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金色の獅子

北欧の国フィンランド。この国には幾度となく他国に占領された不遇な歴史があります。今の国旗は白地に青の美しいスカンジナビアクロス。他国に占領されている時は十字架の中心に金の獅子が刻まれました。国土は占領されても国民のアイデンティティは決して奪われていないという意志表現だそうです。

さて島国である日本はいにしえから先進の国々の文化を受け入れ、それを運用しながら自分たちの勝手に合うようにアレンジするのが得意な国でありました。このリデザインをするという対応力ですが、歴史上度々起こる外圧の下では意外と脆く本質を見失うこともあるようです。
時は明治、1911年に夏目漱石が「現代日本の開花」と題した講演の中で、当時の近代化は外圧による表層上滑り的なものであり、真の「開花」とは内発的なものではなくてはならない!と問題提起したと言われています。

かつてデンマークで起きたデザイン運動の産物である美しい家具達は、伝承される古典様式の本質を見抜き自分たちの今に合わせ リ・デザインしたことがその独自性の一つと言えます。産業革命以来新しい発想や技術開発ばかりに心を奪われがちな潮流の中で当時世界を圧巻したのがドイツでした。しかしデンマークはそれを意識しながらも独自の道を歩みました。鶏口となるも牛後となるなかれ!はそれを支えた魂と言われ、田舎者は田舎者なりにさめた目を持っているという精神性を盾に、堂々と世界と渡り合ったという過去がとても興味深いところです。

大戦後米国によって「デザイン」の解釈が「スタイリング」にすり替えられ、敗戦国日本はまたしても外圧によりその影響を受けることになりました。その結果、高度成長期から令和現代まで本来得意技であったリデザインが「~風」や「~調」と相まみれながら売上至上主義の中 迷走し続けています。煎じ詰めると今のSDGsの流れにも逆行するのですが。

先述した金色の獅子が語り掛けます。「あなたたち日本は優秀な国なんだよ。君達は西洋のコートレットをポークカツレツにし、更にスープをみそ汁にナイフとフォークを箸に持ち替え、見事とんかつにしちゃうセンス豊かな国。これだってアイデンティティが伴った決してものまねではない立派なリデザインじゃないか。漱石もきっと認めるさ!」と。

今後、表層上滑りではなく真の国際化の為には、マーケットへ向けた消費者の厳しい眼差しも必要なのかもしれません。

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