見出し画像

ゲイの僕が好きだった女の子の話

人には話したくない恋バナというやつがある。そもそも、僕は自身の複雑な性的指向のこともあり、恋愛の話をするのが苦手だ。けどまあ、なんかしらエピソードを求められたときに対応できるように、雑な恋愛ネタ2、3個は用意している。自分を無駄にさらけ出すことなく、その場をしのぐために。だけど、いまだ誰にも話したことがない、好きだった女の子の話がある。大事にしている思い出なのに、見ず知らずの誰かになら聞いてもらいたいなんて、おかしなものだけど。

彼女と出会ったのは、大学1年のとき。同じ専攻の同期だった。正直に言うと、まず顔がどタイプだった。僕が好きな女性芸能人やアイドルと同じタイプの顔だった。おっとりとした雰囲気や、地元を離れても全然抜けない関西弁、1浪で誕生日が早かったので自分と2つの年の差があること、すべての要素が魅力的だった。

不思議な話だけど、大学入学したての頃の自分は、あまりにも恋愛というものから縁遠すぎて、彼女と付き合いたいだとかいう気持ちもさらさらなかった。ただ、あ、かわいい、人として好きだなって直感で思っただけ。でも、今思うと一目惚れに近かったのかも。

はじめて心がざわついたのは、1年の夏、彼女が同じ専攻の男子と付き合いはじめたときだった。うちの専攻は人数が少ないこともあり、男女関係なくわりとみんな近い距離で仲良くしていたということもあり、カップルができるのも早かった。でも、そのときは、ちょっとざわっとしただけ。彼氏の方とも友達だったし、別に波風たてるつもりもなかった。

その後、僕も部活で出会った子と付き合い始めたことに浮かれてたりして、彼女に固執することもなかった。小さな専攻のコミュニティーのなかで、同じ授業や実習を受けるうちに、自然と距離は縮まっていたけど、あくまで友達として。でも、好きという気持ちはずっとあったんだと思う。

確実に恋愛感情が芽生えたのは、3年の秋。僕は付き合っていた子に振られて、心が荒んでいた時期。彼女は同じ専攻の男子とはとうに別れて、バイト先の先輩と付き合っていた頃。ちなみに彼女はわりと恋愛体質なところがあって、彼氏が途切れないことに節操がないみたいな陰口を言われていたこともあった。そんな声があったことも、僕は気にならなかった。この頃からなぜか、彼女と2人で話すことが、グッと増えた。

んーこれは自分でも思い出すとかなりキモいんだけど、3年のゼミ決めの時期、別にやりたい研究テーマもなかった僕は、己の直感で真っ先にゼミを決めた彼女と同じゼミを選んだ。おかげで卒業研究の時期、僕は彼女とかなり長い時間を過ごした。

卒業研究は本当に苦しかった。実習や就活とも重なりメンタルがボロボロの中で、なんとか卒業するために興味もない、何をやってるのか分からない研究テーマとひたすら向き合う日々。そんな中、隣で研究を進める彼女に、何度救われたことか。おっとりしてるように見えて、自分が決めたこと、思いついたことは即断で動く行動力。教授の前で無茶苦茶なことを言い出したりして、でも持ち前の愛嬌で、その場を笑いに変えてしまうこと。ああ、好きだなぁって思った。卒業して、離れてしまうのが、本当に嫌だなぁと思った。

卒業式の前日、僕は彼女をご飯に誘った。「よく遊んでるけど、2人きりは何気に初めてやし、実質デートやな笑」なんて茶化す彼女に、帰り道、僕は告白した。「○○のこと、ずっと好きだったよ」。答えに困ったとき、彼女はいつも笑ってたけど、そのときも彼女は照れくさそうに笑っていた。出会ったときから好きだったという僕に、「うちのこと好きになるなんて、物好きやな」と言って、彼女はまた笑っていた。その後、空気を持て余して、なんとなくで僕は彼女の家に行くことになった。せっかく好きな人の家に行けたのに、結局恥ずかしくて、僕らはいつも通りの友達よ距離感で、大学4年間の思い出話をした。(思えば、彼女の家に行っても、ドキドキはしてもムラムラしなかったことが、僕が違和感を感じた最初かもしれない)

翌日の卒業式。専攻のみんなで夜通し飲んで、カラオケして、駅前からみんなで歩いて帰った。僕はその日のうちに、引っ越しをすることになっていたので、みんなの家の前でひとりひとりと別れていくたびに泣きそうだった。もう大好きなみんなと一緒にいれないんだなぁって。もちろん彼女とも。みんなと別れて、自分のアパートにたどり着き、引っ越しの最後の支度をしていると、彼女からラインがあった。「最後に会える?」

彼女が僕のアパートの前まで来てくれて、手紙を渡された。「卒業が悲しすぎて、みんなに手紙書いてたんやけど、渡し忘れてたから」。そういって手紙を手渡されたあと、彼女に急にハグをされた。戸惑う僕に、「めっちゃ嫌がってるやん笑」と彼女は笑いながらも、どこか寂しそうだった。

彼女がくれた手紙をひとりの部屋で読んで、僕は泣いた。どういう感情だったのかは、説明しづらいのだけど、とにかく好きだなぁと改めて思った。そして、この先これほど好きな人に出会うのも、なかなか難しいだろうなぁと思った。

いろいろあって、彼女とは2年以上会っていないのだけど、実は今度、大学の同期たちと会うことになった。彼女も来るらしい。正直僕は楽しみと、不安が半々だ。ただでさえ、自分の性的指向のことで揺れている時期なのに、好きだった女の子と再会するなんて。やっぱり好きだなぁって思うのか、過去の恋だったなぁって思うのか。また彼女と再会したら、ここで話そうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?