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フリーズされると、もうどうしようもない。

「帰ります」
月曜日の夜、帰宅していますよと夫にLINEした。

夫はシフト勤務のため、自宅にいないことが多い。朝は家にいるけれど、わたしが仕事から帰るとネコだけがお腹を空かせて待っていることが多い。またその逆で朝はいなかったけれど、夜勤明けで帰ってきていることもある。

月曜日は夜勤明けで、台風の影響があり、電車の遅延などで時間を取られたらしいが昼過ぎには帰宅していた。

「夕飯は一緒に食べられる?」と、夫は帰宅後にLINEしてきて、わたしは「たぶん」と答えていた。

夫は自宅にいると、帰宅時には駅まで車でむかえに来てくれる。わたしが会社を出て、電車に乗るころに「帰ります」と連絡すると、「8時32分着だね」などと時間を調べて待っていてくれる。ありがたいかぎりだ。

しかし、月曜日は「帰ります」と連絡しても返信はこなかった。夜勤明けで、疲れて眠っているのだろう。そういう日もあるなと思って、気にかけずにバスに乗った。

眠っているかも知れないと思い、静かに家に入ろうとした。しかし、扉をあけて玄関に入ったとたんに夫が姿を見せた。ただいま、とわたしがいうまえに
「スマホ、壊れちゃった……」と、悲しさでいっぱいの声で訴えてきた。

はー、なるほどなるほど。寝てたわけじゃなくて、スマホが使えなくて連絡できなかったのか。

夫のスマホは、いわゆる「アップルループ」と呼ばれる状態に陥っていた。iPhoneをお使いの方はご存知かと思うけれど、iPhoneは電源をoffにしたのち、ふたたび起動するとき、まっしろな画面にアップルのマークが浮かび上がったのち、ロック解除のパスコード入力をうながす画面が立ち上がる。

しかし、「アップルループ」と呼ばれる状態は、まっしろな画面にアップルマークが表示され続け、なにも操作できなくなってしまうのだ。

強制的に電源を切ることはできるけれど、立ち上げると、またアップルマークだけが煌々と輝いている。その状態がえんえんと続くことから「アップルループ」と呼ばれているらしい。

夫は、わたしが帰宅するまでにPCで検索して、自力でできそうな対処法はやってみたのだという。しかし、どれもうまくいかず、挙げ句の果てにはホームボタンもフリーズして押せなくなってしまっていた。お手上げ状態になり、途方にくれていたところでわたしが帰宅したのだという。

夫が調べた対処法を行なってみたいものの、「ホームボタンを押しながら」という動作すら、フリーズして押すこともできない。

記されていたいくつかの提示法としては「SIMカードをいったん抜いてみる」とか「一度強制終了してみる」などのほかに「iTunesに同期して復元」というのがあった。「iTunesに同期して復元」の作業を行うにはホームボタンを押さなくちゃいけなくて、それはもう試すことができなくなっていた。


結局のところ、わたしには何もできなかった。携帯の契約状況を調べて、サポートに入っているからお店に行って修理、もしくは機種交換してというしかない。夫はふてくされながら「もう寝る!」と口も利かずに寝室へ行ってしまった。

夜勤明けで眠い、というのもあったにちがいないが、対処方法が見つからない以上、もうお店は閉まっている時間だし、今後の対策を立てるしかないのに。ふてくされてしまうと、話し合いようがない。スマホはフリーズし続け、夫はふてくされてしまい、ネコはちらちらとこちらの様子を伺いながらも、あきれた様子で寝たふりをしていた。ひとり取り残された私は、夫が翌日携帯ショップで必要になりそうなIDやらパスワードやらを記載したメモをこしらえつつも、小さなため息をついた。

スマホを交換することになりそうな、この機会にキャリアの変更をして、格安スマホに機種変更したい、というわたしの提案は、ふてくされた夫に向かって言えそうもない。



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