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わたしたちは日々支配されている。
「え? ちょっと通知が来るの、早くない?」
春分の日の、夕方のことだった。
その日は、朝から父の四十九日法要があった。わたしは前日から実家に帰省し、夫は当日の朝に神奈川から大阪へと向かっていた。
新幹線での移動中、わたしは「病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと」を読んでいた。特別、スマホをいじっていたわけではない。ときおり表示される通知があれば、見てみるくらい。新幹線のなかでは、本を読むと決めていたからだ。
しかし、夫はちがっていた。もともと本を読む習慣がない。どちらかといえばゲームが好きで、最近ではスマホのオンラインゲームに夢中だ。
「移動中にあんまりスマホいじってると、通信制限がくるから気をつけてね」わたしの実家にはwifiどころか、ネット環境がない。スマホでの通信手段は死守したい。もちろん、通信制限がきたところで、まったくスマホが使えなくなるわけじゃない。でもいつもどおり、さくさく、動いてほしい。
夫婦で使用できる通信量を折半しているプランなので、わたしだけが気をつけていてもしょうがない。ふたりで、気をつけなくっちゃいけない。
わかったーと、夫は気安くうなづいていたが、まったくわかっていなかった。
大阪へ来るときは朝かなりはやくて、新幹線の中で眠っていたという。しかし、神奈川へもどるときに、YouTubeを見てしまったという……。いや、動画はアカンやろ。夫もわたしもポケットwifiを持っていないのだから。
いつもなら「のこり1GBです」といった通知メールが来るので「あ、残り少ない。気をつけなくっちゃ」と身構える。けれど、先月はその通知メールとほぼ同時刻に「通信制限のおしらせ」メールが届いた。
どこかの携帯会社のCMのように「ギーガー」と叫びたくなる気持ちもわかる。
スマホの通信制限になったことがある人ならわかってくれるだろうけれど、とにかく遅い。さくさくと検索結果が表示され、ストレスのない操作ができていたのに、それができなくなるもどかしさ。
三月はまだ十日も残ってるのだから、このままではストレスが溜まってしかたがない。そう思い、追加で1GBをポイント購入した。
それからの十日間、移動中はLINEで連絡するだけ、などできる限り「スマホを見ない」ことに決めた。自宅や職場ならwifiがあるので、スマホをみても差し支えない。移動時間は、うっかり見てしまう危険がある。
しかし、普段の移動中にかなりスマホをいじっているんだと、痛感した。つい、カバンから取り出してnoteとかTwitterのタイムラインをみたくなる。本当に無意識なほどに手が伸びる。
いやいや、これはまずい。スマホに支配されている。
スマホの支配下に置かれていることを、自覚しなくっちゃいけない。
ただ、はじめの数日は「あースマホ見れない」と、思うこともあったが、見られないことに慣れてしまえば、それはそれで快適だった。
むしろ、もっと普段の電車の過ごし方を考え直したほうがいいのかもしれない。そう思ったりもした。
四月になって、通信制限が解除されると、またスマホに支配された日々が始まりつつある。けれど、もうすこし、距離を置いたお付き合いをしたいとも、考えている。いったん支配下に陥ると、抜け出すことは難しい。
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