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スマトラ島の温泉をめぐる旅 12日目 サモシール島の温泉とパングルンアンの絶景温泉

1.サモシール島観光

この島にはトバのバタック族の伝統的な家屋が保存されている。

明らかに前からそこにあった集落だろうというような、大きな階段状の石や、昔の人たちが会議をしたといわれる石のテーブルと周りを囲む石の椅子が保存されている。

昔の打ち合わせ場所

家はマカッサル島のトラジャにあるトンコナンのような、反り返った屋根をした高床式の住居が、やはりトンコナンと同じように直線上に並ぶように立っている。
彼らの先祖が大きな船に乗って海を越えてやってきた証拠と言われている。巨船を作る船大工が、船のような家を建てたというのだ。

実際トラジャもバタックも、言語は台湾から東南アジア島嶼部、遠くはマダカスカルにまで広がっているオーストロネシア語族。世界で最も広範囲に広がっている語族と言われ、彼らが海洋を渡って散らばっていったからだ。

ところが、同じバタック族でも、カロ族の家の屋根は反っていない。船を思わせるのは、壁が垂直ではなく船の腹のように膨らんでいるところだけだ。屋根を反らせるバタック人はトバ族だけのようなのだ。隣りあっているのに言葉も通じないらしい。
こういうのはとても面白い。
移住のタイミングが違うのだろうか。

トバの人たちは、無理に伝統的な家に住んでいるのではなく、普通の家でも反った屋根の伝統的な家のつくりになっている。違いは屋根の素材で、普通の家はとたん屋根でサビサビになっている。

こういう集落がいくつもある

2.パングルンアンの温泉

パングルンアンはサモシール島側の地名で、温泉が集まる場所はパングルンアンから橋を渡り、湖に沿って10キロほど西へ行く。
なので正確にはパングルンアンの温泉ではない。

そこは草木が一切生えない岩だらけの場所で、対岸の島からもはっきり分かるほどだ。いかにも温泉がありそうな景色に見える。

(1) Air panas Rianiate (リアニアテ温泉)

サモシール島に湧く唯一の温泉。
岩だらけの地獄景観の斜面のふもとに、ボロボロのコンクリート造りの建物が見える。
横には簡易なつくりの小屋があり、ちょっとした売店になっている。

温泉は無料で、代わりに帰りにコーヒーを頂いた。5000ルピア。

ここは裏山に湧き出ている温泉を10メートルほど引っ張ってきている、極めてフレッシュな温泉で、強酸性泉+硫黄泉だろう。

発掘された石棺のよう

ここはかけ湯専用に見えたが正直に言おう、30秒湯船に浸かってしまった。
基本は売店で借りる手桶を使い、身体にかけるのだろう。
とても良いお湯だった。白い湯の花がたくさん漂っている。

源泉の写真を載せておく。硫黄成分が付着し黄色に変色している。

右の岩影の下が大きな窪みになっていてお湯がコンコンと湧いている

奥塩原新湯(あらゆ)にある共同浴場”寺の湯“と立地と泉質が似ている。岩肌の崖下にある酸性泉。サモシールはちょっとボロ過ぎるけど、ポテンシャルは負けてない。

(2) Air panas Usaha Kita (我々のビジネス温泉)

食堂に併設された温泉で、温泉自体は無料だが何か注文するのがマナーだ。
ここは驚くべきことに、個室風呂が3つある。

しかも泉質は強酸性で温度が高い。45度あるかないかぐらい、まるで草津温泉に入っているかのようだ。
賛同を得られるか分からないが、わたしは地蔵の湯に似ていると感じた。

草津といえば時間湯でしょ、と言うことで、3分じっと浸かった。
ヘビーなお湯なので、身体がだるい。
熱いのが苦手な人は、大きなプールの方に入れば少し温度は低くなっている。

プールの方の写真

(3) Air panas Family Raya (偉大なる家族温泉)

ここも個室風呂があり無料で入れる。ここは入らず泉質を確かめるだけにした。
強い温泉に立て続けに入って湯疲れしてしまった。
我々のビジネス温泉と同じ源泉を使っているようだ。山から200メートルくらい引いてきている。
強酸性温泉だ。
ここの個室風呂は深い。プール風呂は女性用しかない。男性は個室のみ。

(4) Air panas Rico (リチョ温泉)

絶景の極みと言える温泉だ。
眼下にトバ湖をのぞむ滝つぼのような野趣味あふれる露天風呂。

源泉側.、上流から温泉が流れて来る
トバ湖側
お湯に浸かった場合の目線
雨でどんよりしてしまった。残念

わたしはすっかり気にいってしまい、ここに泊まることにした。思う存分入りたかったのだ。
おばちゃんも驚いて、本当に泊まりたいの?と2度聞きしてきたくらいの、温泉マニア専用宿だろう。
はっきり言って山小屋かと思うような簡素な部屋で20万ルピアはないだろうとは思った。これでもちょっとまけてもらっている。

この温泉の凄さをもう少し説明させてもらいたい。

立地が完璧

ここは、崖状になった地獄景観の真っ只中にある。岩だらけの中にへばり付くように建物があり、風に運ばれ硫化水素の香りが漂っている。
日本にも、〇〇地獄という名称が付いた場所は数多くあるものの、あくまでも見学する場所であって温泉は別の場所にあることが多い。

お湯が新鮮

山の斜面の1番上にあるので、まさに温泉が湧き出て流れてくる場所に湯船を用意してくれている。
硫化水素は猛毒なので、日本の多くの硫化水素型硫黄泉は、遠くから引湯していることが多い。
ここは、秋田の川原毛大湯滝のように強酸性の温泉が滝となって流れ落ちる場所に入る。

景色が特別

ただの景色ではない。トバ湖の景色を眼下に楽しめる。
わたしならば、滝つぼを深くし、かつ流れ落ちる湖側の浴槽の縁を一律にする。トバ湖と温泉の水面が一体化するインフィニティ温泉になる。
今は壁に低い場所を意図的に作って、お湯があまり溜まらないようにしている。

おばちゃんは商売っ気がないので、結婚式に出ると言って温泉と宿に鍵をかけ出かけてしまった。

閉め出されたわたしは、仕方なくトバ湖を望むカフェに来た。トバ族の若者たちがカラオケ大会中だ。上手なのでライブ演奏付きだと思って楽しんでいる。
夕立になり,雨に煙るトバ湖もまた良い。

Bona Panatapan Cafe

夜は雨が降り続いているので、外に食べに行くのはやめ、宿の食堂で頂いた。
山小屋にいると思えば、何でも美味しく感じる。袋麺に野菜と玉子が入っているだけで嬉しくなる。

風が強く寒いので雨具で防寒

夕方から続々と客がやってくるようになった。やはりこの温泉の良さが分かるようだ。ここが1番温泉の出るところに近いんでしょと聞いてくる若者グループもいた。
ただ、彼らの目当ては絶景風呂ではなく、深いプールの方。

明日の朝風呂が今から楽しみだ。

本日のルート

温泉のまわりと宿

宿は4ヶ所あるが、ボロい部屋も含めどこも強気。25万から40万ルピア






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