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オリハルコンとキルケゴール

「すみませーん、降ります!」
ぎゅうぎゅうに押し込められている満員電車。降り口から少し離れた場所に立っていると、電車からおりることだけでも一苦労だ。
だれかが、こんな状況で慌てて電車を降りているとき。

私はいつもアタマの中で「ああ、降りはるんやねえ。おりはる、おりはる、オリハルコン」と、唱えてしまう。なぜかはわからない。たぶん、ゴロがいいから。それだけの理由だろう。

大阪出身だから、○○しはる、という言い方が染みついていることも、理由のひとつかもしれない。

ただ、いつも唱えたあとに「オリハルコンってなんだろう?」と考える。オリハルコンの剣とか、そういった形で耳にしたことがあるけれど、どういったものかはまったく知らない。

幻の金属、という扱いらしい。けれど、どちらかといえば「ふしぎの海のナディア」とか「スレイヤーズ!」とかで出てきたアイテムとして覚えているのだろう。

同じような感覚で「おきるよ、おきるよ、キルケゴール」と思うこともある。これは、早朝、ねこにご飯を催促されるとき。

うちのねこはとにかくあきらめない。おなかがすいたらご飯がもらえるまで、ずうーっと「にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー」とアピールし続ける。ひどいときにはわたしの髪の毛をかみちぎるし、眠る前に読んでいた、枕元の本をびりびりに破り割く。とにかく、わたしが起きるまであらゆるアピールを繰り返す。

そうして、わたしはしぶしぶと布団から這い出て「わかったよ」といいながら階段を下りていく。そのときに「おきるよ、おきるよ、キルケゴール」と唱えるのだ。ねこのなまえはキルケゴールじゃないのに。そもそもキルケゴールってなに? と寝ぼけながらに思う。

キルケゴールは哲学者らしい。「死に至る病」などの著作がある。不勉強なわたしは、一度も読んだことがないどころか、手に取ったこともない。

けれども、キルケゴールが何度も頭をよぎるのだし、これを機会に一度読んでみようかなとも思う。何がきっかけになるかなんて、本当にわからないものだ。

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熟成どころか、冷蔵庫の奥にしまい込んでいてカッピカピに乾燥して捨てるしかない、みたいな内容ですが、熟成下書き企画にのっかってみました。

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