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猫の幸せって?ノラネコが連れてきた子猫たちは・・・第五章

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     (第四章)


かなり冷え込んだ朝。
庭の向こうの畑には真っ白に霜が降りていた。
その日は東京に用事があって夫と二人で出掛ける予定だった。

一旦玄関を出た夫がすぐ戻って来て
「おい、子猫生まれたぞ!」 
と言う。

先日作っておいた猫ハウスで産んだのだった。

  へえーえ、
  いつもゴハンが済めばほとんどどこかに行ってしまうのに、
  何か不安なことがあればやっぱりここがいいんだねえ。

4匹の真っ黒の子猫がハウスの真ん中でしっかりくっつきあって
声も立てずにムニョムニョと押し合っている。

しかし、ドラミの姿が見えない。

 ←(・ω・;)(;・ω・)→

胎盤はどこにも残ってなくて
子猫たちの体はきれいに乾いているから、
ドラミは本能的にちゃんときれいに胎盤を
片付けて(食べちゃって)から
子猫をしっかり舐めまわして、
それからどこかに出掛けてしまっているのだ。

夫は、「かまうなよ。放っておけよ。」
と言って家に入ってしまった。

そりゃあ私が触ったりして
ドラミが面倒見なくなったら困るから構わない方がいい。
普通の飼い猫なら人間が触ろうがどうしようが
ちゃんと面倒見て、
むしろそのうちに「見て見て、かわいいでしょ」とばかりに
人間のそばにくわえて連れてきたりするものだけど、
ドラミはどうするかわからない。
想像もつかない。

  どうしよう。
  もう出掛けなくちゃならないのに・・・

  あれ?
  生まれたての子猫ってこんなに小さかったっけ?
 
  何度も猫の出産に立ち会った事あるけど
  こんなに小さくなかった筈。
  たしか、この子たちの1・5倍ほどの大きさだったと思う。
  ドラミが並外れて小さいから子猫も小さいの? 

  なるほどねえ、
  親の体格に応じた大きさで生まれてくるのかあ

  ・・・・・ん? そーお?

  泣き声も立てずに
  ムニョムニョおしくらまんじゅうしてるけど
  ちゃんと育つのかなあ・・・
  っていうか、ドラミはちゃんと育てられるのかなあ。

  でも、ちゃんと育っても貰い手が無かったらどうしよう。

  毛が短いし白い毛はどこにも無いみたいだから
  父親のペルシャ猫に似たのは1匹も居ないの?
  あ、段々毛が長くなったりするのかな?
  そうそう、
  長毛種の犬だって生まれたときはこんな感じだっけ。
  今はこんな真っ黒だけど 
  大きくなるにつれてほかの色が出てきたりするよね。
  毛の長いトラ猫ができる可能性だってあるね。
  父親みたいなあんな長い毛だったらタイヘン!
  あ、珍しいからペットショップに引き取ってもらえるかな?
  ドラミがここでちゃんと育てれば
  子猫はきっと私になついてくれるんだろうけど、
  もしかしたらすぐどこかにくわえて行ってしまって、
  毎日エサを食べにだけ来て
  よそで子育てをするのかもしれないし・・・

などと、
「そろそろ支度して出掛けなくちゃ」
と一方で思いながら
気ぜわしくゴチャゴチャと思いめぐらせた。

  その先はもう想像したくない。疲れる。
  今悩んだって仕方無いんだから。

  ドラちゃん来ないねえ。早く帰っておいでよー
  出掛けちゃうよー
  こんな寒いのに赤ちゃんどうすんのよー

   (・ω・;)(;・ω・)


仕方なく、敷物にしてあったボアシーツを寄せて
子猫たちの周りを囲ってやり、
出掛ける支度をしに家に入った。 


支度をしてから猫ハウスを見に行くと、
相変わらず子猫たちだけがおしくらまんじゅうしている。


夫が家から出て来て、
ちょうどそこにドラミが走って戻ってきた。

  やれ良かったあ 

ところがドラミは、
私たちを振りむいて見てからそこに座ってハウスを見上げ、
なんと 「ウーーー」と唸ったのだ。 
            

  エーーーッ!ウソでしょーお!
  なんでぇ?


ドラミは
自分のお腹から出てきたモノがなんなのか
理解できてないのだろうか?。

 だってさ  さっき舐めてあげたんでしょー
 なのに愛情は湧かなかったのお?
 そんなことって・・・
  エーーエ?

私の頭の中はパニック状態。

急いで1日分のキャットフードをドラミのお皿に入れ
ドラミに見せてからハウスの中の隅っこに置いてみたが、
ドラミは相変わらず座ってハウスを見上げているばかり。

  あ、お腹はすいてないよね。
  少食のドラミが4つも胎盤食べちゃったんだもんねえ。
     ( ! ・・・オエーッ ) 

夫が「出掛けるぞ、放って置け」と言う。

今はもう、私がしてやれることは何も無い。
やがてドラミが餌を食べにハウスに入って、
ふいに母性が芽生えることを神様に祈るしかないのだ。
もう出掛けなくては。


必死で猫たちのことをアタマから追い払って、
振り返らずに車に乗った。


  つ づ く
    ⇓
   第六章


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