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おにぎり

合宿で何時間も勉強に集中するなんて私には無理!すごいねみんな!と合宿に参加したことのない女生徒に言われたことがある。

だが、実際には何時間も集中しているわけではない。自然環境のなかで、適度な集団生活で集中しやすいとはいえ、やはり何時間も机に向かっていると、勉強する気が無くなることもある。

だいたい1時間勉強しては少し休憩するというペースが多いが、それも難しく30分くらいしか集中がもたないという子だっている。歩きたくなったり、眠くなったり、ぼーっとしたりそれぞれの「現実逃避」が始まる。

休憩するなと言うこともない。休憩したくなったら休憩すればいい。ただ、休憩したいから休憩するのではなく、勉強を再開するために休憩するということを念を押す。そうでないと休憩中時間を忘れて休み過ぎ、結局勉強に戻ってこれず、何のための休憩だったのかわからなくなるから。

何とはなしにトイレに行くとか、うろちょろするとか、お茶が欲しいといいはじめる、お腹が減った、眠い、さまざまな邪念がやってくる。虫が飛んできて、怖い!虫嫌だ!を連呼して、叫び出す中高生もいる。(あんたの方が十分でかいからな…といつも思う)

結局のところそれらはすべて形をかえた「サンカーラ」でしかない。(仏教用語ググってください)

サンカーラを燃やすためにはどうすればいいか。
その奥義はおにぎりである。

うろちょろするのが観察されたらだいたい論破できる。だが、排便と空腹は生理現象などで「やめろ!」とも言えない。これなら論破されないなと気づいた言い訳多めの中高生は、「先生、トイレいっていいですか」とか「お腹が減りました」を連呼することもある。

トイレに行くのは1時間に1回くらいなら大目にみる。これは明らかに勉強への逃げ口上だろうと勘づいたとしてもしばらく泳がせておく。だが、腹が減ったというのには一発で黙らせたい。それでおにぎりの登場だ。

おにぎりは男の手の平くらいほどの大き目の握り飯だ。塩のよく効いた米のかたまりを食べたら腹にたまることは間違いない。これで数時間この言い訳を言わせないことに成功する。

おにぎりはお握りだが、「鬼切り」でもある。鬼とは自分の中にある邪念、餓鬼だ。こころの餓鬼を一刀両断し、やるべきことに集中する力がおにぎりにはある。

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