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夫が提唱するクレーンゲーム理論について
「ようやく……! 発売日が発表されたよ」
先日、夫がやや興奮ぎみにわたしに訴えかけてきた。ファイナルファンタジー7のリメイク作品がようやく発売される運びになったという。
https://www.jp.square-enix.com/ffvii_remake/
夫はファイナルファンタジーが好きで、特に「ファイナルファンタジー7」は最高の作品であると、ことあるごとに褒めたたえていた。
ファイナルファンタジーとドラゴンクエスト。このふたつは、ゲーム界でも特別さが際立ったRPGだろう。もっとも、わたしはファイナルファンタジーシリーズを一度も(どの作品も)プレイしたことがない。ただ、世界中に大勢のファンがいることは確かだし、「プレイしたらハマるだろうな」というのはとてもよくわかる。
夫はファイナルファンタジー7がリメイクされることを、結婚した10年前からずっと夢見ていた。正確にいうなら、わたしと結婚する以前からリメイクされることを熱望していたのだろうけれど、わたしがそれを知らなかっただけだろう。
PlayStationの本体が3から4にバージョンアップされて発売が決まったときなんかは「ハードが変わってしまったら、ソフトの開発が遅れてしまう」などと、どういった目線かわからないけれど悔しそうにしていた。夫はゲーム開発はおろか、パソコンの設定もままならない。でも、まあ言いたいことはわかる。ソフトの開発と、ハードの開発は二人三脚というか、どちらかだけが進化しても組み合わせられない。
さて、「ファイナルファンタジー7リメイク」は、2020年3月3日に発売されることが発表された。ハードは、PlayStation4が必要になる。我が家にはないゲーム機器である。購入しなければ、遊ぶことができない。
「どうにかして、取れないだろうか? 10000円ぐらいで」
夫は、PlayStation4を購入するのではなく、「クレーンゲームで取りたい」といい出した。近所にあるレンタルビデオショップの店内に設置されたクレーンゲームの景品にPlayStation4があることを夫は発見していたのだ。
「ああいったクレーンゲームは、景品が取れないように設定されてるんじゃない?」わたしは、10000円もクレーンゲームに費やして結局取れないんなら、中古品でいいから本体を安く買えばいいんじゃないかと提案した。
しかし、夫は「ああいうゲーム機は、絶対取れないってことはないはずだ」と急に熱弁をふるい出した。
「ふだんは、クレーンの力もアームのつかみ取る力も弱く設定されている。簡単に高価な景品を持っていかれちゃうと、損するからね。でも100回とか、200回に一度くらい『つかみ取る力を強くする』設定がされているんじゃないかと思うんだ。だって、まったく取れない設定にしてるのは、サギみたいなもんでしょ?」
うーん……? どういう理論だろう?
ただ、「景品がまったく取れない機械を設置してお金を巻き上げる」というのは、確かにサギ的ではあるかもしれない。お祭りの景品にゲーム機が並んでいるのに、くじ引きをいくら引いてもその番号は出てこない、みたいなことだろうか。ただ、くじ引きは主催者の意図的だけれど、ゲーム機は意図的に力の弱い設定にしていても、うまく景品を持ち上げる技術を持った人がいればどうにか持っていけるんじゃないだろうか。
以前テレビ番組で、紙の箱の景品をクレーンゲームでつかみとる「すご技」みたいなのを見たことがある。紙の箱なら、パッケージを開封できるすきまにアームの先を差し込んでいた。つかみ取るんじゃなくて、差し込むという発想がすごいなあとぼんやり見ていたことを覚えている。
「わたしが機械を作る立場なら、そんなややこしいプログラムは組まないよ。ややこしいし。そもそもクレーンゲームはプログラムというより、
・クレーンが前後左右に動く
・クレーンが降りていってアームが開く
・つかみ取る動作をする
・クレーンが上に戻る
・クレーンが景品を落とす穴の上に移動する
・アームがひらき、掴んだものを落とす
この動作の繰り返しだけでしょ? そんなややこしい隠れコマンド作る意味ないと思うけど……」
「いや、オレならそういうの作るかも。なんというか、遊び心みたいなものがああいうクレーンゲーム機には必要なんじゃないの?」
なんだかよくわからない理論を提唱している。ゲーム機自体が遊びの道具なんだから、さらにそこに遊び心をくわえるとややこしくならないだろうか? 確かに、テレビゲームなんかで、隠しコマンドがあるとワクワクするのはわかる。けれど、クレーンゲームにそれは必要だろうか? 景品が取れるか取れないかで十分楽しめる要素だと思うのだけれど。
夫は、自身が提唱する「クレーンゲーム理論」を実際に試してみたいのだという。10000円くらい使って、どうにかPlayStation4をゲットできないだろうか、と。1回いくらで遊べるのか、その時聞かなかったけれど、「試してみる価値はある」と夫はいう。1回200円なら50回は試せるけれど。
「でも、20000円使って、クレーンゲームで取れれば、新品の本体を購入するより安上がりだよ!」……いや、そうかもしれんけど。でも、そこまでするなら、普通に買ってほしい。来年3月に発売されるファイナルファンター7リメイクのためなんだから、ハードを購入するために毎月4000円くらい積み立て貯金すればいいじゃないか。
わたしは一応止めた。けれど、夫は提唱している「クレーンゲーム理論」が正しいかどうか、検証する日がくるかもしれない。理論が証明されるかどうかは、夫の財力にかかっている。
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