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[ビジネス小説]未来へのプレゼン 第6話 プレゼンノック

それからの2週間、10営業日はひたすらプレゼンを作り、発表することを求められた。

1回あたりのプレゼンは3分間。

3分間で伝わるプレゼン資料。

しかも文字数は少なく。


与えられる課題も多岐にわたっていた。


プレゼンノックのスタートだった。

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1日目:趣味のプレゼン

2日目:これまでの生い立ちをプレゼン

3日目:住んでいる街のプレゼン

4日目:卒業した母校である大学のプレゼン

5日目:今までに読んだ書籍TOP3プレゼン

6日目:今の部署をプレゼン

7日目:企業価値を2倍にするプレゼン

8日目:SDGSのプレゼン

9日目:新規事業提案プレゼン

10日目:未来プレゼン

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「吉田。このカリキュラムが終わる頃には、間違いなく素晴らしいプレゼンターになれるはずだ。


やりきれよ。」


「はい!」

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と、勢いよく返事したものの、これが地獄だった。


プレゼンテーションには大きく2つに分かれていて、

社内プレゼン・・・社内で決裁を取るプレゼンテーション

社外プレゼン・・・社外で賛同を得るプレゼンテーション

と大別できるのだが、頭で分かっていても資料が追いつかない。。。

そして、「誰に」伝えるかによって構成や中身が大きく変わってしまう。

誰に伝えるかは自分で設定するのだが、これも

・どれくらいの年齢層に
・人数規模
・性別の比率
・決裁者の有無
・ゴール設定(相手・聴衆にどうしてもらいたいか)

といったことを事前に設定してスタートする。

前回と同じターゲット設定にしていると、強制的に変更となる。

そして、業務終了後に3分プレゼンを行い、10分間のフィードバック。

丸山部長のフィードバックは初回から容赦なかった。

・・・。

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「吉田。

まず、結論から言うと、お前のプレゼンを聞いて誰もお前の趣味に興味は持たないということだ。

そもそもなんのために趣味のプレゼンをした?」

「それは、お題が趣味のプレゼンなので、趣味について説明しました。」

丸山は厳しい口調で行った。

「吉田。私の時間を返せ。」

「えっ?何がいけなかったんでしょうか・・・。」

慎吾は精一杯趣味について語った。かなり細かい事象についても伝えたはずだ。3分間にこれだけの情報量を厳選して伝えることは難しいことだったが手応えを持ってやったはずだ。

なのに何故?

「君は、君の趣味を私に伝えてくれたけれど、私にどうなってほしいと思ったんだい?

一緒にその世界観を共有してほしい。
楽しさをわかってほしい。
週末一緒に一度出かけて見てほしい。
そういったことを想定して話していたか?

私には何も響かなかった。

理由は簡単だ。

わかるか?


・・・。


ただの説明だったからだよ。」

答えに窮しているうちに丸山が答え始めた。

「まず本質論として、相手にどうなってほしいのかが明確じゃ無い。ぼんやりしていてピントが合っていないから聞き手がどこにフォーカスしていいかわからないんだ。

次に技術論。今回、書籍を読んだものの、大きな流れはできていたが文字を詰め込みすぎたね。3分間で君の資料のボリュームであの文字数だと全て追いきれない。ましてや文字数が多いと読んでしまうと書いてあっただろう。
13文字の法則でキーメッセージを浮き彫りにする所からやり直しだ。

そして話法論。覚えて話していたらその通りに話さなきゃいけないと思ってしまって説明口調になる。スライド作成画面を見せて見て。
・・・。
やっぱり。それぞれのスライドに何を話すか文章で書いてあう。
これは今後行わないこと。
スライドを見れば何を伝えのかが思い出せるように覚える。それでいい。一言一句覚えようと思ったら上手くいかなくなるし、相手が求めていないこともだらだら話すことになって無駄な時間を過ごさせることになるからね。」

慎吾は全くプレゼンができていないことに唖然とした。。。

これまでプレゼンには自信があった。

それまでの上司や同僚たちも認めていてくれていた。

だが、全く次元が違っていた。

それと同時にやるべきことがくっきりと浮き上がってきた。

「では、これを踏まえて、資料のブラッシュアップをして明日再提出。合わせて明日は生い立ちプレゼン。楽しみにしているよ!」

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フィードバックは、次の3つの観点でされた。

・本質的なコメントバック

・具体的な見せ方についてのテクニカルなフィードバック

・話し方に関するフィードバック


毎回30分。

10営業日。

それは慎吾にとって奇跡のフィードバックだった。


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