『超高齢化社会』ジャンル:SF

誰もが知っていた高齢化社会という言葉を今を生きる若者は知らない。
年金制度、終身雇用、定年退職という言葉さえも遥か昔のものとして認識されている。
出生率は1%を切り、平均寿命は100歳を遥かに上回ったこの国は、当時の水準で言えば超少子高齢化社会と言ったところか。


「昔の私なら、なんて時代になってしまったんだって、きっと嘆いていたと思う」
そう言ったジョセフィーヌは笑っているようで、悲しんでいるようにも見えた。
「そうかな。僕にとっては予想通りさ。まぁ、まさか本当に死ぬまで働くことになるとは思わなかったけどね」
ダンは感傷に浸るジョセフィーヌをからかう。


彼らが出会ったのはもう30年も前になる。ダンは屈強でどんな過酷な試練も乗り越えてきた兵士だった。戦場の最前線で爆弾によって吹き飛ばされ、体の殆どが損傷を受けた。戦線に復帰するため、一時帰国する。自らの体を鍛え直すために訪れたある場所で、ジョセフィーヌと出会い、結ばれた。


突然、ダンの腕からアラームが鳴り響く。
「おっと、軍から反政府軍鎮圧で出動の要請が入ったよ」
ダンは嬉しそうに言う。
「あら、随分ご機嫌ね。今日はあなたの誕生日パーティーをやるんだから、早く帰ってくるのよ」
「わかってるさ」
ダンは腕のドリルを回転させ、金属が奏でるイカれたメロディーをかき鳴らす。
足裏に施されたジェットは、ダンの500キロもあるボディをマッハ6.9の速さで戦場へと向かわせるのであった。
そんなダンは、今年で280歳。

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