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1日目@4000日後に借金を完済する男

目が覚めた。
電気はつけっぱなしだった。
昨日の晩飯のゴミも散乱したままだった。

ケータイを見た。やっぱり確かに今日は土曜日で昨日の次の日で、お金が無いことは現実だった。夢ではなかった。

ゴミもそのままに顔だけ洗ってテキトーな服に着替えて蒲田に向かった。向かう時点で決めていた。

調べたところ、30日間は無利子とのこと。
そして収入を証明する書類も要らないとのこと。
もういっそのこと、借りてしまおう。そして、3給料が入ったらに返そう。

今日は土曜だから会社の人に借りることはできないし、東京に友達はいないから借りれないし、親に頼もうとしても振り込みだから今日は受け取れないし。それになによりも迷惑がかかるし。

だから、もう借りてしまおう。
それがいい。無利子なんだから、返せばいいんだ。

蒲田までは徒歩で向かった。

駅前に消費者金融だけ入ってるビルがあることは知っていた。土曜の駅前だから道ゆく人は多い。恥ずかしさはある。

が、それ以上にいま生きるために入らなければ。

ビルのエレベーターを待つ。
やめよう。このビルはやめよう。やっぱり恥ずかしいや。

駅前の細い道を入ったところにあるプロミスの小さい店舗があったな。
そちらに向かう。

自動ドアを、、、開けた。

、、、誰もいなかった。

無人契約機はこちら、という扉が隅にあった。入るしか無さそうなので、扉を開いた。

中は2畳ほどのスペースがあり、ATMのような機械と革張りの椅子があった。

ATMの画面にはお座りください、みたいなメッセージが流れていた。ポリゴンちっくな女性のキャラクターがようこそみたいなポーズで画面に写っている。初代プレステくらいのポリゴン感だった。

案内の通りに椅子に座るとまさにATMのように操作できるディスプレイが手間にあった。ここで色々と個人情報を入力していくようだ。

ここで初めて知ったのだが、お金を借りることを「融資」と呼ぶようだ。なんだが胸がざわついた気がした。

言われるがままに個人情報を入力していき、運転免許証のコピーもこの機械で読み取ってもらった。

最後に希望融資額を入力する画面になった。

なんかあったらイヤだから余裕をもって10万にしよう。どうせ無利子なわけだし。10万はさすがに全部使わないけど。余裕をもって10万借りておこう。

全ての項目の入力が完了したようで、目の前の画面には、しばらくお待ち下さいのメッセージとお花畑の映像が流れ出した。これから融資できるかの審査が始まるのだろう。

15分ほど待ったか。

なんだか、この空間は特殊だった。ひどく閉鎖的。細い道を入ったところとはいえ、蒲田駅前なので外は騒がしいのだが、この空間にはまるで音が無いようだった。

それと、何かいけないことをしている自分を解放してあげたいという思いもあった。

だから、ものすごく落ち着かなかった。

早くこの空間から脱出したかった。


ディスプレイが唐突に切り替わったのと同時に機械から生身の人間の声で話しかけてきた。
どうやら本人確認は口頭でおこなうようだ。どこかのオペレーターと繋がっているようだ。

よく見ると、機械の目線の高さにカメラも付いていた。こちらは丸見えだったようだ。もしかしたら、この待ってる間の態度や所作も審査結果に反映されるのかもしれないと思った。本気で思った。

オペレーターとの本人確認は終わり、再度待たさせることになった。

またお花菜畑になった。

今度は短かった。

オペレーターは融資ができることになったと言った。
そのあと、その機械から契約書だったりがプリントアウトされてきたが、嬉しさで目は通さなかった。

生きながらえた。そう思った。

そして、最後に機械からキャッシュカードさながらのカードが出てきた。このカードを使ってATMの操作の要領で好きなときにコンビニなどでも借りれるのだという。

手続きが完了し、椅子から立ち上がりこの狭い空間を出た。
この無人契約機のスペースのパーテーションを挟んだ隣には借り入れができるATMがあったので、すぐカードを差し込んだ。

枠は10万だが、とりあえず5万で足りるだろうと、5万を借り入れた。


はじめて消費者金融からお金を借りた。

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物語ですが、実体験をもとにしたストーリーになるため生々しいかもしれないです。

とある男が借金をしてから完済するまでを追った物語です。1日分ずつ更新していきます。

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