映画の上半期ベストテンを鑑賞直後ストーリーズで振り返る。
新作映画を見て、インスタグラムのストーリーズに感想をまとめる。
というのを、かれこれ4年くらいやってます。映画鑑賞直後の電車やカフェの中で、iPhoneと睨めっこをしながら感想をまとめています。やたらと情報量が多く読みにくい感想ストーリー。「画餅」の宣伝に使っていただいたので、知っている方もいるかと思います。
最初は「映画化のポスター+一言」程度だったのですが、徐々に徐々に言葉が増えてって、豊島園のドトールの片隅で「なんで俺はこんなことを……」と嘆くくらいまでに時間をかけるようになってきました。
なぜ、ストーリーズに映画の感想をまとめるのか?
鑑賞直後の熱が、鑑賞直後の熱として伝わる
これに尽きます。ツイッターは、投稿を削除しない限り一生感想が残ります。まだ2館でしかやってないときにつぶやいた「カメ止め最高。爆笑に次ぐ爆笑だった」という感想が、「カメラを止めるな!」が爆発的にヒットして全国のシネコンで上映され、金曜ロードショーで三谷ファミリー的にメンバーが大騒ぎして、ブックオフの棚の一部分が真っ黄色になり、フランスリメイクの「キャメラを止めるな!」が公開される今の今まで、残っているんです。もうそんな感想じゃないかもしれないのに。
しかし、
ストーリーズは24時間で消える
最高です。24時間で消えるのももちろんあるんですが、「24時間で消える」という前提があるのが何よりありがたいです。「※鑑賞直後の一番テンションが上がっている状態での感想です」という注釈なしで映画の感想を伝えられるんです。
あとですね、140字以内で「一週間経っても恥ずかしくない」かつ「誰かに見に行きたいと思わせる」そんな文章を書くなんて無理な話じゃないですか。他人の映画感想ツイートを見て愕然とします。テーマがどう、カタルシスがこう、あの作品へのオマージュが云々……っていうのを語れるほど自分は映画を観てませんし、そんなにスッと記憶の引き出しを開けることなんてできないです。映画が始まってすぐ出てきた女優さんの名前を思い出せずに、映画を見終えたことがあります。富田靖子さんでした。とにかく文章が上手くないので、長くて面白みに欠けて、やたらと「!』が多い、ともすれば「うざい」ツイートになってしまうのです。
しかし、
ストーリーズは色、フォント、字の大きさ、横書き縦書き、文字数、その全てが自由自在
鑑賞直後の熱を視覚として伝えられるんです。感想ツイートがコラム記事なら、感想ストーリーはスポーツ新聞に近いような気がします。コンビニの新聞コーナーを通るときに「また大谷が打ったんだ」と思うように、秒速でめくられるストーリーの中で「あ、あれ面白いんだ」と思われたい。そう思って、ストーリーに感想をまとめるようになりました。
前置きが長くなってすみません。
上半期が終わるということで現時点での映画ベストテンを、投稿したストーリーを見ながら紹介していきたいと思います。ストーリー内の文章はあくまで鑑賞直後のもので、書き足してる部分でも映画の分析・解説は一切してないです。観て思ったこと、思い出したことをだらだら書いてます。
第10位「死刑にいたる病」
バラエティ番組で照れ笑いしてい阿部サダヲさんわかりますかね? 内股気味で「へへへ」って感じで笑う番宣の阿部サダヲさんの感じ。一方で、シアターコクーンとか本多劇場で観る阿部サダヲさんいるじゃないですか。もう奇声あげて大騒ぎして皆川猿時さんとかブン殴っている……この二人の阿部サダヲが両方スクリーンにいたんです!「マルモのおきて」の阿部サダヲと、松尾スズキに「死体写真」という芸名をつけられかけた頃の阿部サダヲがどっちも見れるんです。あと岡田健史くんの父親の異様な佇まい。「はしゃぐな、法事だぞ」っていう名台詞も飛び出しましたし。
第9位「劇場版おうちでキャノンボール2020」
新宿K’s cinema最終日最終回に滑り込んで鑑賞しました。ナンパもののAV企画の劇場版というだけでも十分異例なんですが、今回はさらに異例。コロナ禍仕様で非接触のナンパレース。ZOOMでやりとりをし、ナンパもマッチングアプリで行い、ホテルで会っても1.8メートル以内に近づかない。こんなの気にならないわけなくて観に行ったんですけど……最初の数分で後悔しました。つまらなすぎる。おじさんがZOOMでエロい言葉しりとりをしてゲラゲラ笑ってるだけなんです。あー最悪だ。と、あんなに全員嫌いになったのに、鑑賞後にはそのおじさんたち全員を大好きになっているんです。そんな映画です。
第8位「さがす」
地元の図書館に、「逮捕されるまで 空白の2年7ヶ月の記録」という実際の事件の犯人が書いた本があったんです。それを母親が借りてきて「よかったら読んで」と渡してきて。中学生の僕はその手記にとんでもない衝撃を受けたんです。「さがす」で連続殺人犯を演じた清水尋也が、まさにその犯人で。逃走経路とか潜伏場所もなんとなく似てて、めちゃくちゃ怖かったです。「胸糞悪い木更津キャッツアイ」というのは全体の凝った構成を言ってます。
あとこの間、大阪に行く機会がありまして。一泊して昼過ぎの新幹線で東京に戻らなくてはいけなかったんで、早起きして3時間くらい大阪の街を散歩しました。道頓堀から、なんばに出て、通天閣を過ぎて……そのあたりから一気に景色が変わるんです。急に誰もいない色街に迷い込んで、怖くなって慌てて出たら、でっっっかいスーパー玉出があって。そこがこの映画の舞台でした。アマプラで観れます。
第7位「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」
オープニングしかりクライマックスしかり、これは特撮映画です。リトル円谷英二です。前半は去年の伊藤万理華よろしく夏休みにみんなで特撮映画を作るパートで、後半はゴジラやウルトラマンになるんです。しかも「夢をかなえてドラえもん」に乗せて、特撮の手法の紹介までしてくれるんです。あといつもののび太くんがエヴァにおけるシンジくんみたいな役割を負わされてるんですが、今回はスネ夫なんです。塞ぎ込んだスネ夫に喝を入れるのが、式波・アスカ・ラングレーことしずかちゃんです。
ちなみに「○○○」は独裁者で、「敵に向けた弾は自らに返ってくる」は福田繁雄さんの「VICTORY 1945」というポスターです。
第6位「ちょっと思い出しただけ」
閉まってる水族館に忍び込む映画がもっと増えないかなーって思いました。しながわ水族館だと鏡張りゾーンで写真を撮りますよね。サンシャインだとペンギン越しに夜景を見ながら寝ますよね。鴨川シーワールドはほぼ外なんであんまり上がりませんけど。海遊館だとエスカレーター止まってるから登るのに疲れそうですけど。
まぁ構成がずるいですよ。「きれいすぎる」みたいな感想もあると思うんですけど、「そりゃ美化されるよ記憶なんだから」って映画ですもんね。過去に行くほど思い出補正も濃くなっていって、戻れば戻るほど純度が高くていい思い出に見えて……だから多分、絶対水族館では怒られてると思うんです。僕は、九州の女子高生がクリープハイプのライブを見るためにチャリで東京を目指す「私たちのハァハァ」(松居大悟)という映画が大好きなんです。彼女たちはめっちゃ怒られるんです、菊池亜希子さんとかに。彼女たちの「今」をとらえた「私たちのハァハァ」、彼らの「過去」を旅する「ちょっと思い出しただけ」、どちらもオススメです。
第5位「私ときどきレッサーパンダ」
主人公のメイリン・リーと同い年の頃、僕は厳しめの駅伝部で厳しめの練習メニューをこなしていました。だから後半の「儀式 or アイドルのライブ」で葛藤する彼女に猛烈に感情移入して、滂沱の涙を流してしまいました。何度練習や記録会と被っていることを理由に、コンサートや演劇を諦めてきたか。仕事とかならまだしも、しんどい練習に参加するために娯楽を捨てるの意味わからないですよね。だからこそレッサーパンダになってまでも、彼女がライブ会場に走り出すあのシーンは、声を出して応援してしまいました。
「オトナ帝国の逆襲」のあそこというのは、イエスタデイワンスモアのEXPO’70の部屋(=大阪万博)で、しんのすけが幼いヒロシと会うところですね。あれの母娘版です。そんなんの泣くでしょ絶対。
第4位「メタモルフォーゼの縁側」
もうT字路’sの「これさえあれば」をずっと聴いてます。「三度の飯より夢中さ」「これがなけりゃ世は虚ろ そうさ誰にも邪魔はさせないのさ」と思えるもの(BL)におばあさんが出会って、それを通じて女子高生と友達になる映画です。何か熱中できるものを見つけた瞬間って最高じゃないですか。あのYouTubeの動画を漁っている時間、TSUTAYAで5枚同じアーティストの関連作品をまとめ借りするあの感じ、もう全部を見ちゃって新作を心待ちにするあの気持ち……その全てが詰まってます。ロートCキューブ要らず。宮本信子は自分の夢を芦田愛菜に託していくんですよね。もう二人は離れ離れかー、と芦田愛菜しかいない縁側を見ていると、そのままワンショットでエンドロールが始まるんです。しかも「これさえあれば」の宮本信子と芦田愛菜のデュエットバージョンまで流れてきて。「すべてなくし果てても 身ぐるみはがされても これさえあれば平気さ 望むものなど何もない」。あぁ、まだ全然泣けますね。
第3位「神は見返りを求める」
公開されたんで立場を明確にします。圧倒的に岸井ゆきのさんが悪いと思ってます!ムロツヨシさんは頑張って耐えた方。ああなるまで追い詰めた岸井ゆきのが悪い。それより悪い、というか「なんだコイツ!」なのは若葉竜也さんです。衝撃的だったのは、YouTuberとして売れに売れた岸井ゆきのの最後です。あまりに救いのないあの展開は、実際のある放送事故の噂とも重なって、本当に何とも言えない気持ちになりました。でも彼女の被害があのレベルで済んだのは、その手前の彼女がわずかに残っていたムロツヨシへの愛情を振り絞ってあることを回避したからですよね。観てないと一つも意味がわからない文章ですみません。
あと吉田恵輔監督は「銀の匙 silver spoon」以外全部観てて、公開タイミングで遂に「銀の匙」観たらしっかり吉田恵輔作品でびっくりしました。ケンティー主演広瀬アリスヒロインのキラキラ青春ムービーだけど、ちゃんと残酷で意地悪です。ご飯を食べながらは見れないシーンもあります。
第2位「マイスモールランド」
「マイ・スモール・ランド」じゃないんですよ。「マイスモールランド」。区切ってない。でも劇中色々区切られてるんですよ。家族も住む場所も何もかも。もしかしたら「さがす」より「死刑にいたる病」より、エグい話なのかもしれません。難民認定を受けられなかった在日クルド人の主人公は、許可のない県外への移動が制限されるんです。川の向こうの東京にはバイトしてるコンビニも、そこで知り合った恋人もいるのに。日本の中にも国境って、あるんですね。我々がのびのび暮らしてる日本にあった見えない壁(制度、コミュニケーション)、見たくなかった壁を見せてくれる映画でした。そんなメッセージ性もあって勉強になる映画なんですけど、恋愛映画としてもちゃんと眩しいんです。反吐が出るような現実を突き付けられるシーンがあれば、宝石のようにキラキラした時間もある。だからこそ、彼女の目の輝きを奪った制度や法律が許せない。そう思えるんです。
第1位「愛なのに」
やっぱり一番笑った映画を現時点での1位にしました。まず「古本屋の店長に恋した女子高生が、名前を知ってもらうために万引きする」っていう物語の入り口が最高ですよね。昨年の傑作「空白」では最悪の結末を迎える店長と万引き少女の追っかけっこですが、今作は疲れた瀬戸康史に河合優実がポカリを買ってあげるという。
そして何と言っても中島歩さんです。特に、
・浮気がバレた中島歩さんの長だらだら言い訳シーン
・「〇〇○が下手」と言われたときの中島歩さんのリアクション
が絶品で。披露の場がないものまねレパートリーがまた一つ増えてしまいました。
あとパンフレットにシナリオが収録されてるのも魅力です。全部のパンフレットにはシナリオを載せるべきです。値段が倍になってもいいんで。
というわけで、「コーダ あいのうた」や「悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ」、「ハウス・オブ・グッチ」、「犬王」とか色々ありますが、その辺りは改めて年末にまとめるとします。今日この順位も2022年6月30日現在のものです。明日には「はい、泳げません」が突然トップテン入りなんてことも全然あり得ます。
では、下半期も濃いストーリーを作らざるを得なくなるような映画に出会えることを心から祈っています。
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