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#1 1000組の結婚式で活躍したマジシャンの現場術

ブライダルマジシャンとして活躍中の
聖寿さんをお呼びした。聖寿さんは、
これまでに1000組の結婚式でマジックを
演じてきた実力派マジシャンだが、
なんと、今日は特別に、その仕事の秘密を
教えてくれるという。
記事を読みながら画面をスクロール
してみよう。3分後には、あなたも
ブライダルマジックを成功させるヒントを
得ているはずだ。

廣木
はじめまして。
今日は、結婚式でのマジックの仕事の秘訣を
教えていただけると伺いました。

聖寿
秘訣、と言えるかな(笑)。
僕としては当たり前のことをしているつもり
なんですけどね。でも、なんでも聞いてください。

廣木
では早速なのですが、結婚式って、どんな
マジックがウケるんですか?ドッと盛り上がる
演技なんかがあれば、教えてほしいです。

聖寿
お言葉ですが、実は結婚式の演目って、
ウケるとか盛り上がるとかを狙わないほうが、
上手くいくんですよ。

廣木
え!そうなんですか!?

聖寿
だって、ほら。それだと、新郎新婦よりも
目立っちゃうじゃないですか。

廣木
確かに。すると、あまり目立たないほうが
いいんですか?

聖寿
僕は、マジシャンは黒子でいいと
思ってるんです。新郎新婦を引き立たせる
ための、ちょっとしたスパイスみたいな役割
ですね。だから、マジックの構成も、
最終的には「マジシャンすごい!」と
言われるんじゃなくて、
「新郎新婦おめでとう!」と言われるような
構成にしています。

廣木
なるほどー。マジシャンって、
目立ちたがり屋が多いイメージですが、
滅私奉公する気積もりでいないと、
ってことですね。

聖寿
そうなんです。
誰のためにやっているのかというと、
お客様のためにやっているわけですから。

廣木
確かに、そうですよね。自分が目立ちたくて
演じるならば、プロではなくてアマチュア
ですし、仕事ではなくて趣味だということ
ですもんね。

聖寿
実際、結婚式でマジシャンを呼ばない
新郎新婦に理由を聞くと、
「だって僕たちが主役じゃなくなっちゃう」
という答えが多いんですよ。バカウケしたり、
盛り上がりすぎたりすることは、
ブライダルマジシャンにとっては
仕事を取ることに対してマイナスの要因なんです。

廣木
ははぁ。それは知りませんでした。
ウケようと考えることが、ブライダルマジック
にとってはそもそも方向性が違うということ
なんですね。

聖寿
そういうことになりますね。
それに、めちゃめちゃウケるマジックって、
一方で、別に全く興味を持っていない人
だっているんです。特に結婚式では、
厳かにやりたいと親族は思っているのに、
新郎の友人は体育会系のノリになってたり
して。その上マジシャンが、そのノリに火を
注いだりすると、新郎友人たちはバカウケする
けど、親族は内心嫌な思いをすることだって
あり得る。僕は、なるべくそういう状況には
したくないんです。

廣木
なるほど、それは容易に想像がつくことでは
ありますが、そういうとき、聖寿さんは
どんなふうにしているんですか?

聖寿
目的としては、一部にバカウケよりも、
全員にややウケをしてもらおうと
僕は思っているんです。
だから、バカウケになってしまったら、
少し温度を下げるように調節したりしますね。
ウケてる人たちを相手にしているほうが、
マジシャンとしては楽なんですけど、
僕は逆に、ウケていない人たちのところに
行って、そこを盛り上げて、全員のウケ度を
合わせることこそが重要だと思っていて、
そうしています。

廣木
さすがプロフェッショナルの言葉ですね!
御見それしました!

聖寿
とんでもないですよ!そう思ってはいても、
現場では必ずしもそうならず、
今でもトライアンドエラーを繰り返していますから。
だから、あくまで僕の考え方
だということなのですが、ウケ度100点よりも
幸福度100点を僕はいつも目指していて、
全員が少しずつ楽しい思いをしてくれたら、
僕としてはそれが一番の成功です。
そもそも、マジシャンがバカウケ
させなくたって、結婚式は最初から
おめでたくて嬉しくて感動する会場なんですから。

廣木
確かに!「マジシャンの力で挽回しないと!」
という状況ではないですもんね(笑)。
それで、肝心要の、そういった聖寿さんの
理念を託された、ラストパフォーマンスは
何なのだろうと気になるわけですが、
それも教えてもらえたりするんですか?

聖寿
ええ、構いませんよ。トリネタは
フローティングローズです。
紙で作ったバラが空中に浮かび、
それに火をつけると本物のバラになる、
という演目です。だけど、重要なのは、
この現象じゃなくて、ここで出現したバラを
新郎に渡して、スポットライトの中心で
新郎が新婦にそのバラを渡すというサプライズ
な演出のほう。これは、プロポーズの瞬間を
この場で再現するというようなことでも
あります。僕が演出したいのは、
まさしくこの部分で、この新郎と新婦を見て、
会場から惜しみのない拍手が沸き上がるんです。僕が「皆さん拍手を!」なんて言わなくても、会場の全員が、これを見れば拍手を
したくなるような、こういうものを見るために今日は会場まで足を運んだんだ、と思うような
演出をすることが、僕の仕事なんですね。

廣木
聞いているだけで、
目頭が熱くなる思いですよ。なるほど、
それは新郎新婦も、会場の参加者も喜ぶわけだ。

聖寿
そうなんです。会場のお客さんたちが何を
望んでいるかというと、上手いマジックでも
楽しいエンターテイメントでもなく、
幸せそうな新郎新婦の姿なんですね。
その要求を叶えるのが、ブライダルマジシャン
の仕事ということになるんです。

廣木
なるほど。とても良いお話を伺いました。
しかし、上手くいけば
幸福度100になるのだろうとは思いますが、
その具体的なヒントは、
トリネタに辿り着く前のルーティーンに
隠されている気がしますね。

聖寿
おっしゃる通りかもしれません。
確かに、トリネタの成功は、
それまでのルーティーンにかかっていると
言っていいと思います。

廣木
ですよね!
その内容も気になりますね。

聖寿
いいですよ。
必要とあらば、お答えしますよ。
ただ、何を演じるか、よりも、
どのように演じるか、というような、
考え方のほうが重要になると思いますよ。

廣木
ふむふむ。
そうなんですね。
早速伺いたい気持ちではありますが、
今日はそろそろお時間が迫ってまいりました。
続きはまた次回、聞かせてもらえますか?

聖寿
ええ、もちろんですよ。またいつでも呼んでください。

廣木
ありがとうございます。では、次回は、
聖寿さんのルーティーン構成を
教えていただきますので、
お楽しみに!

聖寿
オーケー、グッバイ!シーユー!さよなら!
アデュー!アウフヴィーダーゼーン!
アンニョン!ザイチェン!

廣木
急にノリが大道芸!(笑)


第2回に続く



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