目的地はどこだって
「朝イチで、羽田行こうか」
PC画面を見つめながら、彼は言う。
ネットの天気予報では台風がぐるぐると渦巻いている。
目的地からは少しずつ逸れていくようだけれど、分刻みで変わる航空会社の「運行状況のご案内」から目が離せない。
何か月も前に休暇申請をして、沖縄に一緒に行こうと決めてたのに。
台風が近づいてくるなんて、本当についてない。
「飛行機、飛ぶか、わかんないんだよね?」
私ががっかりした声でそう訊ねると、「さあ、どうなるでしょう?」にやりと彼は笑う。
「でも、せっかく楽しみにしてたのに」
私が不満げな表情を見せても、「沖縄以外なら、飛ぶよ? 北海道でも福岡でも」と、彼はどこか嬉しそう。
「一緒に休み取れたんだから。こうなったら台風も楽しむしかないよね」
彼はそういって、PCの電源をオフにした。
数時間後、私達ふたりはどこに向かっているだろう? 沖縄か、それとも別の場所? ふたりなら、きっとどこだって楽しめる。
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