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そうだ、歯医者いこう。

なかなか足が向かない場所のひとつに、歯医者がある。これはおそらく多くの人の足が向かない場所なんじゃないかと思う。

虫歯になって劇的に歯が痛むとか、親知らずが動いて歯茎がぐじぐじ傷むとか。痛みや不快を感じるなければ、率先して歯医者に行こうという気にはならないだろう。

だから、冷たいものを食べていると歯茎がしみるとか、歯磨きのときにちょっと歯ぐきから出血してるなあ程度ではガマンする、まさにわたしがそうだ。

ちょっとした自慢になるけれど、わたしはこれまでに「虫歯の治療」をしたことはない。自覚はないけれど、虫歯になったことはある。ただ、それも歯医者に行って「あー、ここ虫歯になった形跡があるけど治ってる」といわれて、いま一つ理解できないまま今日に至る。虫歯って、ほっといても治癒力あるんだな、くらいの認識なのだけど、合ってるのか今度歯医者に行ったら聞いてみたい。

前回歯医者に行ったのは4年くらい前のことだ。

自宅の近所にある、歯医者というよりはカフェのようなきれいな外観で、内装もピッカピカだった。歯医のHPには「治療よりも予防に力を入れています」というような内容だった。たしかに虫歯になるよりも、ならないほうがいいだろうし、その歯科医院の方針は悪くないと思う。

けれど、結果的に言うとその歯科医院には「もう二度と行きません」という感じだった。

いろんな検査をしてくれて、虫歯もないし、唾液量も十二分にある。口腔内の細菌検査も行って、細菌数も少なめという診断をもらった。

歯磨きにムラがあるので、そこは丁寧にやりましょうといわれた。けれど、治療するわけじゃないのに、毎週通わなくっちゃいけない。口腔内のケア、と歯垢の除去のような処置はしてくれるけれど「それは毎週必要なケアかな?」と疑問が生じた。

疑問が生じたら聞かずにはいられないので「この治療本当に必要ですか?」と歯科衛生士さんにたずねたら、「歯磨きが十分じゃないので、必要です」と言われてしまった。うん、まあ歯磨きが十分じゃないのは認めるけど……。でも上の歯をやって、次の週は下の歯、そのまた次の週は上の歯……。終わることないエンドレスケアが待ち構えている。

さらに、保険適用外になる月に一回一万円のケアを進めてきた。「毎月ヘアカラーリングにもおなじぐらい使うでしょ? それと同じ感覚でやってもらえれば」と件の歯科衛生士さんはのたまった。

歯科衛生士さんが悪いわけじゃない。たぶん、そういえば感覚的にわかりやすいから、そんな風に説明してという歯科医院の方針だと思う。けれど、人によって価値観はちがう。

もっと初めに「こういうケアにはこれだけかかる」などの納得のいく説明を受けていれば、納得できる治療や予防ケアは行うけど、それ以上はしない、といった意思表示ができた。けれど、どんどん後出しじゃんけんのように「あれもやりましょう、これもやったほうがいいです」というものだから、なんだかお金だけじゃなく、時間もかかるしうんざりしてしまった。

もともと歯医者に行くことがないから、歯医者のスタンダードがどんなものか分からず、ぼんやりしていたわたしも悪い。けれど、その歯医者さんには、もう行こうとは思わない。

さて、そうして歯科医院へのおかしな偏見をもってしまい、4年が経過した。ありがたいことに、歯が痛むとか、ずきずきするといったことは一度もなかった。肩が凝り過ぎたときに、歯茎も少し腫れたような感じになったことはあるけれど、一晩寝れば治ってくれた。

ただ、歯磨きがおろそかなので、歯がちょっとずつ茶色っぽくなっている。虫歯があるかどうか分からないけれど、そろそろ検査をしてみたいという気にもなる。

ただ、前回の歯科医院のおかげで、「その歯医者に行けばいいだろう?」とずいぶん迷ってしまった。そうして、ずるずるといけずにいたのだけれど、もうあまりにも迷いすぎたため「前回の歯医者以外ならばどこでもいいか……」という気持ちにすらなった。

会社の近くでささっと検査してくれるところはあるだろうか? とネットで検索してみると、一件ヒットする歯科医院があった。先生はもう大ベテランで、写真をみる限りではかなりお年を召されている。昔ながらの歯医者さん、という感じなのだろうか? 志村けんのコントみたいに手がぷるぷる震えていなければいいか。口コミの数も多く、「すぐにやってくれるからありがたい」「一回で終わる」などほとんど良い評価だった。

そうして、その歯医者に行くことに決めた。普段使用している銀行のATMのすぐそばにあるので、予約できるか聞いてみることにした。歯医者に行くのとためらう理由のひとつに「予約しなきゃいけない」というのもある。

しかしその歯医者さんは「ちょっと待ってもらえるなら、今日すぐにできるわよ?」と言われおどろいた。単純に朝いちばんはヒマな時が多いらしい。

一応会社に遅れていくと伝えなくちゃいけないので、別の日に予約してもらった。

4年ぶりの歯医者さんは、思った以上に不思議だった。たぶん、先生が独特なのかもしれない。おそらく70代の先生は、私の歯を見ながらいろんな質問を投げかけてくる。

「夕飯を食べてから、寝るまでどのくらいの時間がありますか?」

「夕食後、たくさんおしゃべりをしていますか?」など。

もちろん、一日にはを何回磨くかとか、そのタイミングは食事からどのくらい経ってからか、といった歯医者さんらしい質問もあった。

ただ、これには全部理由があって、「食後に、たくさんおしゃべり」はしたほうがいいという。おしゃべるをすると舌も動かすし、唾液の分泌量が増え歯を守ることにつながるという。夜眠っているうちに虫歯は活発になることが多いため、夜のおしゃべりが重要という。

また、食べてすぐ歯を磨くのはあまりお勧めしていないといわれた。食事のあと、歯は酸性になっている。酸性の歯は、やわらかくなっている。(酸に長時間漬けていると歯は溶けてしまう)

酸性になっている状態で歯磨きをすると、その歯磨き自体が歯を傷つけてしまう。食後30分後くらいに歯磨きをするのがベスト。

また、その歯医者さんではスウェーデン式の歯磨き法をおすすめしていた。

フッ素の入った歯磨き粉をたっぷりとつかって、口の中を泡立てるような感じで磨くという。それには理由があって、口の中に存在する細菌は嫌気性菌という酸素を嫌う性質の細菌だからだ。泡立てる=空気を口の中にふくませることによって、最近の増殖を防ぐというもの。また、歯磨きのあと、歯磨き粉をゆすがない(うがいしない)のも、大きな特徴だという。歯磨き粉に含まれる成分を口の中に止まらせておくのだ。

へえー。知らないことばっかりだ。歯磨きのあとにうがいしないのは、ちょっと慣れるかどうかわからない。けれど、フッ素の入った歯磨き粉をつかって歯を守る習慣をつけてみようかと思う。

「まあ、それでも4年に一回なんて言わないで、1年に一回くらいは定期検査してくださいね」といわれた。今回もありがたいことに虫歯は見つからなかった。(もしかしたら親知らずは虫歯になるかも、といわれたけど治療するレベルじゃないらしい)これからはできれば年に一度は歯科医院へ通ってみようと思う。







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