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【vol.001】 まえがき

父親はしばらく考え込んだ後で、私の人生を大きく左右する言葉をかけてきました。


「お前が死んでも、それは仕方ない」


焼き鳥屋の座敷で、父親に真顔でそう言われた瞬間、私の後頭部がバンっと爆発したのを感じました。

ただでさえ精神的に参っている時だからこそ、最後の最後には寄り添ってくれるはずだと信じていた親から、私の「死」を是認する発言をされたことで、精神的に頼れる存在がなくなってしまいました。もうこの世の中の誰にも頼れない。真っ暗闇の大海原に、独り放り出された感覚になりました。


これが私の鬱のスイッチが入った瞬間でした。


その直後のことはなんとなく覚えています。後頭部は熱を帯びていて、耳鳴りがして、それ以降の会話は耳に入ってきませんでした。いや、耳には入ってきているんだろうけど、頭の中まで入らない。聞いていることと、頭で考えていることと、心で感じていることが、まるでもう繋がらない。




そこから、自分がこの世に存在する価値や生きる意味を見失いました。悔しくて悲しくて昼間からベッドの中で噎び泣いたかと思えば、でもなんとかして生きたいと争って怒鳴り散らす時もあり。そうした感情と思考の制御ができない身で、得体の知れない何かとの戦いが始まりました。


それは2011年11月のことでした。



今ではもうその戦いも終わり、その得体の知れなかった何かが、何であるのかがわかりました。


その戦いの前半は、とにかく感情を落ち着かせることに苦労しました。自我に支配されたものの見方しかできず、「なんでオレが!」という被害妄想が激しかったように思います。だから安易に人を他責するか、自暴自棄に自責するかで、建設的な考え方ができず苦労しました。


その感情が落ち着いてきた後半は、なぜ自分が鬱になったのかを考える内観の旅でした。心理学や哲学を学んだり人と対話したりする中で、自分の内側に心の地図が存在することに気づいてから、先が拓けてきたように感じました。感情的になっていた前半では見つけることができなかったその地図を手に、学んだことや自分で内観したことを加筆しながら、地図を作っていきました。


その旅の終わりになって、地図全体を見渡すことができた時に、鬱の本質が理解でき、もう二度と鬱にならないための確からしい対策が取れるようになったように思います。



そしてこれは私の経験から言えることですが、その旅を一人で歩み切るのは困難で、現実的ではないと考えています。周囲の人の適切な助けを借りながら、また先人が積み上げてくれた学問も頼りにしながら、一歩一歩、ゆっくりと、でも着実なステップを経てゴールに向かうことが大切だと思います。それを無理して一人で進もうとして道を誤ると、自立ではなく孤立に向かい、心が折れてしまうかもしれません。


だから、やはり伴走者と共に歩むことがベターだと思うんですが、できることであればその伴走者は、心の地図がある程度見渡せる人がいい。そしてもっと欲を言えば、鬱を抜けようとしているその人が地図上のどのあたりに位置しているのかを測るGPSも扱える人の方が、鬱抜けのゴールが見つけやすいように思います。


実は私の妻も我々の結婚前に鬱になり、そこから二人三脚で復活してきた経緯があります。その時はとにかく対話して、彼女の内面を観察し、彼女の現在位置を探りました。そして心理学や哲学の他に脳科学も一緒に学び、復活するまでの全体地図をお互いが見える範囲で共有しながら、彼女が今必要としている根本が何なのかを二人して探求していきました。それは決してラクではなく、精神的、体力的にとても削られる営みでしたが、自分が一足先に鬱になってから復活するまでの旅路を歩いていたからこそ見えてくる地図とGPSが、彼女の復活にもとても役立った経験があります。



しかし私が持っているGPSは今のところ私にしか使えません。人の内面を窺い知る時には、41年かけて積み上げてきた自分と照らし合わせながら推測している側面があり、それまでを簡単に共有できるものではないからです。だから、私はNPO法人他力本願研究所を立ち上げ、自分の位置情報を知りたい方に対してメールで相談を受けたり、電話や対面でのカウンセリングを行ったりするなど、私のGPSを使って個別に対応をしています。

ちなみに妻も同等スペックのGPSを持っています。鬱になり、そこから抜けきった人ならば、それ相応のGPS機能が身につくようになるのかもしれません。



そのGPSが属人的である一方で、地図は言語化することである程度は人と共有できると考えています。私が通ってきた道を抽象化、一般化し、それが多くの悩む人に共通する道だと認識してもらえる精度になった時に、まだ鬱を抜けていない人であっても、その地図さえあればその先のゴールが一筋の光で照らされるようになるかもしれない、そう考えています。



当時の私は、とにかく鬱抜けのゴールが見えないことが不安でした


「風邪を引いたら消化の良いものを食べて睡眠をしっかり取れば快方に向かいやすい」

我々は風邪に対してこれくらいのことを経験的に理解していますが、「心の風邪」と言われる鬱に対しては、このようなロードマップを知らないことがほとんどです。当時の私がそれを知っていれば、もう少し気が楽になっていただろうし、回復までの時間も少なく済んだと思うのです。


だから、その同じような悩みを今持っている人に、その先のゴールがうっすらとでも見えるような心の地図を、このnoteのマガジンに描いていきたいと思います。


一人でも多くの人が少しでもラクになれるよう願って。


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前川進介
tariki.labo@gmail.com
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あざす!抽象度上げて人生楽しみましょう!
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自身が鬱になり、なんとか復活した経験から、自己肯定感と論理的思考力さえ高ければ鬱になりにくく、そして社会でも活躍できる人材になるという仮説を立てました。2018年に設立したNPO法人他力本願研究所では、その仮説をベースに人材育成に取り組んでいます。趣味:テニス、飲酒、考えること。