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#3 1000組の結婚式で活躍したマジシャンの現場術

 前々回、前回と好評だったので、今回もブライダルマジシャンの聖寿さんにお越しいただいた。前回に引き続き、ブライダルマジックの極意をご教授願うことにする。
 なお、まだ第1回、第2回を読んでいない方は、そちらから読み始めることをお勧めする。
#1 1000組の結婚式で活躍したマジシャンの現場術
#2 1000組の結婚式で活躍したマジシャンの現場術

 ページをスクロールしていってほしい。5分後のあなたは、ブライダルマジックの魅力を理解していることだろう。こんなに魅力的な仕事であるのなら、僕も私もその現場で仕事をしたい、と言いたくなること間違いなしだ。

廣木
またご足労いただき、
ありがとうございます。

聖寿
こちらこそ、
また、こんな機会をありがとうございます。

廣木
さて、今回は、
ブライダルマジックの、
仕事としての魅力についてお伺いできるということですが、
聖寿さんは、今のブライダルのお仕事について、
どんな風に感じておられますか?

聖寿
そうですね。
とてもやりがいのある仕事だと思っていますが、
僕の中では
「人気」「実力」「収入」
という3つのメリットを感じています。

廣木
ふむふむ。
ひとつずつお伺いしましょう。

聖寿
まず「人気」についてですが、
量より質、広さより深さの獲得が、
僕の狙いです。
たとえば僕がテレビやコンテストに出ても、
おそらく勝てないでしょう。

廣木
またまたご謙遜を!

聖寿
いえ、謙遜とかじゃなくて。
むしろ逆ですよ。
テレビに出ている大物マジシャンでも、FISMの優勝者でも、
ブライダルで勝負するなら
僕が勝つという自信を持っているんです。

廣木
なるほど。
それが、ブライダルでのメリットのひとつである
「人気」ということでしょうか?

聖寿
はい。
ブライダルという現場は、
他のマジックの現場と比べて、
1度の仕事でとても深い信頼を得られると、
僕は感じているんです。

廣木
1度の仕事で深い信頼ですか?

聖寿
マジシャンとクライアントの関係って、
1度の仕事でそこまで深い関係になるのは普通は難しい。
打ち合わせを1回やって、
本番で数十分の演技をして、
ほんの1、2時間の繋がりしかないんですから。
だけど、その1、2時間であったとしても、
ブライダルの仕事であれば、
深度のある信頼関係を作れるんです。

廣木
ふむふむ。それは何故なんでしょう?

聖寿
結婚式というイベントが、
人生に深く繋がっているからだと思います。
新郎新婦にとっても、その親族にとっても、
他人事だと傍観するような場面じゃなく、
とても主体的になれる場所が結婚式です。
その人生のストーリーに、
信用していないマジシャンを登場させるわけにはいかない。
ちょっと逆説的ではありますが、
ブライダルの仕事をしたから信用されるというよりは、
信用されたからブライダルの仕事を頼まれる、
という部分もあるでしょうね。

廣木
なるほど。
頼んでしまったのだから、もう信用するしかない、
というような状況もあり得そうですね。

聖寿
そうそう!
そういうことです。
だから、依頼を受けたからには、
深い信頼関係が築けることが確約されている、
とも言えると思います。

廣木
企業パーティーだと、
1度の仕事ではそこまでの信頼関係にはならないけど、
ブライダルの現場は、深い関係になれる現場だ、
ということですね。
それで人気者になれる、と。

聖寿
そういうことです。

廣木
なるほどなるほど。
では「実力」というのは?

聖寿
前にも言ったことですが、
新郎新婦の想いにも応えたい、
親族の想いにも応えたい、
ゲストの想いにも応えたい、
だけど、そのそれぞれの想いが、
少しずつ違ったり、もしかしたら相反したりするのが、
ブライダルの現場です。
そんな中で、
どうしたら、全員の幸福を達成できるだろうか、
と考える必要がブライダルの現場には求められて、
バランス感覚が鍛えられる場所でもあるんです。

廣木
バランスですか。

聖寿
はい。
マジックには、
自分の内から発せられる「芸術」という側面と、
外から求められる「芸能」という側面があると、
僕は思っています。

廣木
早い段階から自分の中へ中へと、
超絶技巧にシフトするマジシャンは多いですよね。

聖寿
そうそう。
でもそれは、
たとえるならば、
10個の積み木があったとして、
それを全部上に積み上げて10段の高さの塔を作ってしまうような。

廣木
いつ倒れてもおかしくない、という状況ですね。

聖寿
でしょ。
積み重ねるとしても、
塔のようにではなくて、
ピラミッドのように積んだほうがバランスはいい。
これは考え方や、どういうマジシャン像を目指すかにも寄るのですが、
僕はピラミッドのようなバランス感を目指すマジシャンである、
ということなんです。
つまり、
新郎新婦のことを考えて、
親族のことを考えて、
ゲストたちのことを考えて、
式場のスタッフのことを考えて、
自分のマジックのことを考えて、
予算や経費のことを考えて。
どの角度から見ても破綻しないように、
バランス良く成長したほうが、
良いマジシャンになれるのではないかと、
僕は思っているんです。
独りよがりのマジックを演じてしまう、とか、
新郎が喜ぶけどゲストは喜ばない、とか、
親族は喜ぶけど式場スタッフは嫌な思いをする、とか、
経費をかけすぎて仕事をすればするほど赤字になる、とか、
それはすべてバランスが破綻した結果だと思うんですよ。

廣木
ふむふむ。
何かひとつに突出するのではなく、
バランス良く成長することができるのがブライダルの現場で、
それがマジシャンとしての実力に繋がる、
ということですね。

聖寿
そうそう。
一芸に秀でることはもちろんアリですが、
僕はそっちを選ばなかった、ということですね。
10個の積み木を持った時、
どれほどの安定感を築くのか、
どれほどの高さに積み上げるのか、
それは人それぞれで、
自分に合った方法があると思います。
もちろん、積み木の数を増やしていくことは、
それはそれで重要なことだと思います。
一回り大きなピラミッドを作れますからね。

廣木
なるほど。
では、「収入」についてはどうでしょう?

聖寿
さっきの「人気」の話と繋がる部分ではありますが、
ブライダルの仕事をすると、
とても深い信頼関係になれるので、
出張マジックのリピート依頼が多いんです。

廣木
ゲストからも結婚式のマジックを依頼されるということですか?

聖寿
はい。
新郎新婦の友人って、
結婚適齢期である人が多いですよね。
だから「自分の結婚式にも、ぜひ聖寿さんにお願いします」
と言われることも多いですし、
来賓席の上司に気に入られて、
忘年会や新年会の出張マジックを依頼されることも多いです。

廣木
ははぁ。
ちなみに、どのくらいの割合で、
リピート依頼が来るものなのでしょうか?

聖寿
僕は結婚式の1度の仕事で、
1回はリピート依頼を取ることを目指しています。
時には、1度の仕事で、
2、3件来ることもありますよ。

廣木
そんなにリピートが来るものなのですか!?

聖寿
はい。
だから、僕は、
ブライダルの仕事は、広告の場であるとも思っていて、
タダで仕事をしてもいいと思っているぐらいです。
にもかかわらず、
十分な報酬が得られるわけですから、
とても良い仕事の場だと僕は感じているんです。
他の現場だと、
そこまでのリピート率にはならないですから。

廣木
なるほど。
報酬を得ながら、次の仕事を取ることができる、
とすると、
収入の面としても、
とても良い現場だということになりそうですね。

聖寿
そうなんです。
だから、簡単な現場だと言うつもりはありませんが、
魅力ある現場なので、
多くのマジシャンにチャレンジしてみてほしいと思います。
ただ、僕が言いたいこととしては、
みんながブライダルでやるべき、ということではなく、
自分の適性を自分の頭で考えて、
最も良い選択をしてほしい、ということですね。
僕の場合は、たまたまブライダルに適性があった、
というだけかもしれませんから。

廣木
適性というのであれば、
お名前がすでに天職を示していますよね。
聖なる寿と書いて「聖寿(せいじゅ)」。
あたかも「ブライダル」と当て字を入れたくなるような芸名ですが、
これは本名だと伺っていますよ。

聖寿
そうなんです。
読みは違いますが、漢字のほうは本名のとおりですね。

廣木
生まれた時から、
ご両親がお名前をつけた時から、
39年後のこの成功が定められていたのではないかと思うと、
鳥肌が立つ思いですよ。
これを天職と言わずして、何と言うのでしょうね。

聖寿
まぁ、そう言ってもらえると、
両親も喜ぶかもしれないですね。

廣木
本当に、素敵なお名前だと思いますよ。
さて、今回は、
ブライダルの現場の魅力について教えていただきましたが、
こうなると、どうやってブライダルでの営業を取ればよいのか、
その仕事の取り方も気になってきました。

聖寿
もちろん、それもお話しできますが、
流れ的に、また次回という感じでしょうか?

廣木
お察しが早くて助かります。
次回もまた来てくれるかな?

聖寿
いいともー!

廣木
ノリがいい!(笑)


第4回に続く


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