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ハチの巣みたいだ東京

前回、aikoナイトのことを中心に書いたけど、この記事では東京旅行全体の雑感を。

何度かこのnoteでは書いているが、僕は異常なまでの都会への憧れ、執着がある。その原因は明確で、中途半端な地方都市に生まれ、初めて一人暮らしをした大学でも地元と同規模の地方都市で生活をしていたためだと思う。生活にはおおよそ不便しないが、都会とは雲泥の差がある。たぶん、周囲の人間関係や自分の境遇に満足していなければ、何をしても楽しくないのが田舎だと思う。

新幹線を使えば、たったの90分。約3年ぶりに来た東京は、僕にとってはやはり異世界だった。東京駅に降り立った僕の脳内で、チャットモンチーの「東京ハチミツオーケストラ」が流れる。この街に巣を持つ蜂でも幼虫でもない僕だけど、街中には欲望という花のミツの甘い匂いをそこら中から感じた。

泊まったのは、aikoナイトの会場のクラブのある新宿。僕にとっての東京のイメージは、渋谷でも原宿でもなく、新宿である。溢れる人の波や、欲望にまみれたいかがわしい街の雰囲気は、まるでドラマの中みたいだ。今、僕はその街を構成する1人になっている。そんな感慨に浸りながら街を歩く。

ナイトの会場でもカルチャーショックはあった。話に聞いたり、SNSなどでよく見かける体格も顔も良いゲイがわんさかいるのだ。みんな揃いも揃って短髪、ガチムチ、髭。うわ〜本物だ〜という感じ。ゲイでない方にこの衝撃を伝えようとするなら、8頭身高身長モデル美女がズラリと並んでいる、といえば、煌びやかさが伝わるだろうか。明らかにヒエラルキー上位のゲイたちに、かっこいい〜と思いつつ近寄りがたい怖さも同時に感じていた。

2日目の夜、東京で働いている大学の同期Rと会った。生粋の東京生まれ、東京育ちの彼に僕がいかに東京という街に魅了されたかを熱弁すると、彼は「俺には東京は灰色に見えるけどね」と言っていた。そういえば松本で一緒に過ごした大学時代も、彼は誰よりも山を愛し、松本という街を愛していた。人は色んな環境も含めて、ないものねだりなのかもねという話をした。

Rは、一度社会人を経て大学に入り直していて、僕より13個も年上。みんな、彼には一目は置いていたけれど、年上だからって変に偉ぶったり垣根を作ったりしないRは、ずっと当たり前のように僕たちの中に溶け込んでいた。それでも、僕は他の同期にはプライドが邪魔して話せなかったり、同じ年代の視点からでは見えないことをRに意見が求めたくて、色々と話した。

色々話して、周りの目とか世間体をどうしても大事にしてしまう僕にとって、本当に気を許して甘えられる存在ができるといいね、とRは言ってくれた。Rと別れた後、その言葉を反芻しながら新宿の街を歩いていたら、なんだかものすごくダウナーな気持ちになってしまって、大変だった。

東京に来て感じたことは、これだけたくさんの人がいて、きっと逆に孤独を感じることもたくさんあるかもしれない。だけど、自分の居場所も田舎に比べて見つけやすいのではないかと思った。生き方が縛られないというか、人生の方向性がバラバラでも、良くも悪くもほっといてくれるというか。

煌びやかにみえる都会の生活にも、絶対困難さやつらさがあるのは分かっている。だけど、3日間1人で東京を彷徨った僕は、全てのしがらみから解き放たれたような、そんな感覚があった。ただ、今高まった衝動性を持ってして、ただ都会に出ても、きっと欲望に飲み込まれてしまうだけだ。自分の人生にとって、何を選んで何を捨てるのか、行きたい方向へ行くには足踏みしてないで、まずは一歩踏み出してみるとか、そういった覚悟がそろそろ必要な時期なのかもしれない。

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