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海外コメディってなにがおもしろいの? | Laugh Track #0

■ 海外の笑いがわからない!!

「英語を楽しく学ぶなら海外コメディドラマ!」 

-そう言われて英語字幕をつけながら見る『フルハウス』。
話の内容はまぁまぁわかるし、おもしろいと言えばおもしろい。
・・・が、何でもないような場面でドッと笑い声が響く。 

「今の何が面白かったんだ?」 

そんなモヤモヤに苛まれる日々・・・。
あぁ、海外の笑いがちゃんとわかるようになりたい!
変顔や奇声でフフッとなるんじゃなくて、ジョークの内容を理解して笑いたい!

そんな気持ちを胸に、海外コメディドラマの笑いどころをレポートする『Laugh Track』。始まります。


■ なぜ海外のコメディ作品を観るのか

「アメリカには『ツッコミ』という概念がない」

そう聞いたことはないだろうか?実際、英語圏のコメディにはツッコミに相当する役がない。日本の漫才には、基本的にボケとツッコミが存在するが、それに対して海外のスタンドアップコメディはエンターテイナーがソロで客を楽しませるのが主流だ。コメディアンが冗談を言い、オーディエンスが沸く。横に「なんでやねん」とつっこむ相方はいない。コメディドラマでも同じで、冗談は放たれっぱなし、ボケを拾うものはいない。それどころか、ジョークをジョークで返す「ボケ被せ」の状態が常である。日本と海外で笑いの形式が違うのはまず間違いないだろう。

しかし、笑いのセンスが違うからと海外コメディを楽しむことを諦めることはないと思う。海外の笑いを知ることにメリットはたくさんある。コメディを通して英会話や他文化を学ぶことができ、それらの知識は異文化交流に一役買う。また、実は15億といる英語人口の中でネイティブなのは約25%ほどしからおらず、我々のような英語を第二言語とする人々が大半を占める(参照:The English Club)。彼らの多くもまた、海外ドラマを観て英語力を身につけていく。ということは、我々には世界中に仲間がいるのだ。海外ドラマが共通の話題となり、友人やパートナーのことをもっと知るきっかけになるかもしれない。「楽しみ方」と「大衆が面白いと思う作品の傾向」を学べば、世界のどこにいようとも楽しめるエンターテイメントなのだ。

海外のコメディドラマは総じて「Situational Comedy(シチュエーションコメディ)」、略して「Sitcom(シットコム)」と呼ばれている。作品の題材となるシュチュエーションはさまざまで、学園もの、刑事もの、オフィス、家族、飲み友達、怪物、宇宙、恐竜といろいろある。ユーモアの在り方もさまざまで、ある作品は隙あれば下ネタを挟み、またある作品は時事ネタが満載だったりする。他にも顔芸ばっかり、物議かもしがち、ひょうきん時々シリアス、意味なくミュージカル調、引くほどお下劣、ダーク、前衛的などなど、それぞれが違った "The kind of humour(笑いの種類)" を持つご覧の通り、シットコムは多様なのだ。無限にあるシチュエーションで繰り広げられるコメディだから、人を選ぶ作品もあれば誰もが愛する作品もある。言わずもがな、全てが全て俗にいう"アメリカン"なノリではない。

そう、ここで思い出してほしいのは「海外=アメリカ」ではないということ。コメディドラマはどの国にだってあるし、大衆にウケるジャンルや笑いの種類も違う。それは、同じ英語を話す国であってもだ。例えば、「The Office」のようにイギリスで放映されたものがアメリカの視聴者に合わせてリメイクされることがある。

同じ言語を話す国でも面白いと思うものは十人十色。
だったら、自分と波長が合った作品が必ずあるはず!

■ 英語で海外コメディ作品を観る理由

「海外の作品なら日本語吹き替え・日本語字幕で見ればいいじゃん。」ここまで読んでくれている読者の中でこう思っている方もいるのではないだろうか。

それは断じて違う。

海外コメディ作品を通して英会話や他文化を学ぶのであれば、日本人の感覚に合わせた吹き替えや日本語字幕には頼るべきでないだろう。具体的な理由は以下の通りだ。

① 英語は英語で学ぶのが効果的である
筆者は、ある程度の英語が理解できるようになったら英語で英語を学ぶのが効果的であると思っている。ドラマを見る上で、英文を聞いて一旦日本語に翻訳してから考えるのでは遅い。英語脳のまま観ることが英語力の上達につながると信じている。もちろん、最初から字幕なしでチャレンジすることはない。しかし、できれば英語字幕をつけないで観るのが好ましい。要は、日本語で英語を学ばなければ良いのだ。

② 日本語字幕は必ずしも忠実な翻訳ではない
"Lost in translation" ・・・つまり翻訳の過程で台詞の本来の意味や言葉そのものの雰囲気が失われてしまっていることもある。言語は文化や歴史を反映するものであり、他言語に100%置き換えることはできない(他文化間に同じ概念が存在するとは限らないから)。そのため、観ているシーンの雰囲気を上手く掴むためにもナチュラルな状態でドラマを見るのが好ましいだろう。そうしていくうちに「面白い」と感じることができれば、純に笑いを理解したといえるのではないだろうか。

■ 海外コメディのむずかしいところ

ここで良いニュースと悪いニュースがある・・・。

さて、では悪いニュースから行こうか。最近のコメディは・・・全然親切じゃない!例えば『Seinfeld』、『フルハウス』、『ビッグ・バン・セオリー』・・・海外の笑いを知ろうとしているものにとって、ここら辺の作品は親切だ。定点カメラに役者が写り、寸劇を演じる。彼らがひょうきんな顔でジョークを言えば、録音笑い(Laugh track)が流れる。そう、「面白い場面」では「笑い声」が響くのだ。テレビの笑い声が「面白い場面」を教えてくれる。とても親切じゃないか。

しかし、最近のシットコムで録音笑いが流れるものは少ない。『The Office』、『Community』、『Brooklyn Nine-nine』・・・ここらへんは、何が起きても観客がワハハと笑うことはない。淡々とストーリーが進行し、淡々とコメディが繰り広げられる。あるシーンが「面白い場面」か判断するには、キャラの表情や言動、微妙な間を観察する必要がある。あきらかにおかしい場面ならいいのだが、会話に冗談を挟んで来た時は見分けるのが難しい。さらに、知らない他作品をイジったり、知らない映画のパロディだったり、知らない商品のキャッチフレーズを文字ったり・・・日本で生きていると知る由もないもので笑いを取りに来ることも多々ある。理不尽だ、親切じゃない。あぁ、これでどう海外の笑いを研究しろというのか・・・。

実はこれ・・・簡単に解決できる!
結局は作中の「面白い場面」を誰かに教えて貰えばいいのだ。
いくつか方法がある。

① ネイティブと一緒に観る
ネイティブと一緒に観て、彼らが笑ったときが「面白い場面」だ。ただし、笑いのセンスは人によって違うのであまり「正確」とは言えない。何人かのネイティブと観ればよりよいデータを得ることができるだろう。英語が第二言語、つまり我々のような人たちと一緒に観るのもいいだろう。「理解できない笑い」を分かち合うこともできるし、違った角度の「おもしろ」を知ることもできる。観測者は多いほうがいい。

② インターネットを活用する
わからなければ調べる!それに越したことはない。ジョークの意味などは掲示板などで聞けば説明してくれる人が必ずいる。だが、そもそもジョークがジョークであることを知るにはどうすれば良いのか。ネットを使ってドラマの「面白い場面」を見分けるにはどうすればいいのか。自分の勘に頼るのも良いが、ファンが作った「おもしろ場面集」を観るのが手っ取り早いだろう。例えばYouTubeには「Funniest scenes of 〇〇」や「Best of 〇〇」、「〇〇 being an absolute idiot」などのタイトルで、ファンが面白いと思った場面の切り抜き動画がたくさんある。視聴回数やいいねの数、コメントなどを見ればどれだけの人が共感しているかもチェックできる。

■ 不定期更新『Laugh Tracks』 - 内容と目標

筆者は人生の半分以上を英語圏で過ごしてきた。そして、周りと話を合わせるために複数の人気シットコムを駆け足で網羅した過去がある。話数を重ねるごとに「あ、これボケてるな」とか「なるほど、これが面白いのか」と思えるようにはなった。しかし、それは笑いの「タイミング」を掴んだだけで本当の面白さを理解してないのではないかと今になって思う。そこで、「海外コメディ作品の研究・レポート」という名目で『Laugh Track』を不定期に更新していこうと思う。

『Laugh Track』では、これらについて語ろうと思う。
★ 個人的おすすめコメディ
★ 海外コメディ作品の笑いどころ調査
★ 難解なジョークの解剖・解説

解説と言っても、あくまでも個人的な見解だ。あわよくば、記事を読んでもらった人にもっと海外コメディの面白さを教えてもらいたい。それを踏まえて温かく見守ってもらえれば嬉しい。

さぁ、「ジョークを説明する」というつまらないことをしようじゃないか!

あ、ここ笑うとこ。
Cue the Laugh Track!


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