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猫の幸せって? ノラネコが連れてきた子猫たちは・・・ 

        

ある夏の日の夕方。

夫と二人で庭の向こうの畑に野菜を採りに行こうと
私がちょうど玄関ドアを開けた時、
庭の隅に1匹のキジトラ猫が現れた。
ひどく痩せて鋭い目つきのメス猫だ。
用心深くあたりを見回してすぐ私に気付き、
警戒心あらわに尖った目でじっと私の様子をうかがっている。
こんな鋭い目つきの猫って見た事ない。
きっと乳離れして間もなく捨てられたか、
或いは「ノラネコから生まれた本物のノラネコ」だと思った。

ほどなく彼女の後ろの庭木の茂みから、
生後2か月程かと思われる子猫が2匹顔を出した。
 カワイーイ!
母親と同じメスのキジトラと、オスの茶トラだ。
(脚の太さで雌雄の見分けがつく)

母猫は、私が餌をくれる人間かどうかを
見極めようとするかのようにじっと私の目を見てから、
あとから出てきた夫に視線を移した。
 
夫は「猫嫌い」だけど
こういうのを見るとつい放っておけない人で、
「なんか食べさせてやれよ」と言う。
「そーお? いいのお?」と言いながら
私もこのやせこけた猫の親子を無視することができなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  夫が猫嫌いなのには訳があって、
  この子猫たちにそっくりなトラ猫兄妹を飼っていた時、
  「ここで爪とぎしろよ」と夫が用意した板は
  ほとんど使うことなく、
  廊下の壁や押し入れのフスマ、ソファーの裏側など、
  手あたり次第引っ搔いて傷だらけにしてしまったのだ。
  今ペットショップなどで売られているような爪とぎがあったら
  こんなことにはならなかったのかもしれないけれど・・・
  もともと余り猫は好きでなかった夫は、
  これに懲りてすっかり猫嫌いになってしまったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
急いで台所に行って、
昼食の残り物に猫の食べそうな食材を混ぜ、
お皿に乗せて行ってみると
まだ親猫はじっとこちらを見ていた。

少し離れた所にお皿を置いて「おいで」と声をかけてみると、
母猫は鋭い目で私を見据えて低く「ウーッ」とうなりながら
ソロソロと餌に近寄り 匂いを嗅いでから、
私の様子をチラチラ窺いながら素早くひとくち食べた。
子猫たちは庭木の根元に座って寄り添い、
無邪気な目でこっちを見ている。
飢えた母猫はガツガツ食べるのかと思ったら、
そうではなかった。
ひとくち食べると子猫たちの居る方に4、5歩戻り、
それを合図のように子猫たちがお皿に走り寄って
2匹で頭を寄せあって食べ始めたのだった。

これを見て私は、以前飼っていた猫の親子を思い出した。

  キャットフード以外の物を与えると、
  決まって母猫が真っ先にひとくち食べてみてから
  子猫に食べさせてやっていたっけ。

あの時、
「えーっ!子供に食べさせないで自分が食べちゃうの?」
と一瞬びっくりしたけれど、
食べ慣れない物に用心しての「お毒見」だったのだ。


一度味を占めたノラの母猫は、
当然翌日も子連れで庭先にやって来た。
そして「何かくれ!」と強烈な目力で私を脅迫するのだ。
ぜーんぜん可愛気など無いばかりか、むしろコワイ。
私は「きのう餌をやらなければ良かったかなあ」と、
一瞬 ちょっと後悔した。
しかし罪のないあどけない目をして
まっすぐ私を見ている子猫たちを見れば
心が揺れる。

  放っておけば子猫たちは飢え死にするかもしれない。
  近所の飼い猫たちにいじめられて死んじゃうかも・・・
  タカやトンビとかカラスなんかの餌食になってしまうかも。
  運よく生き延びたとしても、
  この母猫みたいな鋭い眼光の野良猫に育って、
  可愛げも無く、迷惑猫になって迫害されて・・・
 
  キャットフード買って来なくちゃ!
  ・・・・・でも、子猫たちが無事成長して発情期が来たら
    ・・・・・・・     
  その前に手なずけて不妊手術を受けさせる?
  できるかなあ・・・
  そこまで馴れてくれるのかなあ・・・
  子猫たちは多分なんとかなるかもしれないけど
  この母猫は絶対人間になつかないような気がするし・・
  どうしよう・・・

などとさんざん迷った挙句、
結論の出ないままキャットフードを買って来てしまった。

翌日も、翌々日も、昼近くなると子連れ猫はやってきて、
子猫たちが満腹すると、
母猫は私に対して「シャーッ」と威嚇し、
うなり声を上げ警戒しながら残りの餌を平らげるのだ。
そして一週間もすると、ナント!
あろうことか、無邪気でかわいかった子猫たちまで
餌をもらうとシャーッと威嚇してから
私を警戒しながら食べるようになってしまったではないか!

猫とは
足元にすりよって餌をねだり、なでてやれば喉を鳴らし、
やわらかくてしなやかで、
人間を癒してくれる生き物だと承知していたのに、
癒されるどころかその度にストレスを感じた。

  全く馴れる様子も無くて、
  義務のようにただ餌をやるだけの猫なんてイヤだ!
  かわいくない。
  できることなら
  「どこかよそのオタクに行ってちょうだい」とお願いしたい。

  いやいや、
  こんないたいけな子猫たちに寛大になれないで   
  私はなんなの 歳甲斐も無い。
  「猫好き人間」と自認していたのに、 
  自分になついてくれる猫が好きなだけの
  了見の狭い “エゴイスト”なんだ。
  きっとこの親猫はあちこちでひどい仕打ちを受けて
  必死で生きてきたのにちがいない。
  そして何処かでひっそり出産し、
  ひとりで子育てしてきたんだ。
  敵か味方か見極めようとこっちの様子を窺いながら、
  精一杯子供を守っているこの母猫は
  なんてまあ、健気じゃないの。
  私なんか子猫から見たらとてつもなくデッカーイ
  「怪物」みたいなもんだ。
  母親がここまで警戒するこんな「大きな動物」が
  そばにいるから、
  子猫たちはきっとドキドキしながら食べてるんだ。
  そうだそうだ、猫の身になって考えてやらなくちゃ。

そう考えると気持が楽になった。 
少し寛大な人間になれたかも。
 
親猫は毎日餌を食べてから軒下のベンチの上で
しばらくお乳を飲ませてはどこかに行き、
小鳥や、バッタなどの昆虫を獲って来て
子猫に与えたりしていた。

 時々モグラを捕ってきて、
その度子猫たちはしばらくモグラに噛みついたり
転がしたりおもちゃにするけれど、
土中で生活するモグラってきっと美味しくないのだろう。
いつのまにか庭にほったらかしになっている。
親猫は食べさせるためじゃなくおもちゃとして与えるのだろうか?

放っておくわけにもいかないので
その度にスコップで運んで畑の隅に埋めたけれど、
苦手な日光の下で散々もてあそばれて
無駄に命を奪われて放置されたモグラに、
なんだか私が謝らなくちゃいけないような気がして、
「ゴメンネ」と言って土をかけたものだった。
 
 
ある日の夕方

ウーーワァーア  ウワーオーーー
   ウワーオーーー

      フギャーッ!!

と、猫が何かを猛烈に威嚇する声。
また近所のオス猫同士の喧嘩かと窓からのぞいてみると、
あの母猫が背中の毛を逆立てて
すさまじい勢いで白い大きなオス猫を威嚇している。

       ? ? ?

この白猫は、
数日前からこの母猫とむつまじく寄り添っているのを
何回か見かけたアイツだ。
子猫たちも他のオス猫に対するのと違って
彼を怖がる様子も無く、
あれが父親なのかな?と思っていたのに
これは一体どうしたことだろう。
      
そういえばライオンのオスは、
メスライオンに子供ができて父親になっても
やがてまた発情期がくれば
我が子であるその子ライオンを食い殺してしまう
というような話をテレビで見たことがある。
この白猫が子猫たちの父親なのか
あるいは母猫に恋した赤の他人(他猫?)
かどうかは分からないけど、
母猫は子供に危害を加えられると判断して、
あんなに仲良く寄り添って歩いていたオス猫を
今度は追い払おうと決めて、
必死で頑張っていたのに違いない。

びっくりしたようにじっと母猫を見ていた白猫は
やがてソロソロと向きを変え、
そして「わかったわかった」と後ろ姿で言いながら去って行った。

痩せて小柄で一見とても勝ち目はなさそうなこの母猫が、
健康そうにがっしりと肥った白猫を
ド迫力で追い払ったのだ。

   エライ!

実家には私が物心ついた頃から猫が居たし
結婚してからも猫を飼っていたけれど、
オス同士の、メスを巡っての大喧嘩はあっても
子供を守ろうとする母猫のこんな姿は見た事が無い。
野生の猫はスゴイ。立派!
 
ところが、
それから2週間も経った頃だったろうか。
お乳を吸いに来た子猫を「ウーッ」と拒否するようになった。
そしてその翌日から、
母猫はぱったりと姿を見せなくなってしまった。

ここに居れば子猫たちは生きて行けると
判断したのに違いない。
あれほど大切に守ってきたわが子に対する執着を
キッパリ振り棄て、
よそでまた新たに生きる道を探すのかと想像すると、
なにやら涙ぐましい。

   そういえば、
   以前我が家で飼っていたトラ猫兄妹の茶トラは、
   親より大きくなってもまだおっぱいをしゃぶって
   母猫も子猫のするままにさせていたっけ。
   環境が許せばそんな猫の親子も居るというのに・・・

そんなことを思い出すと、ますます涙ぐましい。

子猫たちは、2、3日は畑の隅に座って
親を探すようにじっと遠くを見ているような時もあった。
それを見るたび、胸がズキンとした。


やがて
私が庭の向こうの畑で野菜採りや草むしりなどしていると、
まず茶トラがどこからか走って来て
うれしそうに私の周りを走り回り、
昆虫を追いかけたり庭木に登ったりし始め、
そのうちにキジトラもやってきて、
一緒に駆け回ったりじゃれあったりするようになった。
何匹もの飼い猫や野良猫がウロウロしている環境の中で
突然親が居なくなって不安なのだろう。
そして私を、保護してくれる相手と認識したのだろう。
お腹が空けば2匹でミャーミャー鳴きながら
廊下の網戸に爪をかけ、
かわいいオナカを見せて登って来る。

 カワイーイ、だっこしてみたーい!

餌を与えても、食べてしまえば今度は家に入りたいのか
それともお遊びなのか また網戸登り。
このまま「網戸登り」を許していたら
子猫たちはたちまち大きくなって網戸が破れる。
でも、ここで叱ったりしたら
私を恐がるようになってしまうだろう。
全くなつかない猫なんて可愛くない。

そこで良い事を思いついた。
昼間は外から家の中は良く見えないから、
網戸に登ってきたらこちら側から
ハエたたきでパシッと網戸を叩けば、
子猫は痛い思いはしないけれど
「なんだか分からないけど 
 ここを登ると何かコワイ事が起きる」
と覚える筈。
     
これは名案だった。
たった一度で子猫たちは網戸を登らなくなった。

 ダイセイコウ(^^)V
 
茶トラは食欲旺盛で良く食べるのだが、
親が居なくなった頃から酷い下痢をしていて
(でも不思議にやせてはいない)
時々トイレとしている畑の隅まで行くのが間に合わず、
庭に点々と下痢便をもらしてしまうものだから
気圧や風向きによっては臭くてたまらない。
庭中をよーく見て探し、
スコップで片付けるのがひと苦労。      
猫用下痢止め薬をエサに混ぜて食べさせてみたけれど
一向に良くならない。
突然親が居なくなって心細く、
緊張して暮らしているから「心因性下痢症」なのかもしれない。 

一方キジトラはひどくやせこけていて元気がなく、
当初ひと月も持たないのではないかと思ったほどだった。
お腹がすくと玄関先にちょこんと座り、
黙って餌を待っていたりする。
潤んだようなつぶらな目でじっと見られると、
ヨシヨシとなでてやりたくなる。
しかし彼女は非常に警戒心が強く、
ちょっとでも近寄ればすぐ後ずさりして
パッと逃げて行ってしまう。
     
ネット情報によれば、
キジトラ猫は
《 野性味が強くて賢く、野良猫としての適性が高い
 警戒心の強い性格 》 とある。 
なあるほど。

  あ、そうか。
  この子たちの母猫もキジトラ。
  まさに「野良猫の適性」をそなえてたワケね。
 
これに対して茶トラ猫は
《 人なつこく甘えん坊な子が多く
 抱っこやなでられることが大好きで、
  穏やかで争いごとを好まない性格 
なのだそうだ。
たしかに、以前飼っていた茶トラ猫もそんな子だったっけ。

 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇  

やがてこの年の夏は突然去って、
幾日も冷たい雨が続いた。
外遊びもできず軒下のベンチの隅に丸まって
しっかり寄り添う子猫たちがなんとも哀れでいじらしい。
そこで
段ボール箱の内側に発泡スチロールのシートを張りめぐらせ、
古毛布の上にボアシートを敷いて
ちょうど2匹がゆったり入れる大きさに寝床を作り、
玄関の向かい側の物置の棚に、
玄関から見えるように出入口をこちらに向けて置いてやると、
猫というのは箱に入るのが大好きな生き物だから
すぐこの寝床に入って寝るようになった。
なぜだかいつも大柄な茶トラが小さなキジトラの背中に
片腕をかけてしっかり抱きしめて寝ている。  
そんないじらしい様子を見たらもう、
なでてやりたくてウズウズしてしまう。
しかし、近寄ればその瞬間目を覚まし、
箱を飛び出してしまうのだ。
その上、餌を与える度に2匹して「シャーッ」と威嚇し、
有り難げも無く私をチラ見しながらガツガツ食べ、
私が傍に居なければソワソワとあちこち気にしてばかりいて
落ち着いて食事も出来ないくせに、
食べ終われば愛想も無くソソクサと
どこかに行ってしまうような猫は
・・・・・やっぱりかわいくな~い!

  この子たちだって、
  かわいがられて暮す方が幸せに決まってる。
  こんな状態は子猫たちも私もお互いに精神衛生上良くない。      
  なんとかしてなつかせなくては。

そこで、
茶トラ猫を「チャトラ」キジトラ猫を「ドラミ」と命名し、
人なつこいといわれる茶トラ猫から手なずけてやろうと考えた。

慢性下痢症のくせに食欲旺盛なチャトラには
ドラミより多めにエサを与えるのだが、
いつも自分のお皿をたちまち空にして、
ボチボチと猫食いで食べているドラミの分をいただこうとしては
小さなドラミにものすごい勢いで怒られて、
シュンとして戻って来る。
                   
この様子を見て思いついた。

  きっとこの食いしん坊君は、
  警戒心も恐怖心も食欲には勝てないのだ。

チャトラがエサを食べ始めた時に、
そっと首の下あたりをなでてみた。
すると、ちょっと避けるしぐさをするが、 
されるままにして食べている。
  シメシメ

3日後にはお腹も背中も撫でられて平気になった。
両手でそおっと お腹を抱えて持ちあげてみると、
小さく「ンニャ?」と言って一瞬私を振り返ったきり
持ち上げられたままひたすらエサを見詰めている。
  (苦笑)
そして下ろしてやるとまたガツガツ食べ始める。
「ネコ食い」どころかまるで「イヌ食い」。

こうなればしめたもの。
チャトラが馴れればドラミも次第に馴れるかも・・・
まもなくチャトラは、
餌を持った私の足元にかけ寄って来るようになった。
そして立ち上がって前足を万歳して、
大きな図体にしては細い可愛い声で
「ニャーンニャン、ニャワワーン、ワーンワーン」なんて
おかしな鳴き方で餌を催促するから笑ってしまう。

そしていつのまにか、
あれほど続いた下痢がすっかり治っていた。
やっぱり心因性の下痢だったのだ。
親に見放され、
なんだか得体の知れない大きな動物から餌をもらって
警戒しながら生きる毎日は
さぞかし心細かったことだろう。

こうなると抱いてみたくなるのが人情だけど、
外を飛び歩いて転げ回るから
体のどこかにダニとか何かの病原菌を付けているかもわからない。

私の姉は、
以前大切に飼っていた猫にひっかかれて
翌日の夜中になってから発熱と もうれつな痛みを発症し、
病院に駆け込んだところ
「もう少し遅かったら命を落としてたかもしれませんよ」
と言われたそうだ。
ペニシリンか何かの抗菌薬を打ってもらい
幸い翌日には快復したそうだけれど、
犬や猫の口中には「カプノサイトファーガ カニモルサス」
なんて長ったらしい名前の常在菌がいて、
稀にではあるけれど こんなめにあう人も
居るのだそうだ。

「稀に」なんて言われても、
身近な人がこんな目に遭ったと聞けば
とても「稀」とは思えない。
抱っこしてはいけない。
猫に触ったら必ず手をしっかり洗う。

うちの子供達が小・ 中学生だった頃 猫を飼っていたが
こんなことを意識した事は無かった。
この子たちとそっくりな
オスの茶トラとメスのキジトラの兄妹だったが、
チャトラ&ドラミと違って
「人間の家で産まれて育った」というだけのことで
外遊びもずいぶん自由にしていたけれど、
帰ってくれば見かけが汚れていない限り
平気で抱いたり撫でたりしていたのに。


チャトラはエサをもらえる頃になると
ちゃんと玄関前に待っている。
この食いしん坊猫は全くカワイイヤツで、
ガツガツと食べながら喉をグルグル鳴らしている。
そして少し食べては振り返り、
私の手をチョンチョンとネコパンチして
「ナデテ!」と催促するのだ。           
喉のあたりを指先で撫でてやれば
その間ずっとグルグル喉を鳴らしてる。      
やっぱり抱いてみたくなる。けど ガマンガマン。
ドラミがなつこうとしないから、
チャトラだけを獣医さんに診て貰い
きれいにして家に入れて、
「ドラミはオソトね」なんてことはできないし、
「家に入れるなよ」と、夫からきつく言われている。
これ以上深く関わらないと決めたのだ。
                
キジトラは警戒心が強く人に慣れにくいというけれど
こんなに慣れないなんて・・・
そのくせ、私が外出から戻ってくると
ドラミがひとりで道端にちょこんと座って
私を待っていることもあったりする。
なのに車を降りてドラミに手を差し出すと
サッと逃げてしまう。

  ねえ、なんかワタシ、アンタをイジメたことあった?
  一度、2匹で玄関に入りかけて
  あわてて追い出したことはあったけど・・・
  あれがこわかったの?

昔飼っていたキジトラはすばしこくて賢かったけれど
「警戒心が強い」なんて感じた事は無かった。
不幸なことにドラミは母親の態度を
しっかり見覚えて身に着けてしまったのだろうか。

度々ドラミの餌をいただこうとしては
ドラミに怒られてスゴスゴ戻ってくるような
なんかのろまっぽいチャトラと違い、
ドラミのすばしこさと言ったらスゴイ。
ある時庭にいた私の横をオニヤンマがスイーッと
飛んで行ったと見るや ドラミが後ろからかけてきて
パッとジャンプして両手でつかまえて口にくわえ、
ちゃんと4本の脚で着地してしまったのだ。
  ・・・ ((+_+))・・・
あとでネット検索してみたら、なんと!
オニヤンマの飛ぶスピードは 時速70kmなんだそうだ。


ある日、
私が猫じゃらしで遊ばせていた時、
ドラミがじゃれながら喉をグルグル鳴らせているのを
聞いてしまった。 
    
なでられたり抱かれたりすることを拒んでいるこの子は・・・    
この子はこれだけの事で幸せを感じているのだろうか?

なんだか切ない。 

夕食後、「猫 幸せ」で検索してみた。

あったあった

《 猫が幸せを感じる時 》

① 喉をゴロゴロ鳴らす

  人間にさわられるのをこばんでいるドラミは
  猫じゃらしで遊ばせてもらう時が幸せなの?

② 尻尾をピンと立てる

  そう言えばドラミは
  私がエサをお皿に入れるのを待つ間
  尻尾をピンと立てて離れたところでウロウロしてる。

③ 飼い主にスリスリする

  チャトラはよくやってるけど、
  ドラミも一度だけ私の足元に来てやってたねえ。
  そのくせ なでようとしたらサッとにげてしまって・・・
        ? ? ?

④ お腹を見せる

  ドラミはこれまで一度も無かった。

⑤ 顔をなめてくる
 
  「抱っこしてはいけない」と決めているのだから
  これは当然無し。

⑥ 何かをひっかく

  あそうそう、
  ドラミは
  私が外出から戻ってくるとどこからか走ってきて、
  必ず庭の隅の立ち木に伸び上がってガリガリひっかく
  あれって幸せな気持ちの表現だったのかあ・・・

⑦ 目を細める

  そう言えばドラミは エサを待つ間、
  座って私の方を見て大きな目を細くしている

  「なんだか度々目をしょぼつかせてるけど、目が悪いのかなあ」
  と思ったりしてた。
 
  そうかあ、ドラミも時折幸せを感じているんだ。
  ・・・なんだか切ないねえ。
      はがゆいねえ。


世間には 屋内での生活しか知らず、
自由に外を歩き回っているよその猫を
窓越しに眺める事しかできない猫たちだっていっぱい居る。
猫本来の生き方からは ほど遠い生き方でも、
その暮らし方しか知らない猫はそれで幸せなのかもしれないし、
ドラミにしてもこの生き方しか知らないのだから、
自分で選んだ生き方なんだから、
これでいいのかも知れない。
チャトラが撫でられていたりしていても
全く気にする様子もなく、
寄って来ようともしないし・・・
これでいいのかも。いや、「これが」いいのかも。


この子たちは暖かいストーブもこたつも知らないし、
人間に抱っこされて甘えてナデナデしてもらう幸せも
知らないけれど、
飢える心配は無く自由に外を走り回り、
夜になればモコモコの寝床で抱き合って
・・・じゃないな、
ドラミがチャトラにしっかり抱かれて寝る。
こんな「半野生」みたいな暮らしかただって
この子たちは幸せなのかもしれない。
猫の幸せって、それぞれの住む環境に合わせて
幾通りもあるのだ。

  そうだ、これでいいのだ。

    ・・・・・イーノ! 

     ・・・ ・・・ ウン。

  春になるころには二匹を不妊手術につれていかなくては。
  ・・・どうやって連れて行こうか?


      ( つ・づ・く )
         ⇓
       
(第二章)


              

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