彼の涙
「れーいちゃん!着いたよ!よーーーこそ我が家へ!」
「ねぇ・・、なんで家なの?外でご飯食べるんじゃないの?」
「んなもん!出前すればいいでしょーー!ねー?さ!上がって〜〜」
「・・あきとさん、私、帰る」
「・・・・・」
「ごめんね。今日のあきとさん、なんか嫌だ。」
思わず、泣いてしまって。
ただ、あきとさんが酔っ払って、いい気分になった頃に私が都合よく配置させられてる気がして。
ーーーなんでなの、あきとさん。
そう思っていると、いきなりキスをされた。
押し付けるように、強引で。
入ってこようとする、あきとさんの舌先を歯を食いしばって拒む。
「・・・やめてっ!!」
あきとさんを突き放し、睨みつける。
「・・・そんな目で見ないでよ。頼むから、そんな目で今は俺を見ないでよ。」
そう言って彼は、膝から崩れ落ちるように、座り込んだ。
「私は、都合のいい女?酔っ払って、気が舞い上がって、私と会って、やれたらいいとでも思ってたの?あきとさんって、やっぱりそうなの?」
泣きながら、声を絞り出すように言った。
「・・・ちがう。ちがうよ、れいちゃん。ちがうんだよ・・・」
そう言って、彼は言葉を詰まらせて、膝に顔をうずめて泣いた。
「泣きたいのは、私だよ。」
「・・・・」
彼はそれ以上何も言わなかった。
私も聞かなかった。問い詰めなかった。
「今日は、帰るね。」
そう言って、家を出た。
追いかけても来なかったし、
その日に連絡が来ることもなかった。
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