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#4 1000組の結婚式で活躍したマジシャンの現場術

 聖寿さんにお越しいただくのも、早4度目となったが、今回も、ブライダルマジックの現場術についてお伺いをしている。
 このシリーズは、過去に3回の対談をすでに行っているので、まだ読んでいない方は、まずはそちらから読むことをお勧めする。
#1 1000組の結婚式で活躍したマジシャンの現場術
#2 1000組の結婚式で活躍したマジシャンの現場術
#3 1000組の結婚式で活躍したマジシャンの現場術

 今回は、ブライダルの営業をどのように取るのか、その仕事の取り方をお聞きした。筆者も初耳の仕事の取り方と、仕事を取るにあたっての考え方を、惜しむことなく聖寿さんが教えてくれる。
 ぜひ、最後まで読んでみてほしい。実践するかしないかはあなた次第だが、実践しないにしても、新しい発想ができるようになるはずである。


廣木
今回も、またお越しいただきありがとうございます。

聖寿
こちらこそ、呼んでいただいて、
ありがとうございます。

廣木
このやり取りも、もう4回目ですね(笑)

聖寿
そうですね(笑)
でも、それだけ需要があるのかと思うと、
僕としては嬉しいことですよ。

廣木
さて、今回のテーマは、
ブライダルマジックの仕事の取り方です。
これまでに、様々なお話を伺い、
ブライダルでの仕事は、
リピート率が高い、と聞きました。
だけど、そこで仕事をすればリピートしやすいと知ったとしても、
まず、1回目の依頼を受けることができなければ、
リピートがあるかないかの話にもなりません。
1回目の仕事というのは、
どうやって取ればよいのでしょう?

聖寿
僕の場合、
「どこどこでマジック観て連絡しました!」
という依頼が圧倒的に多いですし、
みなさんそうだと思います。
だから、
マジックバーでも、大道芸でも、
あるいはプライベートでもキャバクラでも、
マジックを演じる機会が多いことが、
営業をもらうための
ひとつのポイントでしょうね。

廣木
確かに、
僕もそういう依頼が多いものではありますが、
しかし、結婚式の依頼となると、
極端に少なくなります。
演じる場所、というのが、
重要になるのだと思っているのですが、
いかがでしょう?

聖寿
おっしゃる通り。
どんな営業を取りたいかで、
演じるべき場所が変わってくるのは当然のことです。
アッパー層のみを相手にしたいのか、
低価格帯から高価格帯まで幅広くやりたいのか。
高級感か親近感か。
そもそもターゲット層を絞るのか、絞らないのか、
とかね。

廣木
ふむふむ。
すると、
結婚式の営業というふうにターゲットを絞った場合は、
カップルがデートしそうなオシャレなレストランとか、
結婚を望む人が集まる街コンや婚活パーティとか、
そういう場所で演じると良い、
ということになりますか?

聖寿
うんうん。
悪くない場所選定ですが、
ただ、もっといい場所があるんですよ。
必ず結婚するであろうカップルばかりが集まり、
1年以内に99%の確率で結婚式を挙げる、
そんな場所がね。

廣木
必ず結婚する!?
1年以内に結婚式を挙げる!?
そんな場所があるんですか!?

聖寿
答えはズバリ、ブライダルフェア!
これから結婚式を挙げる予定の新郎新婦が、
式場主催の模擬披露宴や試食会に参加するイベントです。

廣木
そんなイベントのことは、
全く知りませんでしたよ!
でも、
ではどうすれば、
ブライダルフェアでマジックができるんですか?

聖寿
依頼主は2パターンあります。
ひとつは、結婚式場の
提携先のプロダクションやブライダルプロデュース会社からの依頼、
もうひとつは、結婚式場からの直の依頼です。
僕は全て個人で直の依頼でしたけど、
プロダクションに預かりや所属で入るのも、
もちろんアリでしょう。

廣木
それで、
そのブライダルフェアは、
いったいどんな雰囲気の場所なんでしょう?

聖寿
とにかくみんな真剣ですよ。
独特の緊張感というか。
もっとも、
300万円以上の買い物をするわけだから、
真剣なのも当然のことです。
機会があれば、
スタッフの一員として見学してみたり、
結婚を考えてる相手がいれば新郎新婦として参加してみることを
お勧めしますよ。

廣木
なるほどですね。
そんな緊張感のあるブライダルフェアって、
どんなマジシャンが求められているんでしょうか?

聖寿
そういう重苦しい空気を、
パッと明るく「確実に」変えてくれるマジシャンが求められます。
中途半端にマジシャンがスベったりするのって、
新郎新婦からすれば良い迷惑ですからね。
フェアはノーギャラが多いけど、
ノーギャラでも変なマジシャンだったら、
結婚式場は入れたくないですから。
新郎新婦にとって一生に一度の結婚式、
それを決めるのがブライダルフェア。
果たして任せられる人間なのかどうか?
お客様や会場の方は、
マジックではなく「人」の部分を
見ていると思いますよ。

廣木
ははぁ、なるほど。
ちなみに聖寿さんの、
「人」の部分のアピールポイントって
どういうものなのでしょう?

聖寿
僕が武器にしたのは「司会マジシャン」。
マジックの不思議さよりもむしろ、
結婚式に求められるマジシャンの姿を追求しています。
不思議な現象を突き詰めるんじゃなく、
マジシャンとしての人間力、司会者としての力、
そんな部分を鍛えているんです。
結婚式全体の流れを知るために、
スタッフの方々、お客様、そして料理の動きを観察したり、
自分でお金を払ってその式場に料理も食べに行ったり、
配膳スタッフとして自分も働いてみたり、
音響ブースに入って見学させてもらったり。
いろいろな人の立場で結婚式を観察しましたよ。
それで鍛えられた部分は大きいと思います。

廣木
いろんな視点を持って、
結婚式のためのマジシャンとしてあるべき姿を追求した、
ということですね。

聖寿
はい。
多角視点を持つって、
重要なことですから。

廣木
前回までの話にもありましたよね。
ウケる、というマジシャンとしてのゴールではなく、
結婚式全体としてのゴールを考える。
それはつまり、
スタッフ、ゲスト、新郎新婦、マジシャン、
みんな目指すものがちょっとずつ違う中で、
共通項がどこなのかを探るということ(第1話幸せな結末)。
参加する親族、友人、仕事関係者、
全員が同じ船に乗っていると思えるように、
マジシャンが舵取りをすること(第2話構成ルーティン)。
スタッフも全員でこの船を漕ぐけれど、
マジシャンもその一員だという覚悟を持つこと。
それだからこそ、
仕事が向こうからやって来る
(第3話 信頼の質、バランス感覚、広告宣伝の場)。
そういう話をお聞きしましたが、
それとも通じることですね。

聖寿
まさにその通りですね。
そうしていれば、最終的には、
結婚式の本番もブライダルフェアも、
式場の方から依頼が来るようになりますよ。

廣木
そうなんですね。
ただその「覚悟」というのを持つに至るには、
やはりある程度の経験が必要であるようにも思えますね。

聖寿
まずは友達や親族の結婚式の二次会なんかで、
「ノーギャラでいいからマジックやらせて」
ってお願いしてみると良いと思いますよ。
それか、
先輩マジシャンについて行って、
結婚式での仕事を見学させてもらったり。
あるいは、
ブライダルフェアに恋人と行ってみて、
直接空気を感じることもいいことだと思いますよ。

廣木
なるほど。
そう聞くと確かにいろんな入り口が、
誰にでもありそうですね。
もっといろいろお伺いしたいですが、
そろそろお時間が迫ってきました。
名残惜しくもありますが、
最後に読者にメッセージをお願いできますか。

聖寿
そうですね。
どんな現場を選び、
どんなマジックを選び、
どんなマジシャンになるのか?
いつだって決めるのは、自分です。
だから、
僕を含め全先輩の言葉に、
盲目的に従うのは辞めてください。
先輩に合っていたからといって、
自分に合っているとは限らない。
今回僕が話した内容だって、
全て真に受けるんじゃなくて、
一度は疑って欲しいんです。
疑いつつも試してみて、
そして自分なりの結果を得て欲しい。
その上で、自分に合わなかったら、
やめればいいんです。
みなさんご存知の通り、
マジックというのは強力な道具です。
だけど、
その強力な道具に頼りきりで、
自分自身を鍛えられていない、
つまり、マジシャンとしての人間力を疎かにしている人を
僕はたくさん見てきました。
そうではなく、
どうか「人」の部分をこそ大切にしてほしい。
それが、
マジシャンとして成功できる重要な要素だと、
僕は思っています。

廣木
なるほど。
「道具」じゃなくて「人」が大事というのは、
「マジック」じゃなくて「マジシャン」が大事、
ということですね。
インタビューをしながら、
僕が勉強させていただきましたよ。
さて、今回は、
ブライダルでのマジックの仕事の取り方を
お伺いしました。
4回のお話の間に、
仕事に対するたくさんのヒントをいただきました。
友人の結婚式2次会で経験を積み、
ブライダルフェアで仕事を取り、
幸福度の高い演技でファンを作り、
その仕事現場でリピートを貰い、
それを積み重ねてバランス感覚や総合力を身に着け、
そして、確かな収入と、
マジシャンとしての自分の領域を確保する。
成功するための、
ひとつのモデルケースを知ることができました。
そして、それを可能にしたのも、
自分自身の試行錯誤によるものだと、
聞いているうちに理解もできました。

聖寿
このことが、
皆さんのお役に立てるのであれば嬉しいですね。

廣木
ええ、
とても重要な考え方を教えていただきました。
それでは、みなさん、
また次の機会に。

聖寿・廣木
バイバイ!






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