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なんでも壊れるロンドンの住宅

ロンドンのお家と聞いてどんな印象を持ちますか?

渡英前の私は、歴史がある美しい建物で、日本の家よりずっと広くって、おしゃれな家具が置いてあって、住人だけが使える素敵なお庭があって、お隣さんは素敵な老夫婦でなーんて想像をしていました。

私の想像はある意味正しくって、大多数は間違いでした。


高すぎる賃料

ロンドンは物価が高い(例:ラーメン1杯3,000円)ことで有名ですが、住宅費の高さは世界的にみても飛びぬけて高く、市内中心部のファミリー向けマンションの毎月の賃料は3,000ポンド(日本円で約450,000円)以上となることも稀ではありません。8,000ポンド(日本円で約1,200,000円)、15,000ポンド(日本円で約2,250,000円)なんて物件もざらにあります。

そんな住宅事情がある中で、一般的サラリーマン家庭の我が家が借りられる予算はさほど高くなく、海外住宅あるあるのどぎつい洗礼を受けるのでした。


わくわくの新居探し

時はさかのぼる事2018年7月。初めての海外生活、旅行ですら訪れたことのないロンドンでの新生活を始めるにあたり、頼りにしたのが日系の不動産仲介会社でした。結論からいうと、これが大きな間違いになることをその時の私たちは気付いていなかったのでした。

まず、私たちが住居を探すのに参考にしたのは事前の口コミ。日本人が多く、比較的治安がいい、憧れの高級住宅地という情報があったロンドン市内北西部St.John's Woodという駅で新居を探し始めました。この地区は、市内へのアクセスも良く、Baker Streetまで1駅、Bond Streetまで2駅、Green Parkまで3駅、Westminsterまで4駅、ということで多くの日本人に人気があります。歴代日本人が住んできたというフラット(イギリスではマンションの部屋の事をフラットと呼びます)も多く、ある種の安心感がありました。

現地の日系不動産屋さん2社に問い合わせをしたところ、すぐにいくつかの物件の内覧手配をしていただきました。車で案内された町並みはうっとりするほど美しく、これから始まる新生活に期待が膨らみました。しかしそれは、本当のお金持ちが住む家で、我々のようなサラリーマンには手の届かない物件だったのです。


日系不動産仲介を選ぶだけで不利になる部屋探し

日本人向けに紹介される物件は、実際の物件価値と必ずしも比例しているわけではなく、駐在員の懐事情をよく知った値付け(家賃補助のMAX金額)がされています。

私たちが実際に、内覧でみせていただいた建物はどれも古臭く(失礼っ!)、古びたカーペットがはがれていたり、ぎしぎしときしむ廊下や階段だったり、いまにも壊れて止まりそうなエレベーターだったり、共用部を見ただけでも、とてもじゃないけれど心躍るものではありませんでした。

お部屋はというと、いいように言えばアンティークな家具でデコレートされたお部屋や、なぜかオーナーの女性のヌードの絵画が飾ってあるお部屋や、ドアノブが吹っ飛んでいたり、壁の塗装がボロボロと剥がれ落ちている部屋だったり、どこも事前情報とはかけ離れた物件ばかりなのでした。

不動産屋さんのお話では、「これがロンドンの住宅のスタンダードで、理想の住宅はなく、皆さん何かしら我慢をして暮らしている。日本人が住んでいるから、辛うじてこのクオリティを保っている。他の国の人は家の中で靴を履いて過ごしているから、床もギシギシで荒れているし、掃除も適当で、どんなように住んでるかわかったもんじゃない。この中から決めるしかない。」とおっしゃっていました。ほんと嘘ばっかりっ!!!(実はこれは日系不動産を使った場合のスタンダードで現地不動産を使った場合は全く事情が違うこと、理想の住宅を探すツールを別記事で書きます。)


日本人コミュニティの中で暮らしているだけでは気づかない不都合な世界

実際、渡英後に仲良くなった日本人のおともだちの家は、もちろん皆さん素敵な暮らしをされていましたが、物件事情としては大差はなく、日系の不動産屋さんの言う通り、何かしら我慢をして暮らしていらっしゃる印象でした。(中には天井がカビていて、病気になったので奥様とお子様を帰国させた方もいらっしゃいました。)

我が家がお借りした家はというと、見た目はリノベーションがされ新しめでIKEAの家具で統一されたお部屋でしたが、外見は築90年のマンションで外壁工事中、一人が乗るのがやっとの広さのエレベーター(今にも止まりそう)、建付けが悪く、他の住人が帰宅したことが音でわかる共有玄関。入居二日目の朝にぶっとんだ玄関のドアノブ、鍵穴が壊れて回らない鍵。突如とまる湯沸かし器、温度設定ができないオーブン、水が出ないシャワー、使っているときとんでもない爆音がする洗濯機とロンドンの住宅あるあるを絵に描いたかのようなお部屋でした。

極めつけは、入居1週間もたたないうちに、隣人が泥棒に入られたことでした。(これ以外にも、ひったくりや窃盗事件も多く、私が住んでいた6か月間だけで知人が2回ひったくり事件に遭い、近くのモスクで殺人事件あり逃走した犯人をヘリで探すということもありました。)事前の比較的治安が良くて、住みやすい高級住宅地という情報は何も知らない駐在員向けに情報の非対称性を利用した、ただのセールスピッチだったのです。

私が、慣れない土地で引っ越しを決めた一つの理由が、日本人の友人と他の国出身の人の家のクオリティの違いでした。なぜか現地に住む日本人以外の友人が住む家は、新しく、おしゃれで壊れてもいないし、綺麗で賃料も安いことに気付いたのでした。そこで、日本人コミュニティ向けビジネスの罠に気付き、現地の不動産屋を利用することにしたのですが、その話はまた次の記事でお話したいと思います。

私がイギリスで捨てた100の事
その1 日本人だから安心という先入観



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