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400字ショートショート「泡の一生」

前書き

ずっと行きたかった喫茶店で念願のゼリーポンチを食べることができました。
写真をあまり撮っていないことが唯一の心残り。短いお話にして記憶に留めておこうと思います。



泡の一生



ソーダの中に住んでいる。生まれた時に一緒だった友達はもういない。みんなどこかへ旅立ってしまった。

「お待たせしました」
「ありがとうございます」
初めてあなたを見たのは青い照明の下。私は銀のお皿の、そのまた上に置かれたグラスにいた。見回せば赤や緑、黄色や青。私がなるべく消えてしまわないように色とりどりのゼリーたちが支えてくれる。
「一度は来たかったんだ」
そう嬉しそうに口元をほころばせるあなた。
「綺麗で食べるのもったいないな」
ゼリーたちが反射して、まるで自分まで鮮やかなドレスをまとってる気分。カメラを向けられてすっかり照れてしまった。
やがて頭上のフルーツたちは食べられて、私は自分を守る術もなくて。でもずっと飛びたかったの。くちびるに触れて、一目惚れしたあなたに溶ける。
しゅわしゅわ、二度と戻れない旅。私はふと、昔聞いた「海」という場所を思い出した。ソーダに似てるらしいそこに、一度は行ってみたかったな。



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