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睦ぶ、待ち合わせ

「やっぱり新幹線の改札、出ないほうが良いんちゃう? 迷わへん?」

心配性の姉が、同じセリフを繰り返す。これでもう三度目だ。

「そんなに言うんなら、改札の中でも良いけど? でも、北口と南口があるし。目印って、きしめん屋さんしか思いつかへん。去年と同じで、金の時計前で待ち合わせたら良いんちゃう?」

「せやね……。携帯持ってるし、見つからんかったら電話すればいいか」 

離れて暮らしている姉と、年に一度、予定を合わせて旅をしている。

待ち合わせ場所は、お互いの住まいの中間として、名古屋駅。行き先は岐阜の温泉だったり、伊勢神宮だったり。

もう何度も待ち合わせをしているのに、迷わず会えるだろうかと姉はいつだって気を揉んでいる。

幼いころ、迷子になった私の泣き顔を、思い出すのだそうだ。いくつになっても私のことを、心配してくれる。

「お姉ちゃんこそ、乗り過ごさないでよ」私がそう言うと、電話の向こうから笑い声が響いた。







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