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少女と王女

ハンガリーの土着品種に、Királyléanykaキラーイレアーニカ(ハンガリー語で「王女」の意味)Leánykaレアーニカ(ハンガリー語で「少女」の意味)というブドウがあります。
レアーニカはキラーイレアーニカよりも古く、キラーイレアーニカはレアーニカとトカイの貴腐ワインに使われる白ブドウ、クーベルズールーを掛け合わせて偶然できたと言われています。名前が似ていることもあり、混同されることが多いわけですが、両品種ともオーストリア・ハンガリー帝国、現在のルーマニアにあるトランシルバニア起源と言われています。

シノニム論争?

何年にもわたり、キラーイレアーニカはルーマニアの代表的な土着白ブドウ品種Fetească Regală(フェテアスカ・レガーラ)とレアーニカは同じくルーマニアの土着品種Fetească Albăフェテアスカ・アルバと同一と考えられてきました。実際、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)の「国際ブドウ品種とシノニムのリスト」の中でキラーイレアーニカは1677番フェテアスカ・レガーラがシノニムにレアーニカは1851番フェテアスカ・アルバとシノニムになっています。一方で全く異なるものという意見もあるようです。
キラーイレアニカの親Kövérszőlőクーベルズールー(「太ったブドウ」の意味)ということからルーマニアのブドウGrasă de Cotnari(「太った~」)と混同されたことから、遺伝子的にキラーイレアーニカとフェテアスカ・レガーラが異なるブドウではないかという内容でした。
今ではフェテアスカ・レガーラはフェテアスカ・アルバ と FRANCUSE(フランクシャ)の自然交配によってできたと言われていますので、きっと情報が錯綜したのではないででしょうか?
遺伝子研究は進み、様々なブドウの起源が明らかにされてきていますが、古くから栽培されているブドウについてはまだまだ分からないことが多く
あるようです。
きっと、これからも専門家の方達が多くのことを明らかにしていくのでしょうから今後も中東欧の土着ブドウ達から目が離せません。
 
キラーイレアーニカ(王女)とフェテアスカ・レガーラ(王家の乙女)レアーニカ(少女)とフェテアスカ・アルバ(白い乙女)。名前も似てますね。

ハンガリー土着品種レアーニカ

レアーニカ(少女)

このブドウの名前については興味深い話があります。1848-1849年の独立戦争の際、村人が洗礼や婚姻の謝礼を司祭に支払いできなかった際、ワインにつけられた名前といわれています。
当時、子供が生まれ、洗礼を受けるとブドウの樹で謝礼が支払われ、教会のブドウ園に植えられました。ある時、女の子が多く生まれ、新しいブドウの品種として司祭が新しい名前をつけたいと考えました。村人は生まれた子供の為に、最も多く教会のブドウ園の為にブドウ樹を用意した両親の子供の名前をつけようとしたところから、小競り合いがおこりました。そこで教会では全員を納得させる為に、新しいブドウ品種として“レアーニカ”(少女)という名前をつけたといわれています。
 
収穫量も少なく、果皮は薄い為、腐りやすいのが理由で大量生産には不向きなため、この古くから栽培されているレアーニカは昔ほどの人気はありません。酸味が少ない為、収穫時期に最大の注意を払わないといけないのも理由です。
エゲル地方の石灰岩土壌はこの品種にとても向いており、完熟、酸味を保って収穫することができました。今ではブークやマートラ、更に西のモールネスメーイ、南の大平原でも栽培されるようになりました。
収量を少なくすればレアーニカで素晴らしい品質の熟成にたえる辛口、甘口、レイト・ハーヴェストと様々なワインを醸造することができますが、一般的にレアーニカはブレンド用として使われ、特にエゲルのエグリ・チッラグを醸造する際には欠かせない白ブドウ品種になっています。
レアーニカ単一品種のワインは比較的フルボディのフローラル系、穏やかな酸のワインになります。歴史的に有名なワインムーリ・レアーニカは大概セミ・スウィートになります。辛口レアーニカを鶏肉や牛肉料理と合わせたり、セミ・スウィートのレアーニカをシナモンのきいたアプフェル・シュトゥルデルと合わせるといいでしょう。
 

ハンガリー土着品種キラーイレアーニカ

キラーイレアーニカ(王女)

キラーイレアニカは1970年代にハンガリーで発見され、親と言われているレアーニカよりも広く栽培されています。最初はバラトンボグラールで、今ではキラーイレアニカの生まれた地域といわれているエゲルやマートラと同様にクンシャーグでも広く栽培されるようになりました。
ワインはフレッシュで繊細な香り、ブドウらしいワインになります。レアーニカと比べるとよりハーバルでフローラルのアロマがあり、生き生きした酸味があります。10年程夏場に飲みやすい白ワインとして人気がありましたが、キラーイレアーニカのしっかりした酸味はアロマティックなワインのブレンドをサポートする役割で好んで使われるようになりました。レアーニカとは違い、熟成には不向きですが、樽を使わず若いうちに飲む早飲みワインができます。
 
醸造家たちは、キラーイレアニカからレイト・ハーヴェストの甘口ワイン、シャンパーニュ方式のスパークリングワインなど様々なワインを醸造しています。
キラーイレアーニカのワインは特にアルコール度数が低く、高い酸度を保つと本領を発揮します。瓶内発酵はその特徴をはっきりさせ穏やかに香るスパークリングワインになります。

キラーイレアーニカとペアリング

おススメ料理

若々しい印象のキラーイレアーニカはサラダやシーフードとペアリングするのがいいでしょう。モッツァレッラやフェタチーズ、クリームチーズのようなフレッシュチーズ或いはゴモルヤ(ハンガリーの羊のチーズ)と合わせてもいいでしょう。
又は、ソーダ水を加えてフルッチにするもおススメです。

キラーイレアーニカを使ったワイン

レアーニカを使ったワイン


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