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そうか、きみは夏もいたのか。

九月の終わりのこと。

それまでは猛暑だ酷暑だと、うんざりするほど暑い毎日が続いていたのに。

ある日突然ひゅっと冷たい風が吹いて、いつのまにか秋が知らん顔をしてすぐそばにいる。

ずっと暑い日が続いていたせいか、すこし油断していたのだろう。長袖だけれど、ぺらぺらに薄い生地の服を着て出かけてしまった。

日中になれば気温も上がってくるだろうと思っていたのだけれど、まったく暖かくなる気配はない。一日中ひんやりとした空気にさらされて、身体は思いのほか冷え切ってしまった。

出がけに天気予報を確認しなかったせいだなと思いながら、ぷるぷると小刻みに震えながら駅のホームで電車を待つ。

電車は出てしまったばかりだし、あと十五分ほどはホームで冷たい風にさらされるのも辛かった。非常手段として「あったか〜い」飲み物をホームに設置された自販機で購入して暖をとろう。そう思い、自販機の前へと歩いていった。

しかし。

駅に設置されている自販機だけなのか、神奈川の自販機ルールなのかは分からないけれど、「あったか〜い」飲み物は自販機のラインナップには入っていなかった。一本も。

おそらく自販機の温度設定や、飲み物のラインナップが変更になるため「来週寒いみたいだから、HOT、入れましょう」ということができないのだろう。九月の終わり、関東地方は基本的にはまだ「暑い」。統計的にあったか〜い飲み物よりも、つめた〜い飲み物の出番が多いに違いない。

結局、わたしは暖をとる作戦は失敗した。ただ、これまで一度も気にしたことのない飲み物に出会うことができた。

伊藤園が作った「寒天しるこ」だ。
さらっと上品な甘さ ひんやり和スイーツ。

真夏のあっつい時期に、冷やししるこを飲みたいと思う人はどれくらいいるのだろう?

わたしは以前、こんな記事を書いた。

わたし自身の感覚だけでいえば、真夏のあっつい時期には、しるこよりはレモンスカッシュを選ぶ。冷やされていて、寒天が入っているスイーツ感覚だとしても、さすがにしるこののどごしは受け入れがたい。

けれど、「寒天しるこ」はきっと人気があるに違いないのだ。缶の形状は改良されているし、自販機の中でも一段高く、目立つように配置されている。

わたしの視野のせまい価値観で、ものごとを測ってはいけないのだ。またもや缶に入ったしるこドリンクから、教えてもらった気がした。

10月も半ばになると、「あったか~い」ドリンクが自販機の三分の一を占めるようになった。冷たいしることレモンスカッシュが並んでいた場所には、あったか~いしること、コーンポタージュがちんまりと座っていた。





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