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年金はどれくらい頼りになる?【具体的な数字で解説します】

『これから少子高齢化が進む中で、年金を頼りにしていいのでしょうか?』『年金って払い損って聞いたことあるけど実際どうなんですか?』

こんな質問を何度もいただいてきました。

将来のことは誰にもわかりませんが現時点での情報を元にシミュレーションしてみました。参考にしていただけたらと思います。

結論から言うと、20年~30年先やそれ以上先に年金が無くなるとは思えませんし優良な金融商品だと思います。 併せて年金支給額や年金を増やす方法も載せておきますので参考にしてください。


早速解説していきます。


1.年金は貰えるの?

「年金は貰えないのではないか?」
「年金なんてアテにならない」

なんていうご意見は今までも何度も聞いてきました。

それもそのはず日本は超高齢化社会に突入し少子高齢化が高速で進んでいます。雑誌やメディアでも暗いニュースばかりなので、誰もが心配になってしまうのは当然です。

年金についてですが年金額に変動はあるものの、30年後に年金が全く貰えないということは考え難いと個人的には思っています。

なぜなら、30年以上先でも働いている人が存在するからですね。

年金が貰えないと思って将来の資金計画を立てることは良いことですが、
毎月毎月厚生年金・国民年金を納めているのに全く貰えないということは考え難いと思います。

しかし年金額は減ってきているので(現状も)どれくらいマイナスしていくのかを予測してみることは大切ですので解説していきます。

<年金額の将来予測をする>

ここで参考になるのが2019年年金財政検証の資料です。

5年に1度行われる年金の成績を見て検証した結果(年金財政検証)が2019年に発表されました。

ケースⅠ~ケースⅥの中で経済成長率を考えるとケースⅣくらいまで落ち込む可能性はあるかと考えられます。

なぜなら日本の経済成長率は直近十数年の平均がケースⅣくらいですし、
新型ウィルスの影響や少子化問題もあるので将来的に大きな伸びは考え難いと思います。

よって受け取れるであろう年金額から2~3割ほどカットした年金で計算をしておいたほうが現実的でしょう。

その上で将来の生活費との差額を今のうちから貯蓄しておくことをオススメします。

参照:厚生労働省2019年年金財政検証結果のポイント


<年金は損??計算してみよう>

『毎月、厚生年金や国民年金を払ってるけど、受け取れる年金額が減るなら払い損じゃないの??』
『自分たちで貯金してた方が良いんじゃないの?』

こんな意見も当然出てきます。
しかし実際に計算してみると答えが見てきますので早速やってみましょう!

人によっては年金を受け取り始めてすぐに亡くなってしまうというケースもありますので全ての方がたくさん受け取れるものではありませんが、
年金は払った分以上に受け取れる可能性は高いと思います。

ここでは一旦平均寿命を使って解説していきます。

平均寿命(2020年現在)

・男性 81.64歳 世界2位
・女性 87.74歳 世界1位

<年金シミュレーション>:
平均年収500万円の方が65歳から平均寿命まで年金を受け取った場合

<男性16年間> 65歳〜81歳まで受け取った場合
国民年金 6.5万円 + 厚生年金9.3万円 =15.8万円
15.8万円 × 12ヶ月 × 16年間 = 3033万円

<女性22年間> 65歳〜87歳まで受け取った場合
国民年金 6.5万円 + 厚生年金9.3万円 =15.8万円
15.8万円 × 12ヶ月 × 22年間 = 4171万円

厚生年金+国民年金の支払う保険料は約1800万円(40年間)になりますので、男性で約1.7倍・女性で約2.3倍にもなります。

65歳から10年くらい受け取ると元が取れるという計算になるので、銀行金利が0.01%のこの時代にこれだけ優良な金融商品もなかなかないと思います。

先ほど将来的には年金が3割ほどカットされるかもしれないとお伝えしましたが、仮にそうなった場合でも男性で1.17倍・女性で1.62倍となっています。

しかし、男性の1.17倍くらいだと多くもらえていても、得している気がしないなぁと感じますよね。


その気持ちとてもわかります!(笑)


今回は平均寿命で計算をしましたが、実際は平均寿命より長生きする方のほうが多いケースがあります。

令和2年に厚生労働省が生命表を発表しており、男性の81歳の平均余命は8.82年あります。女性の87歳の平均余命は7.53年ありますので、仮に年金が3割カットされたとしても、その分年金が多く受け取れるということになります。
※平均余命とはその年齢の方があと何年生存しているかの統計データです。

人生100年時代と言われているわけですから、少しでも元気に長生きして現役時代に頑張った分たくさん年金を受けっていきましょう。


2.年金支給額を増やす方法

年金が払い損にならないってことはわかったけど、もう少し増やす方法ってないの?実際何歳まで生きれるかもわからないし...。

そんな声も聞こえてきそうです。


年金には年金を受け取る時期を遅らせることで増額してくれる繰下げ受給というシステムがあります。この繰下げ受給をすることで年金支給額を増やすことができるので解説していきます。さらにその増額率は一生変わることがありません!

詳しく解説していきますね。


<繰り下げ受給>

基本的に年金は65歳から受け取ることになっているのですが、ひと月でも送らせることで年金を多く受け取る制度があります。それが年金の繰り下げ受給です。

増額率 =
65歳に達した月から繰り下げ申し出月の前月までの月数 × 0.7%

ひと月、年金を遅らせるごとに0.7%増額率が増えて行くということになりますので、最大70歳までの年金の受け取りを遅らせることで42%も増額率が増えることになります。
※2022年4月より75歳受け取りも可能となります。(増額率84%)

<繰下げ請求と増額率>
繰下げ請求時期 増額率

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繰下げ受給とは逆の繰上げ受給もあります。


<繰上げ受給>

年金は65歳より早く受け取ることができますが(最大60歳から)その分、減額率を掛けた受け取りとなります。

減額率 =  繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数 × 0.5%

ひと月、年金を早く受け取るごとに0.5%減額率が増えて行くということになりますので、最大60歳までの年金の受け取りを早くすることで42%減額率が増えることになります。

<繰上げ請求と減額率>
繰上げ請求時期 減額率

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日本年金機構「年金の繰上げ・繰下げ受給」

定年を短くして話題になった企業もありましたが、多くの企業が65歳に設定したり、再雇用で70歳まで働けるようになっています。今後もそのような流れになるでしょう。

早くリタイヤしたいという気持ちもあるかもしれませんが、70歳まで仕事をして繰下げ受給にすることで将来のライフプランは大きな差が出ます。
簡単なシミュレーションもしてみましょう。

<シミュレーション>

・現役時平均年収500万円
・男性
・平均寿命まで生存(81歳)
・65歳から70歳の年収は200万円

①65歳から年金を受給した場合

15.8万円(国民年金+厚生年金) × 12ヶ月 × (81歳 ー 65歳) = 3033万円・・・A

②70歳から年金を繰下げ受給した場合(70歳まで勤務)

65歳~70歳までの収入 200万円 × 5年間 = 1000万円
15.8万円 × 142% × 12ヶ月 × (81歳 ー 70歳) = 2956万円
1000万円 + 2956万円 = 3956万円・・・B
A ー B = 923万円

平均寿命ですでにこれだけの差が出ていますので、さらに長生きをすることで年金収入に大きな差が生まれることがわかったかと思います。

③60歳から年金を繰上げ受給した場合(60歳まで勤務)

15.8万円 × 70% × 12ヶ月 ×(81歳 ー 60歳) = 2787万円・・・C
A ー C = 246万円・・・①と③の差額
B ー C = 1169万円・・・②と③の差額

年金を60歳から受け取るか70歳から受け取るかで最大1000万円以上の差が出ました。いろいろなご事情時もありますが、将来が不安な方はできる限り70歳まで働いて繰下げ受給というシステムを使い年金を受け取っていただくことをおすすめします。


3.年金を増やす5つの方法

年金のことはわかってきたけど、少しでも多く将来のためにお金を増やしていきたいと思っています。厚生年金や国民年金以外のものはどんなものがあるのでしょうか?

このようなご質問もよく聞かれます。


最近では資産形成をされる方がとても増えてきました。初心者の方向けに始めやすい方法を5つご紹介していきますので、すぐにでもできるものがあればチャレンジしていきましょう。

・つみたてNISA
・iDeCo
・生命保険
・付加年金
・国民年金基金

それでは一つずつ解説していきます。


<つみたてNISA>

つみたてNISAの対象商品(投資信託)は手数料が低水準と初心者が始めやすい資産形成です。

年間最大40万円が上限としており、運用して増えた分の運用益は非課税というメリットがあります。(20年間まで)

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参照:金融庁「つみたてNISAの概要」

2021年6月末時点で証券会社のNISA口座数は1023万口座であり、そのうちの一般NISAは761万口座・つみたてNISA口座は262万口座でつみたてNISA口座は2020年末の172万口座から52%も増加しており、これからもどんどん投資を始めていく人が増えていくことが予想されます。

参照:日本証券業協会「NISA口座開設・利用状況調査結果」
(2021年6月30日現在)について


<iDeCo>

つみたてNISAと同様に自分で運用先を指定し資産形成をする制度です。

iDeCoは税制のメリットがあるため始められる方も増えております。

・掛金が全額所得控除
・運用益も非課税
・受け取り時も控除される

一つずつ解説していきます。

<掛金が全額所得控除>

掛金全額が所得控除の対象になります。
例えば毎月の掛金が1万円の場合
所得税10%・住民税10%とすると年間2.4万円もの税金が軽減されることになります。

<運用益も非課税>

つみたてNISAと同様に通常金融商品を運用すると増えた分の運用益に20.315%の厳選分離課税が課税されますが、iDeCoなら非課税で再投資されます。

<受け取り時も控除される>

年金として受け取った場合「公的年金控除」、一時金として受け取った場合「退職所得控除」の対象となります。

60歳までは原則引き出しができないという制度ではありますが、それは厚生年金や国民年金と同じことですので老後の年金を増やし、さらに税制面も優遇されているiDeCoもオススメです。

詳しい内容はiDeCo公式サイトにわかりやすく掲載されていますのでご確認ください。

参照:iDeCo公式サイト


<生命保険>

保険で貯蓄をされている方も多いかと思います。

貯蓄性の保険にも大きく分けて、日本円建て・米ドルや豪ドル建て・投資信託の変額保険があり、今から始めるのであれば個人的には変額保険をおすすめします。


対象者 5歳~60歳 ※保険会社によって異なります。
保険料 5000円〜上限なし ※死亡保障に限度はあります。
給付の種類 一括受け取り・終身年金型・確定年金型 ※保険会社によって異なります。
税制の優遇 生命保険料控除の対象。運用益は一時所得として課税額が抑えられます。
その他 80歳まで運用ができるので長期で運用が可能。死亡保障が付いている。
変額保険は保険会社にもよりますが、大体5000円から始められ保険料の上限はありません。

80歳まで運用できるケースが多いため、つみたてNISAやiDeCoより長く運用することができます。(終身で運用できる保険もあります)

口座開設の手間もなく、始めやすいのが特徴ですね。

しかし死亡保障が付いているため、毎月の保険料からいくらか死亡保障に回っています。もし加入を検討されている方は担当の方にしっかりと確認しましょう。

死亡保障が必要ない方は変額個人年金に加入されると良いかと思います。

非課税ではありませんが、解約した時に受け取るお金(解約返戻金)は一時所得として扱われるため、投資信託のような金融商品の課税額より安くなります。

<一時所得の計算方法>
解約返戻金 ー 払込保険料 ー 50万円 × 1/2

投資信託などの金融商品では増えた分のお金(運用益)に20.315%を課税がされますが、保険の場合は増えた分のお金(解約返戻金ー払込保険料)から50万円を引いて更にその半分に対して20.315%の税率を掛けるため、とても優遇されています。

<解約返戻金 500万円・払込保険料 350万円のケース>
投資信託の場合 (500万円 ー 350万円)× 20.315% 
= 30万4725円
変額保険の場合 (500万円 ー 350万円 ー 50万円)× 1/2 × 20.315% = 10万1575円

約20万円以上優遇!

保険料を支払っている間は生命保険料控除も対象となり、20年30年と長い間契約するものなので必要範囲内で始められることをおすすめします。

生命保険料控除については国税庁「生命保険料控除」を参考にしてください。

<付加年金>

加入者は第一号被保険者(自営業・フリーランスなど)と限定的になりますが、少しでも将来の年金額を増やすために始めてみましょう。

<40年付加保険料を納付した場合>
400円 × 12ヶ月 × 40年 = 19万2000円 ・・・・付加保険料
200円 × 12ヶ月 × 40年 = 9万6000円・・・・・付加年金額

ということは2年以上受け取ると支払った付加保険料以上の年金が受け取れますので、ぜひ始めてみましょう。

参照:日本年金機構「付加保険料の納付のご案内」


<国民年金基金>

老齢年金に上乗せする第一号被保険者のための公的な年金制度です。

第一号被保険者(自営業・フリーランスなど)は厚生年金がありませんので年金額の差を解消するために創設されました。

国民年金基金を利用することで、会社員のように国民年金と2階建ての年金を作ることが可能になるのです。

※課税所得とは、収入から必要経費や基礎控除などを引いた所得税の課税対象となる所得。

詳しくは国民年金基金のサイトをご参照ください

参照:国民年金基金「給付の種類」


最後に


日本の年金制度は少子高齢化の影響によりぐずれかけて(年金額減っている)いるのが現状。

しかしそのような現状を受け入れながら国としても会社員・自営業者・専業主婦(夫)の方に向け優遇してくれる制度をたくさん作っています。
今回載せた項目は基本的な部分ですが、将来のためにお金を貯めたり運用する方法はいくつもありますので、ご自身にあった方法で将来ゆとりある生活を送れるように対策を打っていきましょう。

もし相談などありましたらご連絡ください。

ありがとうございました。


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