見出し画像

世の中の「まだなさそう」に向き合う。|madanasaso

あなたの「やってみたい!」をアシストする間借り情報メディア・間借り人(まがりん)。わたしたちは『点と点を“線”にする。』をコンセプトとし、発信しています。

東海3県(主に名古屋)で間貸しをしている方に取材。第9回目はmadanasasoを運営する株式会社On-Coの皆さん。On-Coの思想、大型拠点(mandanasaso)を持つまでの経緯、今後のビジョンについて伺いました。

水谷 岳史
株式会社On-Co 代表取締役
都市部と過疎地(山村・漁村)の特徴を捉え、関わる人の主体性を上げる企画を数々と創出。メディアや行政の注目を集めるなか、誰もが自由に挑戦と失敗ができる社会を目指して実証実験を続けている。

藤田 恭兵
株式会社On-Co 共同創業者
さかさま不動産、ソイソースマンション、madanasaso、上回転研究所などクリエイターを中心としたコミュニティづくりを強みとしサービスの立ち上げを行う。コミュニティを混ぜ合わせ偶発的発展をさせることが新しい未来につながると信じている。

※取材当日はオンラインでご参加いただきました

福田 ミキ
株式会社On-Co 取締役/パブリックリレーションズ
メディアと伴走体制を整え、狙った先の認知と行動を変容させる戦略で、数々のプロジェクトを加速させている。 経営と連携させたPRで目的に合わせた産学官とのリレーションシップを図っている。

ご自身の代表作であるホットケーキミックスとチョコレートで描いたグラビアアイドルの絵と共に

吉村 理華
madanasaso コーディネーター創住人

名古屋芸術大学卒業後、アートと社会の関係性を探求し、インテリア、福祉、宿泊、イベント企画などに携わる。一人一人がその力を発揮し合える社会の在り方を模索している。


ー "未来の前座になる"

水谷:企業理念は”未来の前座になる”。僕らの事業でいう、さかさま不動産[※1]も上回転研究所[※2]もそう。世の中にまだないものをどんどん試して「こんな未来になるかもしれない」という予想を発信する。その結果を報告するまでが僕たちの仕事です。

[※1]さかさま不動産
空き家を借りたい側がやりたいことを書き、そのやりたいことに共感した相手を貸す側が選ぶというサービス。空き家情報を開示するのに抵抗がある大家さんの課題、空き家問題の解決につながっている。

[※2]上回転研究所
ゴミ箱をなくすというビジョンを掲げ、素材デザイナー・村上結輝を中心に、廃棄問題の解決に取り組むアップサイクルコミュニティ。コーヒーかすと牛乳から作る「カフェオレベース」をはじめ、さまざまな作品が生まれている。

水谷:お金になるかならないかは二の次。面白い価値があるなら、未来の前座になり得そうなら、続けることで徐々に信頼が集まってくるはず。んで、そういうことをやっていると“狂う”。「狂ってるぐらいがちょうどいいよね」という考え方を大事にしています。

基本的に、社会から求められること・自分たちができること・自分たちがやりたいこと、この3つが重なる部分からプロジェクトを立てていて。やりたいことの1つが「まだないものを作り出す人たちの拠点を作りたい」。そのために僕たちができることは空間、コミュニティを作ること。その中心にあるのがここ、マダナサソウ。


ー きっかけは“より良い環境を作ってあげたい”という想い

藤田:弊社で管理している久屋大通のマンションで村上(株式会社On-Co 執行役員/素材デザイナー)がゴミから素材開発をしていて、若い子たちが「僕もやりたい」「私もやりたい」と集まってきた。中には3Dプリンターでモノを作る人やデジタルファブリケーションを使って建築をやっている人がいて。そういったクリエイターの子たちが出入りするようになったことでマンションの一室では手狭になってきたので、この場所を借りることにしました。

コーヒーかすと牛乳から作る「カフェオレベース」のランプシェード(@madanasaso2F)

福田:村上くんは作品を通して廃棄物に対する意識を変えようとしていて、コーヒーかすを使ったアップサイクルワークショップも開催していました。「海外から大事に運ばれてきたコーヒー豆を挽いてお湯を通した瞬間“飲み物”と“ごみ(コーヒーかす)”に分かれるってかわいそう」といった感覚に触れた参加者が、次の日からコーヒーかすを捨てるときにハテナが浮かぶようになって、徐々にそういう人たちが増えていったんだけど。やっぱりマンションの一室なので、その感覚に触れる機会を持てる人たちって少なかった。

水谷:大きいものを車から降ろしてエレベーターで部屋まで運んで、ドアを開けてっていう大変そうな姿を見て。熱量持ってやっている子にはもっと良い環境を作ってあげたかったんだよね。とはいえ、思いのほか大きい場所になったけども(笑)。

藤田:想像の3倍ぐらいある(笑)!


ー madanasasoってどんな場所?

約400平米の元印刷工場を改装して、2023年4月にオープン

吉村:2階建ての構造になっていて、1階が研究開発をするためのモノづくりの工房、2階は多用途スペース(キッチンあり)になっています。

▼詳細


ー 箱が大きくなったことで生まれた“変化”

福田:マンションの一室だけで共有していた価値観に触れる分母が大きくなって、“まだない未来に向かう”ことへのインパクトがちょっと広がったんじゃないかなって思っています。吉村さんがうま〜くナビゲートしてくれるので、ここを訪れた人に「何か面白いことをやらないと人生損かもしれないな」と思ってもらえたことも。

吉村:「まだなさそうなことに出会いたい」「まだなさそうなことをつくりたい」という思いを持った多種多様な分野の方が来てくださるので、その方自身の取り組みや興味を持っている分野をお聞きして、コラボレーションできたら新たに世界が広がりそうな方をご紹介しています。

吉村:「本当はこういうことがやりたかった」というのを引き出せる場所でありたいなとも思っていて、少しずつできてきている実感があります。ついこないだだと、ここでPV撮影をしたミュージシャンの方がいらっしゃって。「こんなことできますか。あんなことできますか」と色々聞かれて、一緒になって相談しながら進めました。

藤田:異色の経歴を持つ吉村さんだからこそ、まだなさそうなものをつくっている人と、何かに挑戦したい人とのつなぎ止めがしっかりできているのかなって思っている。

福田:実は、クリエイター気質の方以外に国交省の方や大企業の方が東京、大阪からいらっしゃることも結構あって。皆さん「ここで打ち合わせがしたい」とおっしゃるんですね。色々な刺激物があるこの空間だからこそ、着想が変わってくるんだろうなという“期待”をすごく感じています。


ー 将来のビジョン

藤田:クリエイターの方とシンパシーが合うというか楽しいです。ゴミから何かができるのもそうだし、土壁で家を作るっていうのもそう。そういったことが僕自身の新しいアクションに繋がっているので、この場を通してクリエイターが増えるといいなと思います。

福田:議論とモノづくりが常に繰り返し行われている状態が理想ですね。そういう場所であると、まだない未来に向かっていけるのかなと。村上くんに限らず、周りから理解されないものであっても「こうしたらもっといいのに」と思う世界観に向かって夢中で取り組むクリエイターの姿は尊いなと思っていて、そういう子たちに「尊い」って言って自分も頑張ろうと思い続けたいですね。

吉村:私自身も制作中に考えているだけだと難しくて。やってみたら意外と簡単だったり、やってみたことで思いもよらなかったことが起きたりするので、話し合って概念が生まれた後にやってみて、というのを繰り返しできるといいなと思っています。

水谷:ありがたいことに「こういう考え方があるんだ」「考え方が変わりました」と言ってくれる人がいて、それぞれ引っかかりどころが違えどフックがあるような気がしていて。きっと、これまでに集まって来てくれた人が色々なフックをつけていってくれているんだと思う。ここを訪れた人に対して脳みそをぶっ壊せるような空間であり続けたいです。


= 編集後記 =

On-Coの皆さんは“これまで私が考えもしなかった発想で社会を変えようとしている方々”という印象。お話を伺えば伺うほど目から鱗でした。取材を終えて、私も何かやってみたい、何ができるんだろうという思考に。なんだか面白そう!楽しそう!と思った、そこのあなた。ぜひ訪れてみてください!(zaki)




文:zaki
編集、写真:Re!na

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?