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猫の幸せって?ノラ猫が連れてきた子猫たちは・・・(第三章)


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(第二章)
               

いじめっ子メス茶トラ はすっかり姿を見せなくなって、
チャトラとドラミは
 ひと冬をこの新しいおうちで無事に過ごした。



この子たちが来て初めての春のある日、
珍しくチャトラが朝から姿を見せなかった。
夕方、ドラミはひとりで餌を食べて、
またいつものように素っ気なく
どこかに行ってしまうのかと思ったら、
餌が少し残ったお皿の前に座ったまま
落ち着かない様子で遠くを見ている。

「チャトラ来ないねえ」と声をかけてみたが
振り向きもしないしニャンともいわない。
      
翌日も、その翌日も、その次の日も、
チャトラは帰ってこなかった。

  事故にでも遭ったのだろうか・・・

  ・・・・・・ハッ
  もう発情期を迎えて、家出しちゃったの?! 
  そうだ、もう1歳だもの。
  発情して家出しちゃったんだ!
  わーあ、チャトラだけでも去勢手術受けておくんだった。

ドラミがあんまり小さいから、
チャトラは大柄だけど
まだまだ子供のような気がしていて
ホントにうかつだった。 ((+_+))

        
チャトラが居なくなって5日目の朝、
玄関を開けた夫が「おい、猫帰ってるぞ」と言う。
朝食の支度の手を止めて急いで出てみると、
最初に物置の棚に作ってやった猫ハウスが在った所から
チャトラがちょうど下りてきたところだった。

「どこに行ってたのーお  心配しちゃったじゃない!」

ところが、チャトラはなんだか様子が違う。
いつものように甘えてこないし
エサを食べたらそそくさとどこかに行ってしまって、
夕方まで帰ってこない。
そして少し食べたらまたどこかに行ってしまった。

  やっぱり発情しているんだ。
  どうしよう、
  発情している猫って去勢手術受けられるんだろか。
  獣医さんに電話してみようかな。

  夫の協力がなければ1人で連れて行くのは無理だし・・・
  あ、猫用キャリーバッグ 物置にあったね!  


    
しかし、チャトラはこの日以来もう帰ってこなかった。

ひとりになったドラミは、
なんとなく所在無さげに
ポツンと庭の丸太椅子に座っていることが多くなった。
人に甘えることを知らない寂しそうなドラミが不憫でならない。


やがて、どこかに出歩くことが多くなり、
私が餌をあげようと待っていてもなかなか戻ってこない。
そのくせ、夫か私が庭や畑に居るとどこからかやってきて
なんとなくその辺を駆け回ったり
昆虫を追いかけたりする。
相変わらず人間に心を開かず
いつも距離を置いているくせに、
自分を守ってくれる存在だということだけは
分かっているのだ。


その内にスズメとかヒヨドリなどをくわえてきて
庭の隅で食べたりするようになった。"(-""-)"

そんなドラミの様子を見て夫がニックネームを付けた。

「イリオモテヤマネコ」をもじって
  「オモテニワノラネコ」  

   ナールホド (・_・;)
      


夏も終わる頃のある日の夕方
家の前の畑で野菜取りをして帰ってくると、
ドラミが毛を逆立てて茶トラ猫に唸り声を上げている。
また例のいじわる猫かとよく見るとそうではなく、
どうもチャトラに似ている。
立ち止まってドラミをじっと見つめ、
ソロソロとドラミに近寄って
鼻先をドラミの鼻に近づけてくるが、
ドラミはいつまでも唸っている。

急いで家に入りスマホに保存したチャトラの写真を
探し出して見比べてみた。

あごの下から胸にかけてとお腹の白い毛とか
尻尾のトラ毛模様の感じ、
間違いなくチャトラだ

「チャトラでしょ? ねえ、チャトラだよね!」

すると
「ニャー」と、前と変わらない
大きい体に似合わないカワイイ声で返事をした。

「わあ! チャトラ、元気だったの!」
「おいで」と手を伸ばしたらゆっくりと歩いて来て、
私のそばでゴロンと寝転がってお腹を見せてくれた。

私はもう涙が出そうにワクワクして
その白いお腹を撫でてやった。

「お腹すいてない?ゴハン上げるからおいでよ」
と声をかけると、ゆっくり歩いてついてくる。
なんだか以前の 「食いしん坊のチャトラ」
とは別人・・・じゃなくて別猫みたいに
妙におっとりしている。
よそのお宅の飼い猫になったのだろうか。

ちょうどドラミが食べかけて残してあったエサをやってみると、
チャトラは
ゆっくりエサのお皿に近づいてしきりにクンクンしてから
(ドラミの匂いを確認したのだろうか?)
ちょっとだけ食べた。

夫が家の中から私を呼ぶので
「ちょっと待っててね!」
とチャトラに声をかけて家に入ると、
夫は「よせ、もう猫は増やすな」と言うのだ。

「だって、間違いなくチャトラよ!」
「だけど、もうよその家の猫だろう」

「・・・・・・」

夫の言うとおりだ。
チャトラはきっともう誰かに別の名前で呼ばれて
家の中で可愛がられているのに違いない。

  でも、この家と私を覚えていてくれたんだ 
      ( )

  チャトラ、 今幸せなの?
  あのおっとりした感じは
  きっと幸せに暮らしているのに違いない。
  あいつは人なつこくてホントに甘え上手なんだから。


もう一度撫でてやりたい思いを やっとこらえて
廊下のガラス戸越しに見ていると、
チャトラは懐かしそうに軒下のイスやヨシズ、
柱などあちこち嗅ぎまわって  最後に
あの物置の棚の、ドラミをしっかり抱いて寝ていた
最初の猫ハウスがあったところに行って
棚に前脚をかけ、伸び上がってみて
それが無いのがわかると、
「なあんだ」という感じに(私にはそう見えた)
足を速めて裏庭の方に去って行ってしまった。

  あ~あ! もう一度撫でてみたかったのに。
     ( ;∀;)
  どこにいてもいいから幸せでいてちょうだい。
  また時々来てね!

でもチャトラはこの2度目の「里帰り」をして以来
それっきりもう姿を見ることはなかった。

  あの時、もう一度ナデナデして声を掛けてやっていたら
  また来てくれたのかなあ・・・・・

  いけない いけない、
  チャトラにはもうこだわっちゃいけないんだ。
  だって、ドラミが拒否したんだし
  そして、チャトラには別の安住の地があるんだもの。

  忘れよう もう忘れよう 😢  

  
       つ・づ・く
       

  猫の幸せって?ノラネコが連れて来た子猫たちは・・・(第四章)


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