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#2 1000組の結婚式で活躍したマジシャンの現場術

 前回に引き続き、今回も聖寿さんをお呼びしている。今回は、聖寿さんが結婚式でルーティーンを構成する際の考え方について教授してくれる。
 もしまだ前回の記事を読んでいないのであれば、そちら(#1 1000組の結婚式で活躍したマジシャンの現場術)を先に読むことをお勧めする。
 5分後のあなたは、1000組の結婚式を成功に導いた手順構成の考え方を理解していることだろう。


廣木
また来ていただき、ありがとうございます。

聖寿
こちらこそ、また呼んでいただき、
ありがとうございます。

廣木
前回は、聖寿さんのブライダルマジックの、
クライマックスについて伺ったのですが、
今回は、ショー全体の構成を伺える
と聞いています。

聖寿
ええ。
ぜひお役に立てる情報を伝えたいです。

廣木
ありがとうございます。
では早速ですが、
どういう演目をどういう順番でやれば、
ブライダルショーはうまくいくのでしょうか?

聖寿
うーん。実はね、
そういう考え方では、
ショーをうまく構成することはできないと思うんです。

廣木
え!?
そうなんですか!?

聖寿
ブライダルショーの構成を考えるときって、
どのマジックをやろうか、とか、
何を演じれば不思議なのか、とか、
そういうことを考えているわけでは、
僕はないんです。
そうではなくて、
まずどのテーブルを盛り上げようか、とか、
盛り上がりの低いテーブルがあったら何をしようか、とか、
そういうところから考えていったほうがいいと、
僕は思っているんですね。

廣木
ふむふむ。

聖寿
僕の場合は、
トリネタのフローティングローズがあって、
そこでマジシャンが出したバラを
スポットライトの中で、
新郎が新婦に渡すことでプロポーズを再現する演出をする、
というラストシーンが決まっているので、
そのラストシーンが最もうまくいくように、
それまでの構成を逆算して作っているんです。
だから、それまでの演目は捨てネタのようなものなんですよ。
ラストさえ上手くいけば、
他のネタなんて、誰も覚えていなくたって構わない、
と思っているんですね。

廣木
なるほど。
ひとつひとつの演目が重要なのではなく、
途中の演目はラストシーンのための伏線である、
ということですね。

聖寿
なんだか作家みたいな言い回しですね(笑)

廣木
一応は推理作家なんですよ(笑)
すると、伏線が何なのか、捨てネタがどんなネタなのか、
と聞いてもしょうがなくて、
どう考えて、そのネタを選んでいるのか、
と伺うほうがよさそうですね。

聖寿
そうですね。
僕はトリネタの前に、土台作りとして、
6つのマジックを演じるのですが、
さっきから言っているように、
何を演じるかが重要なのではなくて、
何のために演じるかが重要なんですね。

廣木
はい。

聖寿
僕の場合、まず、1つ目のネタで、
主賓席を掴みます。
それほど大きなスケールのマジックじゃなくていいけど、
でも目の前で見たお客さんたちは、
もう僕というマジシャンの味方になってくれる。
2つ目のネタの役割は、
会場全体を盛り上げること。
スケールの大きな演目で、
後方のお客さんたちにも見えるようなマジックを演じて、
1つ目のネタが見えなかった部分をカバーするんです。
3つ目のネタは、
機動力のある演目が好ましいですね。
会場全体を僕が動き回りながら、
お客さんの手を借りて演じて回る。
参加率を高めるのが、
この段階の目的となります。

廣木
楽しんでいないお客さんがいると
いけないから、会場の全員が少しでも
楽しんでくれるように、盛り上がりの
低いテーブルを優先して盛り上げる、
と前回伺いました。

聖寿
そう。全体の盛り上がり具合を
調節するためにも、
機動力のある演目は役に立ちます。
そして、会場の盛り上がりが均等になったところで、
4つ目のネタとして、
会場全体が一気に盛り上がるマジックを演じます。
と、ここまでが、マジシャンが
スポットライトを浴びるための演目です。
まず、僕というマジシャンが、
お客さんが目を向けるに値する人物であることを、
ここで理解してもらえることが第一段階ですね。

廣木
なるほど。
見る価値もないマジシャン かもしれないと、
観客が疑っていることもある、
ということですね。

聖寿
そういうことです。
だけど、ここまででお客さんの心を掴めれば、
あとは僕が目立たなくても、勝手に見てくれるようになります。

廣木
確かに。
もっと面白いものを見せてくれる、
そんな期待感を持たせられれば、
マジシャンはとても仕事がしやすくなりますね。

聖寿
そうなれば、5つ目のネタとして、
新郎の友人にステージに上がってもらい、
僕と新郎友人が協力してできるような演目をやります。
ここで、お客さんは新郎友人に拍手を送るし、
新郎友人にもスポットライトが当たります。
同じように、6つ目の演目で、
新婦の友人にステージに上がってもらい、
新婦友人にもスポットライトが当たる。
そして、最終的に新郎新婦にスポットライトを
当てて、トリネタのフローティングローズです。

廣木
なるほど。
すると、6つの演目で土台が積み上がっていれば、
最後のフローティングローズの成功は、
ほぼ約束されている、
というような状態でもありそうですね。

聖寿
そういうことです。
だって、会場の全員が、
その幸せな結末を望んでいるんですから。

廣木
なるほど。まとめると、
まずは前方の主賓席を盛り上げて、
次いで会場全体に見えるマジックを。
そして動き回って、
盛り上がりの低いテーブルを
積極的に楽しませ、その後で会場が
一気に盛り上がる演目。
さらに、新郎の友人と新婦の友人にも
スポットライトを当てて、
ここまでの演目を土台として、
クライマックスのフローティングローズ。
スポットライトの中、
新郎が新婦にバラを渡し、
会場から惜しみない拍手が送られる、と。
聞けば聞くほど、研ぎ澄まされた構成です。

聖寿
恐縮ですよ。
本当なら、
どういう演目を演じているかもお教えしたいのですが、
だけど、そうすると、
その演目をやれば成功するのだと、
誤解されてしまいそうで。
重要なのは考え方のほうで、
マジシャン個々人が、
自分の頭で、自分の脳みそで考えて構成することに
意味があると僕は思っているんです。

廣木
おっしゃる通りですね。
もし今日、聖寿さんが
ただただルーティーンを明かしてくれるだけだったら、
その劣化コピーをするマジシャンが、
たくさん出てしまったかもしれません。

聖寿
ね。そうなってほしくはないんです。
せっかく記事を書いてもらっているのだから、
読んでくれた人が役に立てられる情報を
お伝えしたいです。

廣木
それができる内容になっていると思いますよ。
今日もとてもいい勉強ができました。
あと、ブライダルの現場のお話は、
聞いているだけで幸せな気持ちになりますね。

聖寿
実際にやると、より幸せな気持ちになりますよ。
だって、幸せそうな新郎新婦を見ていると、
こっちまで幸せになるじゃないですか。
僕のほうがお金を払ってもいいと思えるぐらい
幸せをお裾分けしてもらっているのに、
しかもギャラをいただけるんです。
こんな嬉しい現場って、他にありますか?
他にもブライダルの魅力って、たとえば…………

廣木
聖寿さん聖寿さん。

聖寿
はい?

廣木
盛り上がっているところ申し訳ないのですが、
そろそろお時間が…………

聖寿
ああ、そうなんですね。
じゃあ、次回も僕を呼んでくださいよ。
ブライダルの魅力を伝えたい、という気持ちになりましたから。

廣木
もちろんですよ!
では次回、また聖寿さんに来ていただき、
ブライダルの魅力について語っていただきます!

聖寿
オーケー、バイバイ!まいど!アディオス!オール……オルヴォ……
フランス語も勉強しておきますm(_ _)m

廣木
それ大道芸の鉄板ネタ!(笑)


次回に続く


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