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疑いまなこの給付金

「それは、サギです」

わたしが住んでいる町では、防犯パトロール隊が結成されている。パトロール隊は日々軽自動車で町内をぐるぐる回りながら、アナウンスを流している。

そのアナウンスの内容はあんまり聞こえないので流している意味があるのかどうか、はっきりいて分からない。けれど冒頭に書いた「それは、サギです」という言葉だけは、力強くはっきりと聞き取れる。引っ越したばかりのころは、急に「それは、サギです」と聞こえてぎょっとしたけれど、いまでは「はいはい、サギよね」くらいにしか思っていない。

しかし、先日「それは、サギです」というフレーズがはっきりと頭のなかでリフレインする出来ことがあった。

ある、一通の封筒がポストに投函されていた。夫あての封書。送り主は厚生労働省、職業安定局雇用保険課。

厚生労働省? はて、いったい何だろう?

夫が封筒を開封するも、首をかしげて「なんか、よく分かんない」とわたしに書類を押し付けてくる。いや、あなた宛てなんだからさ、あなたが処理してよ……と思いながらも、いったい何が書かれているのか気になって受け取る。

そこに書かれていたのは、過去に雇用保険を使用していたひとに、「追加給付がある」という内容。

読んでいる方が心配しないように、先に結果だけを書くけれど、これは詐欺じゃない。

いろいろ調べたけれど、本当のことらしい。ほんとうに還付金があるらしい。(といっても多い人でも千円前後)

夫は対象の期間中に転職を何度かしていて、その際に雇用保険の受給があった。その際に給付されいたお金が少なく計算されていたため、追加で給付される、ということらしい。

しかし、このことを夫に伝えると「え、それサギじゃないの? そんなことある? もう5年以上前の話じゃん」と極めてまっとうな反論を繰り出してきた。

いや、確かにね。そんなことある? サギっぽいよね? という内容なのだけれど……。でも、送られてきた書類には、夫が雇用保険を受給していた期間も書かれてあるし。もしこの情報が洩れてたとしたら、雇用保険関連のデータがダダ洩れ、もしくはハッキングされてるんじゃ……? それはそれで大事だろう。

文字がぎっしりのお知らせ書類。疲れているときに目にしてしまい、より疲れが倍増した……。

夫に過去の記憶を呼び出してもらおうとしても「もう何年も前のことなんて思い出せるわけないだろ!」と、やや切れ気味に反論される。うーん、まあ回答部分は大まかでも大丈夫なはず。

雇用保険番号が分かれば記入してほしい、とのこと。雇用保険番号は控えてなくて、おそらく今の会社に提出してるはず……。なので現在の職場の上司に電話して聞いてみる夫。しかし、「いや、サギじゃないっぽいんですよ」としきりに説明している。ただ、夫自身もこの還付金に疑いのまなざしをむけているため、歯切れは悪い。

雇用保険番号は不明なら書かなくても良い。(いくつか項目があって、そのほかの部分を記入する必要はある)

過去の職歴とか、その辺も曖昧だ。そもそも記憶に頼れるような最近の話でもない。平成24年、25年とかその辺りの出来事だ。どうにか過去の銀行通帳から振り込みの履歴を探し出し、用紙に記入した。

じつは同じ日に、例の10万円給付金の申請用紙も送付されていた。こっちは怪しくないよね? などと言いながらも、やや疑いのまなざしを送ってしまった。いや、記入して送りますけどね。






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