恋愛に疎い20代男がaikoを聴く理由。

aikoが好きだ。6歳年上の姉が持っていたaikoの3rdアルバム「夏服」を借りパクして聴きだしたことから、僕のaiko遍歴は始まる。

よく、世代別の男女に聴いた好きなアーティストランキングで毎度上位にランクインしているaiko。そこにランクインしている理由を見ると、「かわいい!」「親しみやすいキャラクター!」「恋してる時に聴きたくなる!」などが挙げられている。

「恋してるときに聴きたくなる!」
ではここ1年の間、毎日欠かさずaikoを聴いている僕は、現在恋をしているのか。否である。というか、めちゃくちゃ恋愛経験に乏しい。

よくaikoを聴く男性の心理として挙げられるのが、「女性からこんな風に思われたいとつい想像してしまうのでは」とあるが、いやこれも違う。僕はaikoに、曲の主人公にシンパシーを感じているのだ。

では、そんな恋愛に疎い20代男子がなぜaikoを聴くのか。それは、aikoの曲の中に溢れている「愛されたい欲」の強さが自分とリンクするからではないかと思う。

「愛されたい欲」というのは、僕が勝手に作った言葉なのだけれど、「自己承認欲求」とか、「自己顕示欲」と似てるようでどこか違う。僕自身、この「愛されたい欲」が強い人間だと思う。

そう、僕はとにかく「愛されたい」のだ。といっても、明るく快活なクラスの人気者タイプには到底なれないし、そんなに目立つのは好きじゃない。だけど、漫画の人気投票企画で、主要キャラクターではないのに関わらず、毎回8位くらいをキープしている、ニッチな愛され方をしたい。あいつがいないと、なんか物足りないよな、どこの場所でもそんな風に言われる存在になりたい。自分にとって大切な人たちの中に、常に存在していたい。

完全なるメンヘラ気質である。年を重ねるごとに、自分らしさと「愛されたい」という願望のバランスが少しはとれるようになってきたとは思うのだけれど、どこかでずっと、本当の自分をありのままに曝け出したら、誰からも愛してもらえない、という不安は常にある。

その点aikoはというと、いわゆる親しみやすいキャラクターと気さくな人柄で、自然体で誰からも好かれる、自分とはかけ離れた存在だと思っていた。

しかし、aikoがどこかのインタビューで、「ライブがやれない期間、自分のファンの子が他のアーティストのファンになってしまって、もう戻ってきてくれないのではないかと不安になったり、嫉妬したりする」というような発言を見たことがある。僕は驚いた。皆から愛され、注目を一身に受けるaikoのような存在が、たくさんいるであろうファンの一挙一動にやきもきし、落ち込むことがあるなんて。

そう思うと、aikoのあの天真爛漫なキャラクターも、もしかしたらより多くの人から愛されたい、自分だけを見ていてほしいという気持ちから、計算されたものなのかもしれない。自分と同じ、「愛され欲」の塊のようなタイプなのかもしれない。

曲の中でも、aikoは相手の気持ちが離れていってしまうのではないかという不安、どのように振る舞えば、自分にずっと関心を惹き続けられるのかということをたくさん歌っている。

今パッと思い浮かんだ歌詞は、アルバム「夢の中のまっすぐな道」に収録されている「ビードロの夜」という曲の一節だ。

「ただあなたが元気でいればそれだけでいいの
と並べた言葉は嘘
会えないのも触れないのもあたしがいないのも全部嫌
本当は結局はそんな場面想像するだけで嫌」

こんな切実な歌詞があるだろうか。純粋に相手の幸せを願うことなんてできず、結局自分が相手にどれだけ思われているかを確認できなければ嫌だと歌うaikoは、このうえなく愛に飢えている。
 
世間一般の明るいイメージと違い、実は全然余裕なんてないんじゃないか、いつも愛を求めてぎりぎりのところで生きているんじゃないかと想像させてしまうaikoに、つい共感してしまうのだ。

「愛されたい」なんていう歪な感情、恥ずかしいし誰にも言えない。でもaikoは恥ずかしげもなく堂々と歌ってくれる。「好かれたい」「注目されたい」「自分だけを見てほしい」と。あぁ、今日もaikoをやめられそうにない。

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