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ハンディラジオと電卓でできるもの

「家にハンディタイプのいらない電卓とラジオない?」

仕事中に、夫からLINEが送られてきた。どうしたんだろう? と思ったもののそのまま少し放置しておいたら続けてこんな文面が送られてきた。

金属探知機つくれるかも」と。

なんだか、また分かりやすくネタを提供してくれるなあ。そう思ったけれど、なんだかその日はバタバタしていて、この内容に関して深く考えられなかった。使っていないハンディタイプのラジオはある。確か、東日本大震災の少し後に、ハンディタイプのラジオがあったほうがいいねと言っていた。その時、ちょうど職場の引越しがあって、ハンディタイプのラジオが職場から出てきて、不用品だというからもらって帰ってきたのを覚えている。

しかし、電卓はダメだ。わたしが日常的に使用している一台しか我が家にはない。iphoneにも電卓機能はあるのだから、iphoneを使って、ハンディタイプの電卓は夫の金属探知機作成に差し出してもいいかもしれない。けれど、ずうっと日々の家計の計算のお供として十年近く使っているのだから、それをはいどうぞと差し出すのはイヤだなあと思っていた。

夫はその日、夜勤だったので自宅に帰ってから「金属探知機ってなに?」と直接話をすることもできなかった。また、その後、夫からも金属探知機についての発言がなかったので、数日動きらしいものはなにもなかった。

週末になり、珍しく休みが重なった。わたしはふと思い出して「金属探知機ってなに?」と聞いてみた。すると、夫は「ああ! そうそう! ちょっと作ってみようかな!」という。え? 今すぐにつくれるもの? っていうか、電卓は渡したくないんやけど……。そう思いながらも、わたしが夫に金属探知機のことを思い出させてしまったし、これはもう仕方ない。「分解して組み立てるの? 電卓、この一台しかないから、分解されるのはちょっと困るんやけど」とおそるおそる聞いてみた。すると「え? 分解なんかしないけど?」という。たしかに、分解するとは一言もいっていない。

夫はハンディタイプのラジオと、電卓を養生テープで貼り付けた。そうして、ラジオのスイッチをオンにして、音声が入っていない、ザザザザーという番号に合わせていた。「はい、これでできあがり。ちょっと試してみよう」夫はうれしそうにそういった。

ん? これで完成? わたしは半信半疑ながらも、夫がその簡易金属探知機を動かす姿を見ていた。すぐそばにあったテレビのリモコンの上に簡易金属探知機をかざした。すると、それまではザザザザザザザザと言っていたラジオが、ガガガガガガという音を出している。今まで発していた音とは違っている。夫は「おおー!」と嬉しそう。「もっと他に、金属っぽいものを出して!」という。わたしもちょっとびっくりしたので、結婚指輪を外して机の上においた。夫はすぐに指輪の上に簡易金属探知機をかざしてみた。しかし、ザザザザザザザザという音から変わらない。指輪は金属とみなしてもらえないのだろうか?

夫は家の中にある金属と思わしき物体に、その簡易金属探知機を近づけ始めた。空きカンみたいなものは反応しない。けれどインターフォンのそばの壁はギギギギギギという音を発していた。明らかに反応している。反応するものと、しないものがある。

金に反応しないと、意味ないんだよなあ!

夫はそう言ってラジオの周波数を変えれば指輪に反応するかなど、いろいろ試していた。しかし、何度試してみても、夫が作成した簡易金属探知機ではわたしの指輪には反応しなかった。

結局その日は諦めた。他の電卓やラジオに変えれば、もっとはっきりとした反応が出るかもしれない、などまだまだ試行錯誤の余地がありそうだ。なぜそのふたつを使うと金属探知機のような働きをするのか、はっきりとした原理もわからない。夫はそう判断して、いったん金属探知機に関する作業は終了した。

金に反応する金属探知機を作り上げたら、夫はどうするのだろう。砂金でも探しに行くつもりかもしれない。


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