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ひまなつりなど在りはしない

いよいよ夫と会話がかみ合わなくなってきた。というのも、ここ最近、夫の脳内はいつも以上に「釣り」でいっぱいになっているからだ。

ずいぶん前に、あなたの頭の中の何パーセントは何が占めている、というのが図解される「脳内メーカー」というのが流行っていた。おそらく、いま夫の脳の中は「釣り」が90%を占めていると思う。残りの10%はおそらくネコだろう。ちなみに通常時でも60%か70%が釣りだとおもう。

夫がやりたがっている釣りにはシーズンがある。いつでも釣りをして良いわけではない。冬の間は禁漁となっていて、3月1日に特別解禁、3月2日から一般解禁、シーズンスタートとなる。

少し話が脱線するけれど、釣りなんて、海とか川、湖で釣り糸を垂らしていればいいんじゃないの? と思われるかもしれない。しかし、それは間違っているし、違法になることも多い。海や川、湖には「漁業権」というものがある。勝手に釣りをしたら逮捕されることもある。海なんかだと、例えばアワビとか、サザエなんかを潜って取るのは密漁になる(こともある)。

川と海では微妙に違っている部分もあるのだけれど、堂々と心置きなく釣りをするならば「遊漁券」が必要になる。遊園地に入るときには入場券を買うのと同じようなものだと思ってもらえるとわかりやすいだろうか。海では遊漁券が設定されていない釣り場が多いため、知らないうちに密漁になっていたり、グレーゾーンも場所も多い。

さてさて、話を戻す。

頭の中が90%釣りでいっぱいの夫との会話は、基本的に成り立たない。例えば今日の夕飯、何がいいか? とたずねると「釣りに行くとき冷凍庫使うから、なるべくカラにしてほしい」と返事がくる。

ペットボトルのごみを捨てるときも「ペットボトルに水入れて持って行くから。全部捨てないで」といわれる。

お休みの日にスーパーに行くまえには釣具屋さんに一緒に行ってほしいと頼まれる。夫は休みのたびに、いつだって一人で行っている。しかし、ケースから出して買おうか迷っている商品を見るとき、ケースが邪魔だから持っていてほしいのだという。

「もう買うって決めてたら、お店の人に頼めるけど。まだ結構悩む要素があるから、まだ買えない」そういうときには、荷物持ちというかケース持ち要因としてわたしが呼ばれる。

スマホを見ているかと思いきや、釣果情報をずっとみている。釣り仲間のうっちーと毎晩一時間近く電話している。

よくもまあ、それほどまでにのめり込めるなあ……と感心するほどだ。

しかし夫に言わせれば「釣りは修行」だという。

ひまなつり、なんて存在しないらしい。昨年、3月3日に「今日はひまなつりだね」とラインで送ったら「ヒマな釣りなんてないよ」と即座に返信された。いや、そういう遊びじゃないんだけど……と思ったけれど、話が通じ無さそうだったので、説明するのはあきらめた。

夫の釣りシーズンがいよいよ始まる。困ることと言えば、釣りシーズンに入ると、基本的に夫の脳内90%が釣りになる。夫婦の会話、みたいなものはあんまり見込めない。

夫婦で価値観が異なるとうまくいかない、とか、夫婦共通の趣味があったほうがいい、などと目にすることがあるけれど。

それぞれ好き勝手にやってても、会話はかみあわないとしても、特に問題なく、それなりだけどうまくいく。むしろわたしが釣り好きだったら、主張が強すぎて、夫と上手くいかないかもしれない。

今年も夫が釣ってきた魚を、美味しく食べられますように。





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