動物のお医者さん的、大学生活。

十二月の初め頃、「動物のお医者さんを読まれてないんじゃ疑惑について」という話題を Twitterで見かけた。

確かに「動物のお医者さん」というマンガが流行ったのもずいぶん昔のことだ。面白いマンガだけれど、本屋さんにずっと置いてあるかはわからないし、新刊本とは違って、愛蔵版とか文庫版になっていると、面白さを知っている人だけしか、手に取らないかもしれない。

「動物のお医者さん」というマンガは、獣医になるまでの過程を描いた獣医学部の学生と、それらを取り巻く人々と動物の物語だ。

理系の、主に生物系の大学生からしてみれば「あー、あるある」といった共感ネタも多数散りばめられている。わたしは、大学では海洋生物学(水産科という名前を、ちょっとかっこよく変更しただけ)を学んだ。「動物のお医者さん」に描かれているエピソードですごく近い経験もしている。

主人公のハムテル達が「微生物のテスト」をおこなう内容がある。一人ひとりに、ある細菌が入った試験官が配られる。その細菌を試験管やシャーレの培地に増殖させて、さまざまな検査方法を用いて「この細菌は〇〇です!」というのを答える、というもの。その細菌を増やす過程や、学生達が右往左往して、教授がこっそりと助けてくれたりする、という内容だ。

わたしの、大学四年生の卒業研究が、まさにこんな感じだった。卒業研究のテーマが「海洋性微好気性菌の酵素(SOD)活性について」という、卒業してもう何年も経ってしまうと、なんのことだかわからない内容である。

覚えているかぎりの知識で説明すると、まず「海洋性細菌」というもの。

これは、海水域に生息する細菌、ということである。魚には淡水魚と海水魚がいる。それはわかってもらえるだろう。金魚とか、コイは淡水魚。アジとかヒラメとかは海水魚。川(淡水域)で生息して海(海水域)で産卵する魚もいるし、海で産卵して川で生息する魚もいる。もう、その辺はややこしいので割愛。川、といっても河口付近は汽水域(きすいいき)といって、淡水と海水が混じっているところでもある。ややこしいけれど、私の研究対象だった細菌はサンプルがすでに研究室に準備されていた。海水から汽水域にかけて生息していたものだったと記憶している。

つぎに「好気性細菌」。これはややこしい。そして、恥ずかしいことにあんまり覚えていない。

本当にざっくりとした説明だけれど、酸素(O2)が存在する場所で生息する微生物を「好気性細菌」と定義し、無酸素状態で生息する微生物を「嫌気性細菌」と分類される。

その中でも、嫌気性細菌は偏性嫌気性菌と通性嫌気性菌とに分けられる。……ついてきてもらえているだろうか? 私も説明していて、かなり自信がない。何をいってるのか、自分でもちょっとわからない。

具体例を挙げてみるならば、食中毒を引き起こす細菌がいる。

サルモネラ菌は通性嫌気性菌。ボツリヌス菌は偏性嫌気性菌。通性と偏性の違いは何か? というところだけれど、これまた簡単に説明する。

通性嫌気性菌は、酸素があっても、なくても生息する。偏性通気性菌は酸素のない状態でのみ、生息することができる

えっ? 無酸素状態なんんて、地球上に存在するの? と思うかもしれないけれど、窒素があれば、生息できる、ということである。……ふたたび、ついてきてもらえているだろうか? こんな説明、わかりにくいだけで、なぜしているのか。書いている私自身、分からなくなってきた。ただ、大学生の時には真剣に微生物と向き合っていて、今まで書いてきた内容は理解していたのだ。今となっては、役には立たない知識のようにも思うけれど。

さて、かなり端折って、「微好気性菌」とは何か? となる。私の卒業研究対象だ。簡単に言えば「酸素が少しだけ必要な場所にいる細菌」ということである。え? じゃあ、通性嫌気性菌と一緒じゃん、と、思ってくれる人! 鋭い! しかし、通性嫌気性菌は「酸素が、あっても、なくても、生息できる」のに対して、微好気性菌は「酸素はないとダメ。だけど、一般的な酸素量(日地上的に人間が暮らしている状態)であるといきていけない」といったややこしいタイプの細菌なのだ。もっと詳しく知りたい! という方はWikiをどうぞ。

かなり話外れるけれど、地球外生命体として考えられるのは「偏性嫌気性菌」じゃないかとわたしは予測している。酸素がない状態でのみ、育成するのであれば、生息可能だ。もちろん、地球上の定義が、当てはまらない可能性もあるだろう。なんせ、宇宙の話だから。

ここまでずいぶんと説明してきた。説明しすぎた気もする。「動物のお医者さん」の面白さを書きたかったのに、やたらと遠回りをしてしまった。もう、何がなんやら分からんわい、という遠いところまでやってきてしまった。

主人公のハムテル達は、細菌のテストであれやこれや苦労する。(試験管で渡されているので、たぶん偏性嫌気性菌じゃないはず)この、好気性の細菌か、通性嫌気性か、偏性嫌気性なのかを調べる色々な検査方法があって、それらを一つひとつ確かめて、「この菌は〇〇です」とたどり着かなくちゃいけない。そういった試験をマンガで描いているのである。

マンガのなかでは、みんな、それなりに合格しているようだった。はっきりいって、「この細菌が○○です」と、特定するにはかなりむずかしい。なんというか、細菌は無数に存在するからだ。獣医になるのは、とても難しいことなんだなあと、不思議な角度からだけど、尊敬する。

なんだか、小難しい説明ばかりをつらつらと書いてしまったことを、ちょっと後悔している。「動物のお医者さん」は、ややこしい内容はほとんど書かれていない。漆原教授のしるこばくだんとか、獣医に行きたがる犬の話とか、ネズミが苦手なのに獣医をめざすことにした二階堂がネズミと格闘する話とか。「動物のお医者さん」が、とても面白いマンガであることだけは確かなので、未読の方は是非一度手にとってもらいたい。


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