フクロウの声に耳をすませて

梅雨が明けたかどうか。そのくらいの季節、わたしは夜毎そっと耳をかたむける。

わが家の近くに、どうやらフクロウが来ているんじゃないかと夫と話したのは、もう何年前のことだろうか。

海の近くに住んでいるためか、夏場でも風が通る。窓を閉め切ってエアコンをつけるよりも、眠るギリギリまで網戸にして、吹き込んでくる風で涼を取ることが多い。

「ホッホー、ホッホー」

はじめに鳴き声に気が付いたのは夫だった。日付が変わりそうなほどの時間帯。ホウと鳴く声の主は「おそらくフクロウだよね」と嬉しそうに話す夫と、鳴き声を聞いていないわたしは半信半疑だった。野生のフクロウは、こんな場所に来てくれるものだろうか、と。

しかし、我が家のちかくにはほぼ手付かずの山があり、フクロウが飛べるくらいの距離であるかは分からないけれど「小網代の森」という自然豊かな場所もある。

もしかしたら来てくれるかも、とふわふわした期待を抱えていた。その数日後に、わたしも聞きなれない、けれども想像していた鳴き声を耳にして、「わー、やっぱり、いるーーー!」と軽くジャンプせんばかりに喜んだ。

少し調べてみたら、「アオバズク」というフクロウ科フクロウ目のキジバトと同じくらいの大きさの子が夏になると飛来してくるという情報を得た。

それからというもの、夏前になると「今日は鳴き声聞こえるかな?」と耳を澄ませるのが日課になった。姿を見ることはない。ただ、その声をたのしみにしている。そんな日々だ。

フクロウのアイコン(耳がついているからもしかしたら、ミミズクかも知れない)の仲さんがなんだか不思議なサークルをつくっていた。

何にもやることのないサークルか。ホッホー。のんびり過ごせばいいなんて、わたしにピッタリじゃないの。

仲さんには、一度だけお会いしたことがある。2019年のnote酒場で、ほんの少しの時間だけれどお話しした。しかし、そのほんの少しの時間でも、仲さんは「こちら、ルミさん」とか、「ルンミチ(下瀬ミチルさん)は知ってる?」「よし、ふみぐら社さんを探そう」など、いろんな人とつなげてくださった。積極的に人と会話をするのが得意ではないわたしは、仲さんにとっては「さも当たり前」であろう、その行動がとてもありがたかった。仲さんは、信頼に足る人だと、強く感じた。もっとも直接顔を合わせていなくても、Twitterやnoteでの振る舞いをみていれば、そう感じている人は多いだろう。

サークルを立ち上げた仲さんは「ゆるい」「なにもするな」「幽霊部員募集」と言っていてるけれど、まあそれはそれでいい。「週に三回、課題提出!」とか言われたら、ついて行けないだろうからサークルに入ることも留まっただろう。

フクロウはひっそりと飛来して、ほんのちょっと日々の楽しみを与えてくれる。かわいい顔をしているけれど、フクロウは猛禽類。生態系では狩るものだ。

能ある鷹は爪を隠すということわざがあるけれど、能あるフクロウは何を隠しているのだろう? いや、いまのところ何にも隠している様子はない。ただ、静かな風が吹くときを、じっと待っている。

フクロウの森でさすらう幽霊として、ふわふわしながら耳をかたむけていよう。






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