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読書感想『紫骸城事件』※ネタバレ注意

今週読んだ二冊目の本は著:上遠野浩平さんの調停者シリーズ(?)第二巻、『紫骸城事件』でした。二日連続で一日で読破してしまうほど個人的には好きになってしまったシリーズ。
今回もとてもとても楽しみにしていました。

前作の殺竜事件とおよそ同時並行的に進んでいたお話の用で、主人公は風の騎士にあこがれている若き英雄君でした。

と、本編に触れる前に序盤の神話の部分について。
この作品シリーズは前作からかなり『正義と悪』の対比が多いような気がします。そして今作の舞台を作り上げた魔女と人造人間もその対比を踏襲した上でより深い設定になっていました。
『人を治める天才のはずが闇に堕ちて魔女となった者』と『破壊のために作られたが最も善性を持っている者』。なんだがこの両者、ギルガメシュ叙事詩のギルガメシュとエンキドゥとにてません?
『人を治める立場でありながら暴君として君臨するギルガメシュ』と『破壊兵器として作られながら美しい心を持ったエンキドゥ』
まぁ、今作のリ・カーズとオリセは仲良くはならないんですが。

というわけで本編。
魔道大会の中で人が殺されるミステリーですが、ものすごいトリックが超序盤から仕掛けられていました。
いやー全く気が付かなかった。確かに時々主人公が喉がザラザラするとは言っていましたが、まさか水を飲むという存在を忘れる認識阻害による自殺や液体を飲みたかったゆえの暴走とは。
何をどう考えたらこんなトリックが出てくるのでしょうか。

なんかすでに書きすぎてるので内容は省略して感想へ行きますが、今作はトリックもさながら、前作同様『調停』の部分がとても面白かったです。
城内部で調停した双子と、城外部で調停したED。前作でさんざんに言われていた双子のやばさと能力の高さ、そしてEDの善と悪ではなく未来の利害や大局を見た調停など今作の伝えたいところが詰まっていました。

現実でもかようにしてそうですが、善と悪だけでは成り立たない世界という複雑で嫌な世界を少しでもましにしようとする人というのはどの時代、場所でもいるのでしょう。今日続いているパレスチナの紛争といい善悪で解決できない問題は数多あります。改めて世界の複雑さを認識します。

そして問題の最後のシーン。これは次回作が読みたくてたまらなくなる終わり方です。現代に最強の魔術師と破壊兵器が蘇ったわけですから、次回作以降で対決編があるのかな?


というわけで本編はここまで。
あとがきに参りましょう。

今回のあとがきは『城』について。作中でも繰り返し出てきましたが、『城は道具である』というフレーズ。これと絡めた話でしたが、人間は心な中に城を作るという哲学の話でしたね。

人は城に頼ることができるが、城のほうは別に人を支えるために頑強にできているわけではないのである。

『紫骸城事件』あとがきより

知識や常識といったものも城なんですかね。知識に頼ることはあっても、知識が我々に頼ってくることはないように。
自分のいる位置が変わった際に城はついてきてくれず、新たにつくらないといけない。ただ、その瞬間裸になるのが人間みな怖いんでしょうね。


というわけで今週読んだ二冊目の本は『紫骸城事件』でした。
残念なことにお借りしたのがここまでなので、次巻はまたの機会となりますが、ぜひシリーズを読み終わりたいと強く思うシリーズです。
必ずいつか全部買います。

次に読む本は久しぶりの西尾維新。『少女不十分』を読みたいと思います。

それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki

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