『後ろにいる者』ジャンル:ホラー

仕事を終えた私は、自宅に向かって歩いていた。
駅から10分も歩くと、街灯も少なく人気もほとんどない住宅街に出る。
国道の方から時折聴こえる排気音が響く夕闇の中で、背後に気配を感じた。
少し恐怖を覚えた私は背後を一瞥した。20m程後ろにフードを被った男が歩いているのが見えた。少し駆け足気味で歩くと、男も着いてきた。
そんなに速く走っているわけではないが、男と私の距離は縮まない。
曲がり角に差し掛かり、そこから少し進んだところで、あの男が私を呼び止めた。
恐怖で固まってしまったが、近付いてきた男は思っていたより温厚そうで逆に驚いた。落とし物でもしたのかな、そう思っていると、男が私に尋ねた。
「駅から20人くらいの行列が出てくのを見て気になって着いてきたんだけど、なんかのイベント?曲がり角過ぎたら君だけしかいなくて、ビックリしてつい呼び止めちゃったんだよね」
私は男の言っていることが理解できなかった。新手のナンパかとも思ったが、名乗るわけでも連絡先を聞いてくるわけでもない。不気味なことを言う人だと思うと同時に、何か嫌な予感がした。男は私が警戒しているのを悟ったのか、謝罪して去っていった。


去っていく男の後ろに、ハッキリと20人程の行列ができているのを見た私は、幽霊もちゃんと綺麗な列を作るんだな~と思いながら家に帰った。

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