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なぜゲーミングPCにはグラフィックボードが必要なのか?

 おはようございます。またはこんにちは。もしくはこんばんわ。マゲっちSCと申します。2022年も6月下旬となりました。すでに日本は北海道以外は梅雨入りをしました。が、沖縄と奄美群島はすでに梅雨明けし夏本番となっていますね。今年の夏至は6月21日でした。つまりこれからはどんどん日が短くなっていくのですが、実際に体感できるのは10月以降になるでしょうか?まだまだ明るい時間が長いですね。

 さて、前回のブログではストレージの容量を全部使い切った場合にどういう事が起きるのか?ということをお話させていただきました。最近のストレージはすべてを使い切ることは本当に難しくなってきていますが、それでも最近ではゲームソフトなどがダウンロード販売されているため、気がつくとほぼ空き容量がないという状態になっている方もいらっしゃると思います。
 まずは正常なストレージとしてコンピュータ上から判断されなくなります。また、空き容量がある程度空いていてもソフトの動作に支障が出るようになることもあります。また、ストレージの容量はコンピュータに接続した場合に実際の容量よりも少なく表示されますが、どちらの容量も正しいということもお話しました。空き容量の理想としてはだいたい100~150GBあればほとんどのソフトは問題なく動作するはずです。

グラフィックボードとはなにか?

 では今回のタイトルにありますグラフィックボードに関してのお話です。皆さんはゲーミングPCにはグラフィックボードが必要だということはなんとなくですがご存知かと思います。ではなぜグラフィックボードが必要なのか?ということを説明できる方はそう多くないはずです。
 そもそもグラフィックボードとはいったい何者でしょうか?以前にざっくりとですがブログ記事にしています。詳しくはこちらをお読みいただければ幸いです。
 そもそも昔のPCにはグラフィックボードは存在していませんでした。厳密に言うと存在はしているのですがそれはマザーボードにない映像出力機能を提供するために存在していて、今のように映像や3DCGをリアルタイムに演算してモニターへ転送するということはほぼしておらず、CPUから送られてきた演算済みの情報を受け取ってモニターへ転送する。という役割でした。流石に2000年くらいになると家庭用ゲーム機でも3DCGを使用したゲームが多くなり、それに並行してPCゲームも3DCGへ移行する流れが高まったため、いわゆる今のようなグラフィックボードへとどんどん進化していくことになります。
 そうです。昔のコンピュータ環境では映像の演算もCPUが行っていたのです。いわゆる2Dの平面の映像で、しかもファミリーコンピュータやスーパーファミコンのようなドット絵で描かれたアニメーションなので、演算に関してもCPUの能力で問題なく行うことができました。
 しかし家庭用ゲーム機がプレイステーションの登場後、徐々にドット絵から3DCGへ変化していくとPCゲームも徐々にそのような流れには逆らえず3DCGのリアルタイムな計算が必要になってきます。
 3DCGのリアルタイムな計算と言うのは少し分かりづらい表現ですよね。簡単に言うと皆さんがゲームパッドなどから入力した入力信号をコンピュータが受け取ります。受け取った入力信号を処理装置で瞬時に計算し物体のCGを再度すべて描画し直します。最近のゲームのCGはすべてこのように計算されてその都度画面に再描画されています。
 ですが、よく考えてみてください。3DCGによって表現はかなりリアルになっています。先ほど出した例をもう少し詳しく見ていきましょう。例えばRPGで右を向いていた自分のキャラを左へ向かせようとした場合ですが、ゲームパッドの左レバーを左へ短くちょんと倒します。
 するとコンピュータはゲームパッドからの入力信号を解析・計算して、自キャラが今向いている方向とは逆の方向へ身体を向けようと計算します。ゲームによっては一瞬でむくものもあれば向くまでにいくつかの動作を挟むものもあります。そのときに表示されるすべての3DCGを計算し描画する必要がありますが、CPUは他にも条件分岐やBGMなどの再生、ストレージからのデータの入出力、ネットワークからのデータの入出力などの様々な計算を行わなくてはなりません。さらにPCの場合はOSやウィルス対策ソフトなどの同時に起動しているソフトの処理、各種ドライバの計算などが加わります。
 そうなると3DCGのリアルタイム処理をCPUに任せた場合におそらくですが瞬時に計算し切ることが難しくなり、ゲームによっては動作に支障を来す場合が出てくるのは想像に難くありません。ひょっとしたら計算自体は可能かもしれませんが、発熱量が大量に増えることでサーマルスロットリング(発熱によるCPUの処理能力の低下)が起きる可能性が高くなります。そのため自キャラが左から右へ向くという信号が送られてきた場合、CPUはその状態について演算は行いますが、CGの描画指示はすべてグラフィックボードへ転送します。

グラフィックボードではどのようなことが起きているのか?

 ではざっくりとですが、グラフィックボードでは何が起きているのでしょうか?まずコンピュータが起動するとCPUからはグラフィックに関するすべての事象がグラフィックボードに転送されてきます。グラフィックボードには実はグラフィックメモリという映像を記憶するための専用メモリが搭載されています。メインメモリにはコンピュータの動作に必要なデータがすべて読み込まれて記憶され、CPUが計算を行うとその結果を新たなメモリ領域へ記憶したり上書きして記憶していきますが、グラフィックに関してのデータはすべてグラフィックメモリが記憶します。グラフィックというのはOSの壁紙やブラウザに表示されている文字や動画など、画面に表示されているすべてのものをさします。
 CPUから
「これとこれを計算してモニターへ送ってくれ」
と指示が来るとそれに応じた計算を行いモニターへ転送します。モニターを複数枚使っている場合はモニター1へとかモニター2へとかの指示も含まれています基本的にグラフィックボードは複数枚のモニターへそれぞれ分けて転送する機能があるので、モニターを複数枚使用していても情報が交錯することがありません。
 グラフィックボードはグラフィックメモリにある映像として出力可能なデータを計算して各モニターへ出力します。こうしてみるとCPUとメインメモリの関係性に非常に似ています。そのためグラフィックを計算するCPUという意味合いで「GPU」とも呼びます

CPUの計算とグラフィックボードの演算の違いとはなにか?

 では、CPUとグラフィックボード(GPU)の演算に差はあるのでしょうか?結論から申し上げるとあります。
 それは計算の精度です。よくわかりませんね。そもそも0と1の演算処理に対して精度なんてものがあるのでしょうか?
 まずCPUでは計算を正確に行います。CPUはOSや各種ソフト・各種ドライバなどの計算を正確に行わなければなりません。それができない場合はデータが不正になったりとか条件分岐が正確に行われないなどの弊害が発生します。
 例えばキーボードから「A」を入力したとします。しかしCPUの計算精度が低い場合、まずキーボードをきちんと認識するかどうかすら怪しいのです。仮にドライバをきちんと処理できたとしてお話を進めていきます。キーボードの文字はOS側にある文字コード表に照らし合わせて実際に文字としてコンピュータに認識されるわけですが、計算精度が低いと「A」のキーを押すたびに計算結果が変わる、つまり文字が毎回変わる可能性があるわけです。また、メインメモリへのデータの読み込みや書き込みについても信頼性が損なわれるのは言うまでもありませんね。
 対してグラフィックボードは大雑把に素早く演算処理を行います。CPUが処理した内容を素早く映像に反映させなければならないため超高速に演算して1コマずつモニターに映像を送信します。また現在の映像の状態をグラフィックメモリに記憶しておく必要もあります。
 現在ではPCIe4.0を16レーン使って超高速にデータのやり取りを行っていますが、当然3DCGなどのデータ容量も増えていきます。またCPUが処理・転送した内容を映像に反映させるため、どうしてもCPUの計算より処理があとに終了します。そのため細かく正確に計算していては時間がかかってしまうのです。その時間差はゲームをしていて、コンピュータに入力したタイミングより数秒ずれて表示されてしまうなどの弊害を生みます。競技性の高いゲームの場合はそのズレが勝敗に影響してしまいます。そのため、グラフィックボードでの計算は大雑把でかまわないのでできるだけ素早く演算して画面へ転送する必要があるのです。

CPUの内蔵グラフィッカーでゲームはできないのか?

 では超高性能なCPUを搭載すればグラフィックボードがなくてもゲームができるのではないか?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実際現在のCPUには映像を計算して出力する機能がついています。特にビジネス用途に使える家電量販店で売られているようなノートPCではCPUのグラフィッカーを使って映像を計算してモニターへ出力しています。
 正確に言うと「軽いゲームならプレイできる」が正解になります。軽いゲームというのはOSに最初からついてきているゲームや「ゲームパック」のような感じでOSについているゲームではないけれども、各種PCメーカーがプリインストールしているゲーム、それから一部のブラウザゲームです。これらのゲームはそもそもあまりPCに負荷をかけるものではないので問題なく動作します。しかし軽いゲームはそれだけ容量も少ない傾向が高く、いわゆるミニゲーム程度の完成度のものです。大作RPGのようなものは基本的に搭載されることはありません。
 現在のゲームの環境では大作と呼ばれたり、売れ筋のゲームはほぼ3DCGを使ったものです。一部2DCGっぽく見えるモノもありますが、実際には2.5Dのような感じで作られており実質3DCGです。CPUに搭載されているグラフィッカーはあくまでゲームプレイのためのものではなく、映像が出力できればそれでいいというレベルです。
 ちなみにゲームや動画編集以外のいわゆる「普段遣い」と呼ばれるような処理の場合、主にウェブサイトの閲覧や動画再生、ビジネス文書作成、ブログの記述などになるのですが、これらを行った場合にかかるグラフィックボードへの負荷はだいたい3~6%程度です。動画を2つ同時に再生しても12%程度なのでほとんどグラフィックボードは遊んでいる状態になっています。CPUの内蔵グラフィッカーの場合、このグラフィックボードへ掛かる負荷が10%以内である場合は割と普通に動作します。複数の動画を同時に再生した場合は少しカクつきが発生するかもしれません。
 ゲームや動画編集を行う場合は設定にもよりますが、グラフィックボードへの負荷は普段遣いの4~5倍くらいになります。さらにゲーム配信をしたりVTuberのアバターを同時に動かすとなるとさらにグラフィックボードへの負荷が追加されることになります。特に配信を行う場合はグラフィックボード側でデコード(配信サイトで扱える映像に変換する処理)を行わなければなりません。グラフィックボードの使用率が80%を超えてしまうと徐々にゲームなどにカクつきが出たり、映像のエンコードに時間が掛かるなどの支障が出てきます。
 そのため2022年6月現在ではまだまだ3DCGを使った大作ゲームをプレイする場合はグラフィックボードは必須というのが回答となります。しかし、現在その問題に一石を投じるメーカーが現れようとしています。その企業とはAMDです。今でこそintelもARC(アーク)というグラフィックボードを開発・販売する準備を整えていますが、AMDはRadeonというグラフィックボードを専門で開発していた企業を傘下に入れ、CPUとグラフィックボードの開発を長らく続けてきました。そのAMDが今年の秋頃に出す新CPU(AMDの内臓グラフィッカーつきCPUはAPUといいます)を出す予定なのですが、そのCPUに入っているグラフィッカーがいわゆる大作ゲームが支障なくプレイできるレベルのものを入れてくるのではないかと言われているのです。
 私個人としてはそんなに性能のいいグラフィッカーを搭載した場合、CPUの排熱とグラフィッカーの排熱が相まってそれぞれの能力を落としてしまうのでは?と思っているのですが、製造プロセスをより細かくすることで排熱量を調整し、実用に耐えられる状態にしてあるのかもしれません。
 いずれにせよこれが成功するかどうかでゲーミングPCの未来が変わるかもしれません。もし成功すれば10年後くらいには
「昔はゲーミングPCってグラフィックボードっていう映像出力専用の部品が必要だったんだよ」
という昔話ができるようになっているかもしれませんね。

まとめ

 ということで今回はグラフィックボードに関して少し詳しく見ていきました。結果として2022年6月現在ではまだグラフィックボードは必須という結論になります。が、将来どうなるかは未知数ですね。
 では次回ですが、グラフィックボードのお話の続きになります。今回のブログでなんとなくですが
「ストレージのないコンピュータみたいだな」
と思われた方もいらっしゃるでしょう。グラフィックコアにグラフィックメモリ、それらをつなぐ基板にグラフィックコアを冷却するクーラーがついています。たしかにこれにストレージをつなげればコンピュータとして動作しそうですよね。
 次回は実際にグラフィックボードを搭載したPCでゲームをする場合に気をつけていただきたいことを中心にお話を進めていきます。特に電源周りを皆さんは意識されてますか?ご興味がありましたらまたお立ち寄りください。それでは失礼いたします。



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