身体のこと
どこまでが自分の身体かって、実ははっきりしていないと思っていて。
一応、皮膚とか毛髪とかが境界線だけれど、その人の空間って、皮膚の外側にも広がっている。漫画の表現でもどんよりした雲を背負ったり、キラキラをまとったひとの表現がポピュラーで、空間に状態が広がってるっていうのを、言外に受け取ってるんだと思う。
感覚も物理的な身体を離れて広がるでしょう?自転車や車を運転するとき、車幅を自分の身体の感覚で捉えてるように。
実際身体は皮膚呼吸をしているように、完全に密閉された組織で覆われてる訳じゃない。体表を微分していったら、身体の内と外の境界線はどうなる?
だから、自分が広がることもできるけど、誰かが自分の中に入ってしまうというのも、ある。身体はいろんな交感をしてるし、いろんなものを内包できる。
身体で存在すると世界とつながれる。
川口隆夫さんが大野先生の空間をこんな風に仰った。「万華鏡のような、身体の周りにこう、空間が次々にこう、展開していって。(中略)身体の周りにふわっふわっふわって出来ていく、その、それがね、魂を作っていっている。」
大野先生の身体からたくさんのシャボン玉のような空間が生まれてくる様子が目に浮かぶよう。たくさんのふわっとした空間は、自分で生まれて来たみたいな、自由さと自立性がある。あの踊り、あの身体は大野一雄のユニークネスだけれど、大野一雄一人で成り立っているのではないような。宇宙とか、あなたとか私とか、亡くなった方も、みんな内包されてるものを見ている気持ちになる。だから、ふわふわが重なって飽和状態をふっと超えたとき、観てる人は泣いちゃうんだ。
みんな、どこか自分の深いところのことだと感じるんだ。