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猫の幸せって?ノラネコが連れてきた子  猫たちは・・・第六章

  

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猫の幸せって?ノラネコが連れてきた子猫たちは・・・第五章


車に乗ってからは、間もなく東京で会える娘のことや
夫の仕事の話、政治の話などでもちきりで、
おかげで猫たちのことは考えずに済んだ。

なんとなく夫が私の気持ちを猫から遠ざけようと
意図している感はあったけど。



関越道練馬出口を降りて暫く走って娘たちの家に着いた。

庭の隅には3メートル余りの高さの木があって、
今はもうすっかり葉が落ちてしまったその木の上の方に
小鳥の巣箱が取り付けてあった。

「何か小鳥入ったの?」と聞くと
「シジュウカラがはいってくれたの」
「わあ、可愛いね!」


「それがねヒナが何羽かうまれて
 みんなで楽しみにしてたのにさ、
 4~5日したら親鳥が来なくなっちゃったのォ
 『変だなあ』って 
 K(小学3年生の息子)が脚立に登って見たら、
 ヒナが3匹死んでたんだって!」

「エーッ、じゃあ親鳥は?」
「時々そこの塀の上歩いてる可愛いグレーの猫がいるんだけどさ、
 それかなあ・・・」
「親鳥が食べられちゃったの?」
「なんだかわかんないけど・・・
 カラスだっていっぱいるし・・・」
「わあ、ヒナは飢え死にかあ・・・かわいそうに」

3年生の孫には随分と過酷な経験だった事だろう。
      ・
      ・
どこにだって、こんな悲劇はフツウに在る。
はかない命で終わる生き物たちはいっぱい居る。
うちの庭に巣を作ったヒヨドリだって、
ヒナをカラスに食べられちゃったし・・・

自然界では、無事命を全うできる方が少ないのだ。

そんな事は百も承知ながら
小鳥たちのはかない命に胸が痛む。

孫が「どんな小鳥が入ってくれるかなあ」と期待に胸ふくらませ
お父さんと一緒に楽しく作ったという巣箱を見れば、
また更に胸が痛む。

  
          
ドラミと子猫たちのことが
チラッと私の脳裏をよぎったけれど
その事には何も触れずに、
1時間ほど3人であれこれ積もる話
(の、ほんの一部 )をしてから夫の仕事先に向かった。
 
その日の打合せは長くなると言われていたので、
近所のファミレスで待っていた私は
ハンバーグランチを食べてゆっくりとコーヒーを飲みながら、
ふいに、おしくらまんじゅうしていた子猫たちの姿が頭に浮かんで
いたたまれない気持ちになった。
          
  あ、そうだ、! そう言えば・・・
  ドラミのオナカに乳首が見えなかったような気がする。
  そうだそうだ
  最初の頃は乳首がピンクになってはっきり見えてたのに、
  この頃全然見えなかった 
  今頃になって気が付くなんて(‐”‐#)

  そうかあ、きっとおっぱいが出ないから拒否しちゃったんだ。
        
  おっぱいが出ないというのに
  子猫は小柄ながら元気で生まれて・・・

  あ~あ、むしろ 死産だったら良かったのに。
   ・・・・・・・

  こんな寒い日だもの、
  私が帰るまでに凍えて死んじゃうのかなあ・・・
  まだおしくらまんじゅうしてたらどうすればいいんだろう。

  家に入れて、
  とりあえず牛乳薄めて飲ませればいいかな?
  明日猫用ミルク買ってきて・・・
  ? ペットショップにあるかなあ

  だけど、昼も夜も4匹にミルク飲ませたりなんて、
  ムリムリ
  じゃあどうするの
  あの小さな生まれたての子猫たちを保健所に? 
  ワア・・・・・ "(-""-)"
       
そして
「仮に夫が猫好きな人だったら私はどうするだろうか」
なんて考えてみたりして、
子猫たちが凍え死んでしまっていることを
内心望んでいる自分が心苦しく、
また、あのきゃしゃな体で4匹もの子猫を妊娠し、
訳も分からず出産してさぞかしうろたえたに違いない
ドラミの様子を想像して憐れに思ったり、
全く 心中穏やかでなかった。

今朝ドラミがどこかから走って来て、
私たちを振り返ってから
子猫たちがおしくらまんじゅうしているハウスを見上げ、
「ウーーー」と唸った意味が分かったような気がした。
 
  きっと、おっぱいが全然出なくて
  そんな場合、
  猫は母性が湧かないのかもしれない。

  どうしたらいいのか分からなくて困っちゃって
  どこかに逃げていたところで、
  私たちの姿を見て急いで走ってきたんだろな。
  その気持ち 解るような・・・
  かわいそうに ( ;∀;)

  あの大きな黒い目を丸くして私を見上げたドラミ。
  「どうすればいいの?」と訴えていたのかも。
  あ、きっとそうなんだ!

  やめようやめよう
  考えてみたってしょうがないでしょ

  あ~あ、折角久しぶりに娘と話ができて、
  なんとなしに心がホッコリしていたのに 
   "(-""-)" 

 
気分転換にと、
昔懐かしいクリームソーダをオーダーした。
レストランの前の道を行き交う人々を眺めながら、
喫茶店で友達とクリームソーダをよく飲んだ
若い頃の事を無理やり思い出して
時間つぶしにチビチビ飲んでいると、
夫から「迎えに来てくれ」と電話が来た。


11月にしてはとても寒い一日で、
帰途、群馬県内に用事があって高速を途中で降りたりして、
夕食を済ませて帰宅した時は もう9時を回っていた。


何だか車を降りるのが嫌だった。
子猫たちがどうなったのかと、心配というより怖かった。


夫はこういうとき優しい。
子猫が死んでしまっていることを想定して
私を制して物置の猫ハウスを見に行ってくれた。

やはりドラミの姿は無く、
子猫たちはもう動かなくなってしまっていたとのこと。
「疲れただろ。俺が明日の朝埋めといてやるから早く寝ろ」

「・・・・・・ウン・・・」

実は、正直言ってホッとした。
そして、その自分の気持ちに何とも言えない罪悪感を覚えた。


  私の不注意で小さな命が生まれてしまって
  むなしく消えて行ったんだというのに・・・

  だって、
  「オモテニワノラネコ」の暮らしを選んだ
  ドラミがいけないんだ。
  チャトラみたいになついてくれていたら
  ちゃんと避妊手術受けさせて
  こんなことにはならなかった筈なのに。

  チャトラだって去勢手術受けさせる時期を逃しちゃって、
  気配りが足りなかったでしょ!!

   
  そうだけどお、
  そのおかげで新しい飼い主に巡り合えて
  幸せそうだったし・・・
     (参照)
       ⇓
      第三


  ドラミはあんなに小さくて痩せこけてて、
  まさか妊娠するなんてさ、
  ちょっとうっかりしちゃってもしょうがないよね。

  って言い訳にすぎないでしょ!
   
と、自分を責めたり慰めたりしていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
           
夫はさっさとお風呂を済ませて寝てしまった。

湯船につかりながら
またあれこれ考えてしまう。

  娘たちの家の庭に巣作りしてヒナを育て始めたまま
  ヒナを残して帰ってこなかったシジュウカラの親・・・
  シジュウカラは片親になっても、
  頑張ってひとりで子育てをするっていうから
  きっと2羽とも何者かに食べられちゃったんだね。

  あ!シジュウカラって7,8羽のヒナを育てるって
  ネット記事でみたことある!
  巣の中にヒナが3羽だけ残ってたってことは
  巣を襲われて親鳥とヒナが次々に?
  わあー!・・・・・じゃあ何に?
  
  あんな小さな出入り口だもの、
  猫の仕業じゃあ無いね、

  ・・・ヘビ?
  あのあたりにヘビなんているの?

  ・・・・・・・・・・・??

  我が家の庭先では、
  あのシジュウカラの親子よりもっと早く
  何も分からないうちに消えて行ったはかない命。

  一度も母親のおっぱいを吸うこともできず・・・
           
  ああ、いやだ いやだ。
  もう考えるのよそう。
  また眠れなくなっちゃう。


風呂上がりに濃い目の麦茶で割った焼酎を飲んでから
自分の部屋に行きベッドに入った。

枕元のCDプレイヤーでいつも聴きながら眠る曲をかけて
今日東京からの帰途夫が話してくれた
つぎの事業計画のことを無理やり思い返し、
自分の分担の書類づくりのことなど考えようとしてみたけれど、
酔いがまわっていつの間にか眠っていた。

   つ・づ・く ➡ 最終章

第一章はこちら ➡ 猫の幸せって? ノラネコが連れてきた子猫たちは 


          

   
 

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