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クリエイティブ思考

私は書家です。

5歳から書を始めて40年以上にわたって何を意識して作品を創っているのかについてクリエイティブ思考としてまとめてみました。

ここでいうクリエイティブ思考とは、書を起点としてみれば書論ですが、視点を変えればビジネス論でもあり、芸術論でもあります。


そもそも作品を創るとはどういうことか?


作品を創ること。
それは

作品を通して「念い(おもい)」を伝える

ことです。

「念い」とは強い気持ちを指します。

「信念」「念願」です。


そして、それを元に作品を創るわけですが、書に限らずどの分野においても通るべき道があり、高いハードルがあります。

私は経営者として、社会起業家としてビジネスにも携わっていますが、書に限らずビジネスにおいても同義であるな〜と、ことあるごとに感じ入っています。

別の言葉に置き換えますと

ビジネスはアートである。

ということになります。

終わりのない旅を生涯をかけて続けていく。

ビジネスも同様にここで終わりというものはなく、日本企業では100年企業も多く存在します。

何もないところから、完成やゴールなどあるようでないものをただひたすら愚直に歩んでいくことなのです。

そしてそれを突き動かすのはその人の「念い」だと考えています。
企業であれば企業理念です。

つまり、

書もビジネスもそれぞれの活動を通じて念いを伝える

と言えるのです。

別の表現をしてみましょう。


「なぜ」それをやるのか?


この、「なぜ」がわかっていなければ前に進めないのです。


ではクリエイティブ思考を具体的に見ていきましょう。

次の図を見てください。

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まず、最初のアプローチは

「知る」

ステージです。

これは、たくさんのサンプルを見たり聞いたり感じたりしてより多くのものに触れることになります。

書でいうと、街で見かけるお店の看板やお寺、古民家にある掛け軸、美術館で見かける書の作品などです。

古いものは中国殷王朝の時代の甲骨文字にまで遡ることになりますから3600年も前のものになります。

つまり、現代の書の作品だけでなく時間軸を遡って過去も対象となるわけですから膨大な量の作品と膨大な数の書家たちに触れるわけです。

これは、書に限らずというのはいうまでもない事ですが、


たくさんの書の作品を見る・知る

たくさんの絵画を見る・知る

たくさんの器を見る・知る

たくさんの彫刻を見る・知る

たくさんの映像を見る・知る

たくさんのプレゼンを見る・知る

たくさんのビジネスを見る・知る


といったように、より多く触れることが重要です。

これは、ここまでで終わりではなく、ずっと続いていくものですので、楽しく触れていくことをお勧めします。


その次に登場するのが


「選ぶ」


ステージです。


ここで選ぶのは、

何が好きで、何が嫌いか

の選択になります。

たくさんの情報をインプットすると、その中から好きなものとそうでないものが自ずと見えてきます。

その理由は様々で、

好きな書体

好きな書家

好きな文章

好きな墨色

好きな時代

など好きの観点は様々です。

したがって、

生理的に無理なものもあれば
楽しそう、面白そう、この雰囲気いいね。。。といった感じでも良いのです。

ここで大切なのは、たくさんの情報をインプットすると自分なりの好きと嫌いの軸ができてくることになります。

この軸という自分基準が大切なのですが、こちらの自分基準には別の要素が基になっていますので、こちらは後ほど。


そして、自分の好きが見えてきたら、いよいよ


「学ぶ」


フェーズに入っていきます。


このステージで重要になってくるのは、


誰から学ぶのか?

何を学ぶのか?


がポイントになってきます。
ここを見誤ると残念な未来が待っています。


書でいうならば

<誰から>
・書の大家から
・近所の書道塾の先生から
・書道の大学で
・独学で

<何を>
・書の技術
・書の知識
・書の理論
・書の作法
・書の錬成

といったところでしょうか。

これに限らず、学ぶことは当然多岐に渡ります。

書以外も同様です。

ビジネスの場合は

<誰から>
・どの企業に所属するか
・どのコミュニティに所属するか
・どの経営者の元で働くか
・誰と仕事をするのか

<何を>
・ビジネススキルを
・業務内容を
・ビジネスセンスを
・ビジネス作法
・ビジネス実践

となるでしょう。


もちろん、この「学ぶ」ステージも終わりはありません。

生涯勉強です。学び続けるのです。

多くの人々から学び
多くの人々に感謝する

とても楽しく、とてもしんどいステージです。


そして、いよいよ最後に待っているのが


「創る」


ステージになります。

すなわち、自分で生み出すわけです。


このステージに向かうにあたって、なぜハードルが高くなるのかについて少し考えてみましょう。

それは、

そもそも自らが創造することを想定していない人もいる

ということです。


書であれば、

書を書く時間そのものを楽しみたい。
書を書く所作を体験することを楽しみたい。
墨の匂いを嗅いでいるだけで満足。
手習を続けているだけで十分。

というように、自らの書風を確立したり、創作作品を仕上げて世に出すことなどは毛頭考えていらっしゃらない方々も多数お見えになります。

したがって、

書くことを通して何かしら世の中に伝えたい

という強い気持ちを持ちながら、自分らしさを表現することを意識するという高いハードルがあるのです。

ビジネスも同様に

会社に帰属しているだけで十分
この経営者のもとで働けるだけで満足
様々なビジネスに携われる環境に居れることが幸せ

ということになります。自ら新しい商品開発や新サービスの構築、社内起業や独立して起業することなどは特段想定していない方々が大半だと思います。
私自身もそうでしたからよくわかります。

何かしら背中を押されるような出来事に出会うか、当初から創造することを意識して仕事に取り組んでいない限り難しいでしょう。


さて、この「創る」ステージによって生み出される創造物には2つに分かれます。


モノマネ か  オリジナル か


この2つです。

しかし、実際にはピュアなオリジナルなんてものは存在しません


過去のものをミックスさせたりアレンジしたりしたものです


したがって、


モノマネ か  アレンジ か


というように表記した方が的確かと思います。


書については、言わずもがな師事した師匠の書風を真似ることからスタートするわけですからその書風が踏襲されたモノマネ的アウトプットになります。

好きな古典の作品を見つければそのエッセンスが加味されたものとなっていくわけです。

ビジネスアイデアも大半が過去のビジネスモデルの踏襲であり、そこに何かしらか足算したり掛け合わせたりしてできたものです。

これまでのものをまとめると以下のようになります。

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では、これらをキャッチアップできれば誰でもアレンジされた創造物ができるのかというとそうではないと思っています。


アレンジは人によって異なります。


書ではまさに書風というものです。


それに大きく影響を及ぼすものが2つあります。


それがこの2つです。


1.異文化・異業界の経験時間×経験回数

2.人生観(教育×環境)



そしてこの2つが大きく作用するステージが


「選ぶ」 と 「創る」


ステージになります。

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1.異文化・異業界の経験時間×経験回数

そもそも人間は多面的であり、何か一つの側面だけで表現されるわけではありません。
様々な方々と様々な場所で日々を営んでいます。

多くのコミュニティに帰属し、それぞれにおいて様々な経験を得ているはず。

そんな中から少なからず知識と経験を得て成長しているわけですから、一人一人が異なっていて当たり前なのです。

だからこそ、一人一人が異なるアレンジになるような影響を与えてくれます。


2.人生観(教育×環境)

そして人生観はどんな教育過程を経て何を学び、何を理解したかは非常に重要です。
合わせて、育ってきた環境(国や地域、家庭、時代、流行、関わってきた人に至るまで)に大きく影響されます。


いわゆる、人生観や哲学といったものも一人一人が異なっていて当たり前なのです。


この2つの要素が自然に加味されて、一人一人が異なる創造物を生み出すことになるのです。

また、この2つの要素についてですが、途中で終わるということはありません。

生きている以上、絶えずアップデートされるわけですから、アレンジされる作品も、時代・時期によってその表情は異なり、絶えずアップデートされていくことが極々自然なわけです。


では、「創る」ことを終えた後はどうなるでしょうか?

実は、この後が苦しくもあり、楽しくもある世界が待っているのです。

それは、


「創り続ける」



という業であるからです。


この「創り続ける」ことを

恐怖に感じるか楽しめるかについても一人一人異なってきます。


今まで誰も見たことのない書を

今まで誰も見たことのない絵を

今まで誰も聞いたことのない音楽を

今まで誰もやったことのないビジネスを


変わることを恐れる人もいれば

変わることを望む人もいいます

恐怖の主体が他者にある場合もあれば

主体はあくまで自己である場合もあります


その逡巡の積み重ねの中で

その先の

人生を終えた後に何かしらの創造物が残っていく

ことを

誇りに思って作り出せるだろうか?


後世の人がその作品を見て

何を感じ

何を受け止めるのか。


それも一人一人異なります。


そして、現代を生きる私たちが恵まれているのは

ITの進化によって確実にデジタル情報が残されていくことにあるでしょう。


現物は歴史的価値や市場価値によって保存されていきます。

自分で納得がいかなかった場合であっても、確実に情報は残るのです。


そして、それはアートだけでなく、

一人一人の人生が刻まれていくことに。


つまり、


人生を歩み出した時点から 皆がアーティスト


なのです。


毎日をクリエイティブに生きている一人一人がアーティストなのです。


それを人生の傍観者として過ごすだけでなく

創造者として過ごす意識を持つだけで

世界は

未来は

ほんの少し変わるかもしれない。


そんなことを

書を通じて私は伝えています。


その先にはお互いを理解しあえる世界につながり

さらにその未来には争いのない世界につながってほしいと願っています。


人生よ。クリエイティブであれ。


〜クリエイティブ思考〜


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