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犬よ犬主とあれよ冬の空

 先日、私の娘が道で迷っている犬を保護し、交番に引き渡すまでの顛末をnoteに記した。(「迷い犬追えば逃げるよ冬の月」)
 その後、犬を引き渡した交番に問い合わせをしたところ、犬は無事飼い主のもとに帰ったそうだ。このことはツイッターでもつぶやいて、犬を愛する多くの人々からの「いいね」をいただいた。
 今回は、この度の出来事について、私自身が特別に思うところを記してみたいと思う。
 私はこれまでに2匹の犬を飼ってきた。
 2匹ともクリーム色、オスのフレンチブルドッグだ。
 1匹目はペットショップから、そして2匹目は飼っていたご家族の一人が犬アレルギーになってしまったご家族から、里親募集サイトを通じてお迎えした。
 その出来事はは2匹目の時に起こった。
 その犬を飼い始めて間もない頃、夕食後に犬を散歩に連れ出そうとした時のこと。
 ほろ酔い加減でつっかけをはいて、ふらふらとマンションを出て歩こうとすると、マンションの出口までは嬉しそうについてきた犬が、マンションを出た途端、なぜか歩きしぶりだした。
 まあ、まだあんまり慣れてないしな、と思いながら少し強めにリードをぐいと引くと、カラーが首からスポッと抜けてしまったのだ。
 犬が走り出す。
 血の気が引く。
 ほろ酔い加減の、履物もつっかけの初老の男が、やんちゃ盛りの中型犬に走って追いつけるわけがない。
 何度も犬の名前を呼び、追いかけながら最悪の事態を想像した。思えばこの時、家を出て右にある車道の方へ犬が行かなかったことが幸いしたのだが、当時の私は、家に帰って家族になんと説明したらいいのかと、半ばあきらめかけた頭の中で考えていた。
 もうどう考えても追いつけない距離の差をつけられ、犬は十数メートル先の角を曲がっていった。
 これ以上走っても追いつけないのはわかっていたが、とりあえずその角まで走って行って、道の先をみると、一人の男性が私の犬と一緒にいた。
 男性はニコニコしながら犬をくしゃくしゃ触っていた。
 安堵感からか、酔って走ったせいからか、私はふらふらとした足つきで男性の方へ歩いていった。
 とりあえず男性に礼を述べると、男性はニコニコしたまま「カラーじゃなくてハーネスにした方がいいかもしれませんね。」と言い残し、歩き去っていった。
 結局一生ハーネスをつけることなく、その犬は病気で天に召されたのだが、当時の話を家族とするたびに、それはやっぱり、あの時犬を捕まえてくれたのは神様だったんだよいう結論に至ってしまうのである。

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