれば、確率0.02%をかけると、200円です。5000回に1回100万円を損する、つまり拾う動作1回あたりの損害額が200円です。
1回拾うたびに200円損するという計算です。
つまり100円玉を拾うとすれば損をすることがわかります。
これは「少なくとも」です。
確率を少なく見積りすぎかもしれません。10倍はあるかも。500回に1回、あり得ます。ならば2000円の損です。

そしてボクの場合、損害額を100万円ではなく数億円規模で見積もっています。
そんな覚悟で起業していますから。
となると1回の拾う動作で数万〜数十万円を損する計算になります。
なのでたとえ1万円札が落ちていても拾ってはならないのです。

実はこのギックリ腰の損害額計算の話、落ちているお金は拾うなという話は、20年ほど前に会社の朝礼でボクが披露した所感(スピーチ)ネタなのです。
なんだかどっかの新書からパクってきたみたいですが、完全オリジナルです(※)。
なので当時聞いていた会社の人がこの記事を読めば、書いているのはボクとわかってしまうでしょう。

確かそのスピーチでは、お金を落とした時はすぐに拾わず、誰かが拾ってくれるまで待てばいいのだ、善意ある他人にギックリ腰のリスクを預けるのが正解だ、と言う話で締めくくった覚えがあります。ひどい奴だ。

(※)後日「千円札は拾うな」という新書本が実際にあったことを知り、絶版だったので、古本を探して買って読みました。
この本の出版よりボクのスピーチの方が先にやっていました。
そしてボクのこの記事の方が、一冊の本よりキレ味が鋭いことを保証しますね。
千円賭けてもいい。それではまた。

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